「Hack For Japan 3.11 3年のクロスオーバー振り返り」レポート(その3)

先日に開催されましたクロスオーバー振り返りイベント。3回目のレポートでは宮城県は石巻市出身で、震災当時は東京で活躍されていたゲヒルン株式会社の石森大貴(@isidai)さんの活動をレポートさせていただきます。


震災の直前、どうしていたかの振り返り

あれから3年が経ち、みなさんの中の2011年3月11日前後の記憶はどれくらい鮮明に残っているでしょうか?石森さんの発表では冒頭で3年前の3月9日から震災が発生するまでの間の自身のTweetから当時を振り返ります。いまはインターネットのサービスも数多くあり、過去を振り返る情報はたくさんあります。今回のようなイベントを通じて、そうしたアーカイブから当時を思い出す行為は、過去を風化させないためにも必要な作業だと感じました。また、石森さんの震災前のTweetでは地震の増加が顕著にあらわれており、振り返ることでそうした予兆を今後起きうる震災に対して、防災への意識付けとしても思い出すという行為は大切なことかもしれません。



多くの状況が分からなかった3月12日

震災から一夜明けても、東京は交通マヒや大規模な電力不足という問題を抱えつつも、被災地の状況は依然として全貌が掴めず、不透明な状況が続きました。石森さんは実家のある石巻と連絡がつかず、家族の安否が確認できない状態でしたが、インターネット上で得られる石巻で営業を再開したスーパーや、人工透析が受けられる病院などを写真をたくさん使い、ブログにまとめ発信していました。そうしているうちに都内で大規模停電の知らせが拡がります。


ちょうどその時、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」に登場する組織「NERV」を表すTwitterのアカウント(@UN_NERV)を持っていた石森さんが、首都圏が電力不足を補うために輪番停電の実施決定を受け、「新世紀エヴァンゲリオン」の劇中で登場する敵を倒すために日本全国の電力を集める作戦「ヤシマ作戦」に准えて、@UN_NERVアカウントから「ヤシマ作戦」を訴え節電への協力をインターネット上で呼びかけはじめました。その活動が注目を集め、実際のアニメを模したサイトやアプリケーションが生まれることになりました。その時点で著作権などへの問題が指摘されていたそうですが、震災直後の緊急時という点と石森さん自身が責任を取れる範囲であれば構わず続けるという意思のもと、優先すべきことを優先するという姿勢を貫いたそうです。そのような姿勢に多くの人々も賛同し、サーバーの提供等も含め様々な協力者が表れはじめます。


大きな活動に変化しはじめた3月13日

震災から2日目、活動当初から指摘されていた「新世紀エヴァンゲリオン」の版元に対する著作権の問題が、Twitterのフォロワーの中から版元と調整してくれる人物が名乗り出て調整してくれたことで、「新世紀エヴァンゲリオン」公式ブログからヤシマ作戦が正式にアナウンスされました。この時から、版元公認の非公式アカウントとして節電や防災、減災につながる情報を発信する活動となりました。そうこうするうちに電力会社からも情報提供の申し出があり、数多くのTwitterのフォロワーに正しい情報を届けられるようになっていきます。石森さんの活動が多くの人達を動かし、人々が求める情報を配信するインフラ作りの第一歩になった瞬間でした。


震災当時、首都圏に居たみなさんも、被災地のために何か出来ないかという思いに駆られた方は多いと思います。しかし、出来ることは少ない状況の中で、何も出来ない人達にも節電という形で主体的にアクションを起こせることを提供し、精神的な苦痛の緩和にもつながりました。


震災直後から次なる減災のフェーズへ

先に挙げた通り、石森さんのご実家は宮城県石巻市にあり、現地では減災の観点からいくつかの課題を抱えていました。徒歩で限界とされる500m圏内に避難場所が無い避難困難地域や、車社会の石巻では橋の前後で渋滞が発生しがちであったり、家族や知人を迎えに海岸側へ向かえに行く人が多かった点、津波はここまで来ないという思い込みと過去の経験から津波への恐れがない点、停電でテレビが見れなかったり、防災速報の故障、手元にラジオが無い環境で大津波警報に気付けなかった人々なども居ました。


こうした課題に共通して言えることは、情報伝達の手段に課題があるという点でした。「生命と財産の保護が最優先」というミッションのもと、石森さんはインターネットの力を使ってこの課題の解決に取り組んで行きます。



被災地のために地道に続けていた活動が大きな活動となったことで、気象庁からは防災気象情報、総務省からは公共情報、IIJからは緊急地震速報などの防災、減災に関する情報提供を様々な組織から受けることが出来るようになりました。



こうした石森さんの活動は東日本大震災だけに留まらず、日本で起きる災害全般に視野が拡がっています。インターネットから情報を届けられるデバイスが増加していることを受け、現在はカーナビとの連携も予定されているそうです。一斉配信でも輻輳が起こらない放送波を使う仕組みの利用を考えられているとのことでした。100年後の防災まで考え、日本の国民の生命と財産を守るという使命感で活動されている石森さんによる東京からの報告でした。


そんな石森さんによる気象データ勉強会が2014年4月17日に行われます。すでに満席ですが中継を実施する予定です。仙台ではパブリックビューイングも行います。また、配信URLはHack For Japanの公式Twitterアカウント(@hack4jp)より、お知らせいたします。

東京の発表(YouTube)

次回のレポートでも、残りの他地域からの発表の様子をお届けします。お楽しみに!

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