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街をハックする! Hack For Town in Aizu開催レポート

2月15日、16日にHack For Japan主催によるHack For Town in Aizuが開催されました。今回はそのレポートをお届けします。Hack For Townとは、最先端テクノロジを用いて街中に設置された最先端ハードウェアをハックするという主旨のイベントで、将来的には最先端テクノロジを用いて新しい街を創造することを目指しています。その第一回目の場所が福島県会津若松市となりHack For Town in Aizuとして開催されました。
会津若松市には、会津若松駅からクルマで5分ほどのところに神明通りという商店街があります。今回はこの神明通りの各所にiBeaconデバイスを設置し、商店街という環境ならではのロケーションを活かしたHackathonに参加者たちがチャレンジしました。

商店街各所にある天井付近のポールに設置されたiBeaconデバイス

またiBeaconデバイス以外にもDrone、Oculus Rift、3Dプリンタ、Raspberry Pi、人感センサ・湿度センサ・温度センサなどを搭載した環境センサ(今回の協賛であるフリービット株式会社の提供)といったハードウェアに加え、市内企業が保有しているfabスペース、APIとしては会津若松に関するオープンデータなどが案内され、さまざまなハードウェアやデータを組み合わせた開発ができるような環境が用意されていました。

iBeaconデバイス
Raspberry Pi、3Dプリンタ、Droneなども
環境センサ

Hack For Town in Aizuの事前の情報についてはwikiを使ってまとめられており、参加者はこちらで概要をつかむことができるようになっています。

一日目。大雪の影響から開始を遅らせてのスタート

Hackathon当日。この日は雪害となる大雪で交通機関に影響が出ており、Hackathonの運営にも大きな支障をきたしました。そこで一日目の午前中に予定していた開始時間を遅らせてスタート。午前中は参加者の来場状況を見ながらHackathonを進めていくことを決定し、予定されていた参加者からのアイデアピッチを午後からとして、Hack For Japanスタッフであり、今回のイベントの提案者でもある佐々木からiBeaconについてのレクチャーがなされました。 次にHack For Japanスタッフの及川からHack For Townの説明があり、最後にフリービットの渡邉氏から環境センサについての説明がなされました。この環境センサは佐賀県唐津市と同社による「高齢者向け安心見守り・健康相談システム」の実証実験に使用されているものでもあるそうです。なおこの間、東京方面から向かっている参加者たちが郡山で足止めされているにもかかわらず、めげずにカフェに集まって自主的にHackathonを始めているという情報を受け、彼らに向けて急ごしらえの動画配信を行いました。

佐々木によるiBeaconデバイスのレクチャー

昼食では会津若松市役所のご好意によりソースカツ丼のクーポン券が配られました。会津若松はソースカツ丼が名物で、市内にはソースカツ丼を提供する店が複数あります。参加者はクーポン券を使って好みの店でソースカツ丼が食べらるという、地方ならではの楽しみが得られました。

午後から本格的にHackathonに入りました。参加者各々が考えているアイデアを披露し、興味のあるアイデアがあれば、そこに参加するチーム分けを行った後、開発が始まりました(この日のアイデアピッチについては、Fukushima Internet television Chのyoutubeにてご覧いただけます)。ここから二日目の夕方の成果発表までが開発の時間となります。この時点ではまだ郡山で足止めされている参加者たちもいるため、彼らにどんなプロジェクトがあるか把握できるようプロジェクトの概要を各参加者にシートに記入してもらいました。

一日目の夜には懇親会が開かれました。名物の馬刺しや、貝柱を出汁に人参・しいたけ・糸こんにゃくなどの入った汁物のこづゆと呼ばれる郷土料理を堪能しているところへ、ようやく郡山に足止めされていた参加者たちが到着! 

#hack4town 今着いた東京組、東京出てから24時間で到着とか、郡山でのトランジットに時間かかったとか、笑っているけど、本当にお疲れ様!!
— 及川卓也 / Takuya Oikawa (@takoratta) 2014, 2月 15

というツイートがあったくらいに困難な状況だったことから、遅れてやってきた参加者たちは、大きな拍手とともに迎えられたのでした。

二日目。地産の食材を使った蕎麦を堪能! そして各自の発表へ

二日目の午前中も前日から引き続いてのHackathonです。参加者たちはもくもくと開発に集中しています。この日の昼食は、地元の食材を使ったそばでした。わざわざこの日のために何日も前から仕込みをしており、参加者の想像を上回る手の込んだ蕎麦でした。 水蕎麦…水を注いで蕎麦の感触を味わう 高遠蕎麦…大根おろしと大根おろしのつゆ、蕎麦つゆを合わせて味わう 地鶏蕎麦…地鶏を煮込んだつゆで味わう といった3種類の蕎麦を用意されており、地元わさびをその場ですって、ニシン・しいたけ・薬用人参・クレソンのかき揚げ・野菜いろいろのミックスのかき揚げの天ぷらを好きにトッピングしていただける上、さらには会津若松のお米まで炊いてあるという、味も内容も素晴らしい昼食でした。

地産の食材を使った蕎麦。美味!

昼食を済ませて参加者は発表に向けてラストスパート。いよいよ夕方の発表です。発表では室井 照平市長、会津大学 次期理事長兼学長 岡 嶐一氏、リモート参加でNTT ドコモ 執行役員&研究開発推進部部長 栄藤 稔氏、協賛いただいたアクセンチュア株式会社の中村 彰二郎氏を審査員として迎えました。以下にプロジェクトを簡単に紹介します。Fukushima Internet television Chで詳細の動画が見られますので、興味のある方はそちらもご覧ください。 サックマンのパックマン街中に設置したiBeaconをエサに見立てたAR版パックマン。ゲームとしても、スタンプラリーとしても活用できることを目指したもの。 Anko-KivyKivyというPythonで記述するNUIでフレームワークを作成。BLE, iBeaconをマルチプラットフォームで使えるようにする。 BoarDrone利用者の持っているAndroidでiBeaconの信号を受信すると、その場所にDroneが飛んできて案内をするというもの。 iMenu最寄りのiBeaconを検知してユーザーがいる店舗の情報を取得し、メニューを表示するシステム。 障害者のための障害物検知アプリ目の不自由な方に対して、例えば滑りやすい道や工事中で通れない道、段差のある道があった際に音声で通知してくれるアプリ。 消えたプリンセスを探せ!  神明通りの各所に設置されたiBeaconから情報を得て、神明通りに逃げ込んだキャラクターを探すアドベンチャーゲーム。 一緒に歩こうiBeaconの設置してある場所に行くと女性の音声が流れる。設定された速度で歩かないと声が遠ざかる。二次元キャラとリアルに歩く感覚を追求したアプリ。 会津クライシスGoogleストリートビューの神明通りを取り込んだDroneを使ったシューティングゲーム。向かってくるゾンビを打ち倒す。 トロッコ列車神明通りをトロッコが走る3DゲームをUnityを使ってめざした。 動物レストラン親子連れをターゲットに商店街に行くきっかけを作るためのアプリ。商店街に設置したiBeaconを果物のエサと見立てて、その果物を動物に見立てたiPhoneが食べるというもの。 ぴかりiBeacon のハード制御によって通信でLEDを光らせる。特定のiPhoneが近づいた時にiBeaconが光る他に、音声を流してしゃべっているように見せることもできる。 上記のようなプロジェクトが発表されました。今回は市長賞、Hack For Japan賞、会津ゲームLAB賞が用意されており、市長賞は「BoarDrone」、Hack For Japan賞は「障害者のための障害物検知アプリ」、会津ゲームLAB賞は「消えたプリンセスを探せ!」がそれぞれ受賞しました。 市長賞は「BoarDrone」は、まだまだ荒削りではあるもののイベントなどでDroneを使って何かやれそうな点、Hack For Japan賞の「障害者のための障害物検知アプリ」は、将来的な実用性が非常に高い点、会津ゲームLAB賞の「消えたプリンセスを探せ!」は、BLEの普及に欠かせないゲーミフィケーションを取り入れた完成度の高いアプリをつくった点が、それぞれ評価されました。表彰式の動画はこちらからご覧いただけます。 今回、街をハックするというはじめての試みで開催されたHack For Town in Aizuでしたが、数多くの方々の協力の下、運営がなされていました。前述の協賛の方々に加え、株式会社あくしゅの山崎泰宏氏や株式会社デザイニウムの前田 諭志、NPO法人福島インターネットテレビジョンの鷲山 英喜氏、Fandroid EAST JAPAN原 亮氏にも尽力いただきました。 また市役所の方々が運営のサポートに入ったこともお伝えしておきます。開催場所も市役所の会議室や会津若松市生涯学習総合センターを提供いただきました。さらに大雪の影響で行きも帰りも到着までがHackathonとなってしまった参加者の方々においても、感謝の意を申し上げます。

市役所にはHack for Town in Aizuの案内が

「日本には実際のフィールドでセンシング、IT機器、クラウド連携を試せる場所がない。アメリカのサウスバイサウスウエストのようなイベントが日本であってもいいんじゃないか。『会津若松に来れば二日間だけは街中を自由にハックできます』といったITの実証実験ができるような、そういった仕組みをつくるためにHack For Townを開催することにしました。地方も東京も同じですが、商店街に人が来ませんとか、お年寄りが増えていますとか、そういった根本の問題解決を解決するきっかけにもHack For Townはなるんじゃないか」 スタッフ佐々木のそんな想いからはじまったHack For Town。実行委員会も立ち上げる予定ですので、またイベントが開催されることと思います。次回のHack For Townで皆様にお会いできるのを楽しみにしています。参加された皆様、ご協力いただいた皆様、ありがとうございました!

関連リンク Togetterまとめ Hack for Town in Aizu -新しい町を作る町ハッカーソン #hack4town
iBeaconのアプリやライブラリ、その他の関連情報をハッカソン用に記録〜その1

Hack for Town in Aizu というハッカソンに参加してきました Hack For Town動画再生リスト(youtube) Hack for Town in Aizu イベントレポート。 福島日報 ソフト開発腕競う 若松で大会

3.11 3年のクロスオーバー振り返りイベント開催のお知らせ

2011年3月11日の東日本大震災からもうすぐ3年が経とうとしています。

この節目となる3月11日に、Hack for Japanでは3年間の振り返りととこれから何をして行くべきかについて、被災地の各会場と東京や大阪の開場を結び、震災とITの関わりを振り返って行きます。海外からはスタッフの及川がシドニーから参加します。

アクションを取り続けて来た人達がこれから何をして行くのか。そこに我々がこれから震災復興に対してできることのヒントがあるはずです。是非ご参加ください。

参加は各会場からの参加とGoogle+ハングアウトオンエアによるオンラインでの参加のどちらも可能です。オンラインでの参加の場合は開始前にFacebookのHack For Japanグループに参加のためのURLを共有いたしますので、そちらからご参加ください。この場合はハングアウトでは視聴のみとなり、質問などはテキストベースでいただくことになります。

「Hack For Japan 3.11 3年のクロスオーバー振り返り」開催概要

※スピーカー、会場については予定のため変更となる可能性があります。ご了承ください。

【開催時間】19:00〜21:30(会場によっては21:00終了)

【スピーカー】

スピーカーとしては以下を予定しています(会場の50音順)。

国内

・会津会場:佐々木 陽(Hack for Fukushima/Hack for Town)
拠点である会津若松を中心に復興支援に取り組む。最近では最新のハードウェアやガジェットを使った新しい街づくりをめざすHack for Town in Aizuを開催した。

・石巻会場:古山 隆幸(イトナブ石巻)
石巻に「10年後に1000人のIT技術者を育成する」ことを目標にイトナブ石巻を設立。キャラの立った若者達が育ちつつある。

・大阪会場:
角 勝(大阪市役所)
地方発のイノベーションに大阪イノベーションハブから挑戦中。ハッカソンの「作ったきり」になる問題に対し、大阪イノベーションハブでの試みを紹介。

佐藤 拓也(Fandroid Kansai)
東北と同じく震災経験のある関西の地でFandroid Kansaiを設立。3/1に2つの震災を繋ぐイベントを開催。

鷲見 英利(KAI OTSUCHI)
津波で多くが流された大槌町に設立されたKAI OTSUCHI代表理事。iPhoneアプリ開発のスキルを身につけ、デジタル絵本の開発等を行う。

・釜石会場:西条 佳泰/西条さやか(LiFESTYLE Lab.)
震災後に都内のIT企業と広告代理店をそれぞれ退職し岩手県釜石市にUターン。地方におけるICTの利活用や様々なライフスタイルを通した地域振興の発展を目指し活動している。

・郡山会場:大久保 仁(ITスキルアップコミュニティ エフスタ!)
「ITスキルアップコミュニティ エフスタ」代表。福島への愛を強く持ちながら、東京や仙台でもITイベントを開催する等活躍中。郡山から震災に屈しない魂を歌う!

・仙台会場:
小泉 勝志郎(Hack for Miyagi/Code for Shiogama)
主に仙台でITイベントを多数開催。震災復興では宮城県の離島浦戸諸島の養殖漁業再生プロジェクト「うらと海の子再生プロジェクト」で幹事をつとめる。新しくCode for Shiogamaを立ち上げ、地元の震災復興をITで行おうとしている。

土見 大介(株式会社Haptech)
塩竈市の震災復興団体「よみがえれ!塩竈」の現地リーダー。震災復興のフェーズが変わるなかでの活動の仕方の変化とこれからについてを語る。

溝口 佑爾(日本学術振興会特別研究員・京都大学)
山元町で津波で流されて持ち主不明になった写真約75万枚を、ITを利用しながら救済・返却するプロジェクトである「思い出サルベージ」の代表。

・東京会場:石森 大貴(ゲヒルン株式会社)
石巻市出身。震災当時、節電のために「ヤシマ作戦」をTwitterで呼びかけ、多くの賛同を得た。以降、Twitterアカウント特務機関NERV(@UN_NERV )にて迅速な災害情報の告知で活躍中。

・南相馬会場:但野 謙介(南相馬市 市議会議員)、田中 章広(株式会社リンケージ)
震災と原発事故により、7万人のうち半数もの人がいまなお避難している南相馬。放射線被災下でも「風評被害」を受けない新たな産業を生み出すため、南相馬ITコンソーシアムを立ち上げる。

海外

・シドニー会場:及川卓也(Hack for Japan)
Hack for Japan立ち上げからのスタッフ。3年間を振り返り、これからについて語る。

【タイムテーブル】

準備中

【会場】

・東京会場
ヤフー株式会社  1172 セミナールーム
東京都港区赤坂9-7-1ミッドタウン・タワー 11F

・大阪会場
大阪イノベーションハブ
大阪市北区大深町3番1号 グランフロント大阪 ナレッジキャピタルタワーC 7F

・仙台会場
データコム株式会社会議室
宮城県仙台市青葉区本町1-13-22 仙台松村ビル6F

・郡山会場(20:55で終了)
郡山ビッグアイ
福島県郡山市駅前2丁目11−1

・南相馬会場
南相馬ITコンソーシアム 福島県南相馬市原町区本町1-31 四葉ビル1F

・会津会場
株式会社デザイニウム 福島県会津若松市中町1−40 イワタビル5F

・石巻会場
イトナブ石巻
宮城県石巻市中央2-10-21 サトミビル1F右

【参加申し込み】

Facebookのイベントページからお申込みください。

郡山会場に参加されたい方は「こくちーず」からお申込みください。

Race for Resilienceハッカソン 石巻会場レポート

Race for Resilienceは「発展途上国×防災・減災」をテーマにしたグローバルハッカソンです。アジア数カ国およびハイチ、ロンドンでのハッカソンの後、各国の最優秀プロダクトはグローバル審査に進み、7月にロンドンでグローバルアワード表彰式が行われます。2/8〜9に日本では東京と名古屋と石巻で行われました。

石巻会場の運営主体となったのはHack For Japanで継続して支援しているイトナブということもあり、石巻会場で参加した及川、高橋の両スタッフは「石巻の若者をロンドンに連れて行くぞ!」と勝手なる使命感に燃えて参加しました。しかし、その一方で、石巻の参加者とGoogle+ ハングアウトを通じた企画・運営会議やアイデアソンなどをする途中から「東京から来た大人だけが妙に熱くなっている」という状況は避けなければいけないとも思い始め、何をゴールにするかは少々悩ましい部分もありました。

ハングアウト経由で参加したアイデアソンには石巻の女子高生なども参加していました。東日本大震災を経験した中からアイデアを考えようということで、被災時のことを思い出して語ってくれました。口調はいわゆる今どきの女子高生。「まじやばいと思ったのー」とか「ちょー焦って」など。ですが、その内容は聞いているこちらの方が涙を流さずにはいられないような話でした。彼女を始めとする地元の若者が語ってくれた体験が心に響き、ハッカソンで勝者になることだけにこだわり過ぎるよりも、その純粋な想いを大切にしたいというのが、及川と高橋の両名が思ったことでした。

また、高橋の気持ちとしては、「及川さんは審査員としての役割があるので、何処かのチームを積極的に手伝うということは出来ない立場のはず。であれば、自分がどこかのチームの一員として技術的にガッチリとサポートしなければ」と「今回はスタッフ的な立場ではなく、ガチに開発者として参加させて下さい」とお願いしたのでした。

一方の及川は審査員メンターとしての参加ではあるものの、特定のチームではなく、全チームに対して公平にアドバイスすることは問題ないと事務局に確認をとっていましたので、石巻会場参加チーム全体のレベルアップを図り、ロンドンへの道を切り開くことを考えていました。そのため、本来ならば審査員としては2日目の審査までに会場入りしていれば良いのですが、運営も手伝うつもりで、前日入りしました。2日目の会場入りなど考えなくて正解だったことは後ほどわかります。

91年ぶりの大雪

石巻は東北地方の中にあるとは言っても、太平洋側に面していると言うこともあり普段はそれほど雪が積もることはありません。ところが今回はかなりの積雪に見舞われることとなり、1日目の最初は「東京は雪が積もっているらしいけど、こっちはまだカラッとしてるよ」などと余裕を見せていたのもつかの間、やがて降り始めた雪は全く止む気配を見せずどんどんと積もっていき、2日目の朝には「こんなに積もったのは91年ぶり」という状態になっていました。会場の商業高校に辿り着くこと自体が難しく、まずは会場に辿り着くことをハックしなければという状況でした。

そんな大変な雪の中ではありましたが、1日目の夜にはかまくらの中で開発するメンバーもいました。

チームと審査結果

1日目の最初のアイデアピッチからチーム分けがされました。ここでは最後の成果発表の順にチームを紹介します。

石巻では全部で7チームが編成されました。

最初に発表した石巻日日こども新聞チームは、「Anti-Disater MANGA」という名の子供の防災教育を目的としたアプリケーションを提案しました。これは石巻の子どもたちが作成した漫画を元にしたスマートフォンアプリケーションで、ただ見るだけではなく、キャラクターのカスタマイズなどを通じて子どもたちがより身近に感じられるような工夫を凝らしています。石巻の子どもたちの現実の被災体験を元にしたリアルな話を漫画というわかりやすいフォーマットで全世界に配信することを可能にしています。

2チーム目はTeam Y2でした。チームとは言うものの、1人チームで、ほかのチームにも所属しながら、個人として開発した「GIS Portal Site」を発表しました。これは発災時に重要となる地理情報システム(GIS)をよりリッチにするアイデアで、テキストだけではなく、グラフィックを多用することで利便性を高めることを目的としています。

3番目に発表したのはチームJAPAN。名前にJAPANを入れてしまうことから想像できるように、最初から日本代表になる気マンマンで乗り込んだチームです。災害時に優先度の高い課題を「情報のトリアージ」の形で優先順位付けするフレームワークである「Disaster Response Bootup Kit」を提案しました。ちょうど今テレビドラマにもなっているDMAT(Disaster Medical Assistance Team/災害医療派遣チーム)に支援を要求する立場になった人のために、状況や発災からの時間に応じてすべきことをToDoリストのように表示してくれます。発災時にはアプリケーションを使えない可能性が高いため、紙の形でオフライン利用にも対応しているのが特徴です。

4つ目のチームはハック商工です。石巻商業高校のメンバーと石巻工業高校のメンバーがタッグを組んだため、このチーム名になっています。このチームが提案したのは、「絆」。被災時に情報、その中でも家族の安否が最も知りたかったことだという学びから、Bluetoothなどのすれ違い通信で安否情報を交換しあうアプリケーションを考えつきました。各端末がピアツーピアで通信しあい、その通信結果を共有していくことで、地域の安否情報を蓄積するものです。

5つ目は石巻ARチーム。ARという言葉からわかるように、AR(Augmented Reality/拡張現実)を利用したアプリケーションを提案しました。すでに、石巻イトナブのメンバーが「つなっぷ」というAR技術を使って、スマートフォンのカメラをかざすと被災時の津波の高さをARで表示するアプリケーションを開発していましたが、それに避難訓練の要素を組み込み、各地で使えるようにしたものです。「つなっぷ」がパワーアップしたということで、名前は「つなプラ」です。今までの津波対策の避難訓練は津波が来る前に逃げることを想定したものでしたが、実際に今回の東日本大震災では警報が届かなかったり、警報があっても逃げ遅れてしまったなどで多くの被害者が出ました。このアプリケーションを使うことで、津波の脅威をより身近に感じてもらうことができます。

6つ目は、「チームじぇじぇじぇとじゃじゃじゃ」。これは釜石と久慈の混合チームです。釜石は「釜石の奇跡」という名前で知られているように、市内の小中学生の生存率が99.8%でした。しかし、一方で防災センターの周辺で多くの人が亡くなるという「釜石の悲劇」も起きています。チームの開発した「D2RPG(DISASTER DRILL ROLE PLAYING GAME)」は防災教育をRPGの形式で行うものであり、スマートフォンやWeb、さらには紙媒体でのゲームブックでの展開も考えたものです。

最後の7チーム目は「Disaster survival toolbox」(プロジェクト名も同じ)。これは災害時に身近なものを組み合わせてピンチを切り抜けることを目的としたもので、発災前にいろいろなノウハウを集約し、発災にはオンラインだけではなく、紙でも利用できるようにと考えられたものです。たとえば、電気もろうそくもない時にツナ缶にこよりを入れてランプにするなど。チームの合言葉は「これで君も災害時のマクガイバーだ!」。

成果発表では、プレゼンテーションとデモを行いましたが、他会場に中継していた関係上、必ずしも十分に時間が与えられていたわけではありません。そこで、審査員が審査をしている最中に、追加質問をしたり、デモをしてもらうようにしました。そのような議論を経て、上位3チームが選ばれました。以下がそのチームです。

1位 石巻ARチームの「つなプラ」
石巻で被災した体験を元にした津波の脅威をAR技術で実現している点が評価されました。また、すでにPlayストアに公開する予定があるなど、アプリケーションの完成度とプロジェクトの継続性もポイントとなりました。

2位 Disaster survival toolbaxチームの「Disaster survival toolbax」
同じく石巻での被災体験を元にしたノウハウの共有というアイデアが評価されました。オンラインだけでなく、紙などオフラインでの対応も考えている点など、実用性という点でも高く評価されました。1位のチームと比較した場合に、プロジェクトの継続性がやや弱く、アプリケーションの完成度も1位のチームほど高くなかった点が差を分けました。

3位 チームJAPANの「Disaster Response Bootup Kit」
発災時に必要となるタスクをあらかじめ明確にし、発災時には適切なアドバイスをしてくれるという実用性が評価されました。オンラインだけでなく、紙でのオフライン対応を考えている点も良く考えられていると評されていました。ただ、DMATへの支援要請をするというシナリオに絞り込むまでに時間がかかったのか、全体的に詰めがまだ甘く、具体的にどのように使われるかがまだ明確でない点などで3位という結果になりました。

以上が上位3チームです。1位の石巻ARチームは世界大会となるロンドンに向けて、国内の最終選考に進むことになりますが、そのほかのチームにも敗者復活のチャンスも残されています。

1位の「つなプラ」チームはこの記事の冒頭で触れたアイデアソンで出て来た被災体験の話が着想の元になっており、スタッフの高橋が宣言通りガチでエンジニアとして参加してイトナブの学生と一緒に開発しました。もちろん企画を練るメンバーも強力な布陣で臨んだ結果ですので技術面だけの成果ではありませんが、ハッカソンを推進するHack For Japanスタッフとして、そして石巻の若者を応援する一人として、ロンドンに行くためのスタートダッシュを切るお手伝いが出来たのは喜ばしいことです。まだまだこれから国内での最終選考に向けてブラッシュアップしていく必要がありますので今後も継続してサポートしていきます。

懇親会

東京から来ていた我々は2日目である日曜の夜に帰る予定で、本来ならハッカソン終了後の懇親会は途中で後ろ髪惹かれる思いで帰路につかなければならないはずでした。しかし前述した大雪のために石巻から仙台までの高速バスが終日運休になったことでその日も泊まらざるをえない状況となり、思いがけず一緒に頑張った仲間達とゆっくりと語らう時間が出来ました。イトナブから近いオープンスペースIRORIで開かれた一次会では八戸のせんべい汁や会津若松から参加したチームが持ち込んだ地酒も振る舞われ、大いに盛り上がりました。

イベントの様子を撮影した写真はこちらからご覧いただけます。
またダイジェスト版動画もYouTubeにて公開中です。

Hack For Japanスタッフ 高橋憲一&及川卓也

2013年の振り返りと2014年の方針

先日、Hack For Japanスタッフミーティングを開催し、2013年の振り返りと今後の方針について話し合いました。我々は東日本大震災発生後の活動開始時より、1年ごとに活動の継続の要否を決定することを方針としております。今回のスタッフミーティングでも「継続ありき」という前提の議論ではなく、活動停止も選択肢に入れ話し合いました。その結果、2014年も活動を継続するという方針を固めました。

「テクノロジーで社会的課題を解決する人のためのコミュニティー作り」

一昨年と昨年に掲げた「テクノロジーで社会的課題を解決する人のためのコミュニティー作り」というテーマはこのままに、2013年の反省を踏まえて、2014年の活動方針を検討しました。

2013年は、スタッフ自身もHack For Japanスタッフが主体となって行った取り組みは正直少なかったと認めざるを得ません。しかし、これは活動していなかったのではなく、Hack For Japanから派生した団体・コミュニティの活動がアクティブになったことにもよるものでした。

例えば、アプリケーションやサービスを開発することでより良い政府を作るために設立されたCode for JapanはHack For Japanスタッフの関治之が代表としてリードしていますし、昨秋に行われたITx災害会議はHack For Japanスタッフの多くが発起人となり、その後の活動を主に技術面から支えています。

このCode for JapanやITx災害などに代表されるように、Hack For Japanスタッフが積極的に関わったり、Hack For Japanの活動が何らかのきっかけになり始まった取り組みは少なくありません。我々の活動の影響だけと限定はできませんが、ハッカソンというイベントがここまで市民権を得たのも、Hack For Japanの副次的な成果と言えるでしょう。

原点回帰

このように、さまざまな方々がテクノロジーで社会的解決を図ろうとしていることを鑑み、Hack For Japanは原点に回帰し、災害への対応を考えるITコミュニティとしての活動に集中します。

例えば、IT教育も活動の1つとして考えていましたが、昨今では各地で若い世代へのプログラミング教育が行われるようになっています。Hack For Japanでは、そのような方々と連携し、IT教育においては東日本大震災の被災地を中心に活動したいと考えています。具体的には、東北Tech道場であったり、イトナブなどへの協力です。

また、オープンデータの公開や活用に関しても、Code for JapanやOpen Knowledge Foundationなどが積極的に取り組んでいます。Hack For Japanはそれらの活動を積極的にサポートしつつ、被災地支援の観点での取り組みを模索します。

防災・減災についてITでなすべき役割においては、ITx災害がふさわしい場であると考えられますので、Hack For Japanはその活動を技術面で支える役割を担います。

今後の予定

スタッフの話し合いの中では、Hack For Japanは緩やかにつながっているコミュニティとしても十分存在意義があることが再認識されました。例えば、災害発生時にHack For Japanのコミュニティに連絡すれば、そこでつながり、意義のある活動を開始できるでしょう。それだけでも、東日本大震災の時よりも状況は良くなっているはずです。

このコミュニティとしてのつながりを維持・強化していくことも2014年のHack For Japanの使命だと感じています。2013年には、ほかの団体やコミュニティの活動を後援などの形でサポートしていながらも、それをHack For Japanコミュニティに共有していなかったため、結果としてHack For Japanの活動が停滞しているように見えてしまったことも否めません。今年は、このコミュニティの活性化もテーマに考えています。勉強会や情報交換会などの開催も検討中です。ブログやTwitter、Facebookでの情報発信にも再度力を入れていく予定です。

2014年も引き続き、Hack For Japan をご支援いただけましたら幸いです。

Hack For Japan Staff 一同

第2回石巻ハッカソンレポート

今年も暑い夏がやってきた!~石巻ハッカソン開催~

7/26~28にわたって第2回石巻ハッカソンが開催されました。このハッカソンは2012年の7月に開催された第1回に続くイベントで、地元の若者たちにアプリ開発を体験してもらいプログラムの楽しさを伝え、ゆくゆくはITによる地域活性化を担う人材を生み出すという大きな目標があります。このイベントを主催しているのはイトナブという石巻のコミュニティです。イトナブとは「IT」×「営む」×「学ぶ」の造語で、「石巻の次世代を担う若者を対象にウェブデザインやソフトウェア開発を学ぶ拠点と機会を提供し、地域産業×ITという観点から雇用促進、職業訓練ができる環境づくりを目指している」というのが活動の趣旨です。

今回はイトナブ主催者である古山隆幸氏を中心に石巻の若者たちが運営に携わり、古山氏がめざす「震災10年後の2021年までに1000人の開発者を石巻から生み出す」という理念のもと、Hack For Japanのスタッフがプログラムを教える講師役としてこのイベントをサポートしました。ハッカソン開催場所は昨年に引き続き、石巻工業高校で行われました(こちらにイトナブによる開催概要が見られます)。今回の石巻ハッカソンでテーマとして掲げられていたのは「石巻の若者を触発させる」でした。“開発の経験を通して、あらゆる若者たちが彼ら自身の行動や考えに触発される何かを手に入れて欲しい”というイトナブ古山氏の熱い想いが込められていたように感じました。

「石巻をHackしてやる」Tシャツで気合い十分の参加者。コードメッセージの書かれたHack For JapanのTシャツと記念撮影

「IT Boot camp部門」、「チャレンジング部門」、「どや部門」を設けて同時並行で開催

あらゆる若者たちを触発させるために、通常のハッカソンとは違い、石巻ハッカソンではさまざまな人が参加できるようプログラムの習熟度別に「IT Boot camp部門」、「チャレンジング部門」、「どや部門」と3部門を設け同時並行で開催されました。

「IT Boot camp部門」は、開発の経験がない人でも3日間でアプリを実装するところまで体験してもらうことを目的とした部門です。参加者の中には高校生を中心にPCを使った経験が少ない方もいるであろうと想定されていたため、昨年の石巻ハッカソンでも利用実績のあった、Corona SDKという誰でも簡単にアプリ制作ができる開発キットを使って進めていきました。

“Coronaとは、サンフランシスコのCorona Labs社が開発・販売している、Android/iOSをターゲットとしたマルチプラットフォームアプリケーション開発のためのフレームワーク及びSDKの名称です。Coronaは、OpenGL ESのグラフィクス処理とLua言語によるスクリプティングにより、ゲームなどの2次元のアプリケーションの開発に適した構造を持っており、画面へのコンテンツ描写が処理の中心となるアプリケーションの開発に適したものとなっています。”――前回の石巻ハッカソンBLOGより。

またプログラミングすることなくPhotoshopを使ってアプリ開発ができるCorona SDK用のPhotoshopプラグインツールであるKwikを用いた教室もIT Boot camp部門では開催されました。

“Kwikはデザイナーやイラストレータ向けのツールでインタラクティブなeBookやコミック本をCoronaで作りたい人にはとても便利なツールです。”――とKwikについてはCoronaのサイトに書かれています。今回のハッカソンでも、実際にPhotoshop経験のある高校生や社会人がPhotoshopで制作したグラフィックをCoronaで動かし、最終的にAndroidアプリにすることができるようになりました。IT Boot camp部門の3日間にわたる講習はステップ形式でハンズオンによって進められていきました。

IT Boot camp部門(Corona SDKの講習風景)
IT Boot camp部門(Corona Kiwiの講習風景)

「チャレンジング部門」は、開発を学んでまだ日が浅い若者を対象にした部門です。この部門の参加者で注目されていたのは、昨年のIT Boot campで初めて開発を経験した第1回石巻ハッカソンの卒業生や東北で定期的に開催されている開発講習イベント「東北TECH道場」に通いスキルを着々と身に付けてきた若者たちでした。開発を初めてまだ間もない若者たちではあるものの技術を磨いてきた彼らには、「この3日間ひたすら開発に集中し、まわりをあっと驚かせるようなアプリをつくる」という意気込みが感じられました。チャレンジング部門では、チームで参加される方もいましたし、個人で参加して当日にチームを組んで開発を行うという方も見られました。

熱い意気込みが伝わってくるチャレンジング部門

「どや部門」は、開発経験者で仕事として携わっている、あるいは既に何個もアプリを開発しているなどといった高いスキルを持った方たちが参加する部門です。「石巻の若者たちに3日間で最高にすごいものをつくってレベルの高さを見せつけ、触発する」という意味合いから「どや部門」と命名されました。

「どや部門」でファシリテーションをとっていただいたのは、デザイナーでありSimejiを中心としたモバイルプロダクトの制作に携わっている矢野りん氏です。矢野氏にはデザイナーとしてどや部門に参加してもらうことに加えて、どや部門に参加する開発者のコミュニケーションをとりまとめ、石巻ハッカソン開催前にアイデアソンを実施してプロジェクトの“あたり”をつけていくといった、ハッカソン運営面でもサポートいただき、さらに最終的には“どや”と参加者を圧倒する成果まで披露していただきました。

開催前からのアイデアソンで数々のアイデアが生まれる

今回は講師や運営スタッフ、各部門の関係者については開催前からGoogle+でコミュニティをつくりオープンな環境で情報共有を図っていました。そのため「どや部門でアイデアソンが行われる」といった情報が刺激になり、「チャレンジング部門でもアイデアソンをやろう」といった流れを生み相乗効果が得られていました。
そのアイデアソンはオフライン/オンラインで行われ、チャレンジング部門では「消費カロリーに応じたメニューを表示する健康系アプリ」、「ご当地キャラがあちこちを歩いているARアプリ」、「ブレスト用アプリ」、「振られたという言葉に反応する慰めアプリ」などが、どや部門では「無限の録画」、「子供でも手軽に扱えるモデリングができるアプリ」、「ユーザーがポテンシャルに気づいて行動を起こせる気づかせ系アプリ」などのアイデアが出され、これらアイデアをもとにGoogle+上でさらに議論を重ねていくようすも見られました。

石巻ハッカソン、いよいよスタート!

7/26日の午後からハッカソンがスタート。古山氏からは「石巻には若者たちが活躍できるフィールドが少ないがITには無限の可能性がある。エンジニアのスキルを学べば石巻から世界に挑戦できる人材が生まれると信じて邁進している。この3日間で何かを得て欲しい。全国からプロのエンジニアが参加しているので、彼らと接してぜひ自分の学びにしてください」といった開催宣言が行われました。
続いてHack For Japan及川からは、ハッカソンそのものについて、Hack For Japan活動の説明がありました。さらに各自の自己紹介を経て、それぞれの部門に分かれて石巻ハッカソンが開始となりました。石巻工業高校で行われていたため、部門ごとに各教室に分かれての作業となります。教室内の黒板を使ってのアイデア出しなども見られ、学校での開催ということで、いつものハッカソンとは違った雰囲気で行われ、3日間をかけてそれぞれが最大の成果をめざして開発に取り組んでいきました。ハッカソン開催中は、ハッカソンに取り組むだけでなく、ヤフー復興ベースを訪問したり、石巻復興バーで飲んだりなど、石巻を楽しむ機会がありました。

黒板を使った議論も

成果発表。IT Boot Camp部門やチャレンジング部門でいくつもの成果が。そしてやはり、どや部門は“どや”だった!

最終日には各部門から成果発表が行われ、各部門さまざまな成果が出されました。
IT Boot campの部門では「ビリヤード」、「エアホッケー」、「太鼓をたたくと音が出る(corona wikiにも演習として出てくるものを発展させたアプリ)」、「画面上に並んだ数字をボールではじき飛ばす」、「シルエットの木に触ると鳥が飛んだり、時間がたつとイベントが起こる時計アプリ」など、はじめてプログラミングを体験した方がほとんどにもかかわらず、多様なアイデアのアプリが発表されました。
またKwikを使ったチームでは、「オス・メスを仕分けるひよこ仕分けアプリ」、「ピンボール」、「石巻の名産をモチーフにしたパズルゲーム」、「納豆をひたすら混ぜて、回数が増えていくとイベントが発生するアプリ」、「ボーリングゲーム」など、こちらもユニークな発想のアプリが発表されました。
このIT Boot campにて優秀賞として選ばれたのは高校一年生が制作した「画面上を逃げる顔文字をタップして捕まえる鬼ごっこゲームアプリ」、高校三年生が制作した「先生のキャラクターを海の底から救出するゲームアプリ」、同じく高校三年生が制作した「先生のキャラクターをタップすると人形ように触れるアプリ」が選ばれました。ポイントとしては「アイデアが良かった」、「デザイン的に面白い」、「工夫しようという試みがあった」、「発表を見ている方たちが、楽しんでいた」といった点で高い評価を得ていました。

優秀賞に選ばれた高校三年生の発表
チャレンジング部門では「未来へのキオクAPIを使い、どこにいてもご当地キャラが出入りし、タップすると現在の宮城の情報が得られるARアプリ」、「被災地でがんばるママ向けの子育て・食育系アプリ」、「わんこそばをモチーフにしたゲームアプリ」、「石巻のロゴをパズルにした落ちものゲーム」、「Google Play ServicesのActivity Recognition APIを利用して、徒歩、自転車に乗っている、クルマに乗っているなどユーザーの行動を表示するアプリ」などが発表されました。
チャレンジング部門での優秀賞は「学スケ」と名付けられた学生用時間割スケジューラーアプリです。このアプリは大学一年生とプロのエンジニアのチームにより制作されたもので、大学生の「自分の欲しいアプリを作る」ことを意識して思いついたアイデアから生まれました。石巻工業高校の生徒に捧ぐとされたこのアプリは、「普通科の学校用時間割アプリでは、機械製図など特殊な教科が入力できず自分の時間割を作れない」という課題を解消することをめざしました。
このスケジューラーは時間割をみんなで共有でき、さらには宿題を忘れないようにするアラーム機能も付いています。自分の身近なところからの発想であるということや完成度において評価されました。このアプリを思いついた大学生は、昨年の石巻ハッカソンでIT Boot campに参加した方で、corona SDKを1年、javaを半年ほど学んでおり今後が楽しみな存在です。

大学生による「学スケ」の発表
どや部門では「corona SDKのテストが行えるアプリ『Corona SDK test runner』」、「きれいにデザインされた背景色が選べるアラーム時計」、「防災に関するツイートを発信するアカウント特務機関NERVの情報をまとめた『NERVまとめ』サイト」、「困ったこととその解決策をつのる他力本願コラボレーションツール『ポテンシャライザー』」、「国会議員の所属政党履歴をgitで管理」、「ジオキャッシングというGPS機能を備えた機器を使って現実世界で行うアウトドア宝探しゲームにおいて、Google Glassを使って宝の場所が通知されるアプリ」などが発表されました。さすがにプロの開発者たちが集まっている部門だけあって、アプリやサービスの目的が明確かつデモのレベルも高く、参加者はとてもいい刺激を受けたのではないでしょうか。
印象的だったのは「NERVまとめサイト」をつくった石森大貴氏のプレゼンでした。石森氏は石巻市出身で実家が被災されたとのことで「石巻の中高生や大学生にプラスになれば」と参加されたそうです。石森氏は「自分で何かをやると世の中が変わるよ」ということを震災時の停電を防ぐ目的で行われた特務機関NERVのヤシマ作戦でのエピソードなども交えて話していただきました。

当初は公開する予定はなかったが、ハッカソン開催中に山口・島根の豪雨災害が発生したため公開された「NERVまとめサイト」
どや部門における優秀賞は前述の矢野氏に開発者2名のチームで制作された「ボクスケ」と名付けられたアプリです。3Dプリンターで出力できる3Dモデルを小学生でもつくれることをめざしたアプリという、とても難易度の高いアプリをハッカソンで形にしてしまう圧倒的なレベルの高さで文句なしの優秀賞でした。このアプリの素晴らしい点は、3D CADで使われるz軸の難しさを解消した点にあります。z軸を2Dの色の濃淡で表現することにより、直感的に3Dモデルがつくれるというものです。デモにおいても実際にモデルをつくるところから、3Dプリンターで出力できるCADデータに書き出すまでが見られ、まさに“どや”という完成度で、すべての参加者に驚きを与えていました。

どや部門で優秀賞となったボクスケチーム
すべての参加者の成果発表が終わった後、古山氏の総括が行われました。
「昨年、第一回目と比べて思ったのはIT Boot Campのレベルの高さ。とてもクオリティが高かったと思います。また、どや部門は本当にどやでした。同じ時間を使って開発してこれだけスゴイものをつくっている。上には上がいるのを実感できたのではないでしょうか。またチャレンジング部門ではIT Boot Campで学んでいた子が優勝できたのがうれしかったです。これからももっと開発者をめざす人の輪が広がっていって欲しいと思います」
こうして3日間にわたる第2回石巻ハッカソンが幕を閉じました。

次の石巻ハッカソンはもうすでにスタートしている!

今後もHack For Japanでは「震災から10年後の2021年までに石巻で1000人のIT技術者を育成する」というイトナブの目標を支援していきます。
実は石巻ハッカソンの後、東京で開催されたトークイベント“世界で一番面白い街「東北・石巻」に学ぶコミュニティデザイン「なぜ震災後、石巻には『面白い人』が集まるのか?」”があり、そこでイトナブの古山氏に加え、Hack For Japanスタッフの及川、高橋もディスカッションに参加しました。そこですでに来年の石巻ハッカソンのスケジュール(2014年7/25~7/27)が発表されるなど、次への動きが始まっています。
このブログを読んで興味がわいた方は、ぜひ来年の石巻ハッカソンへ参加して実際の雰囲気を楽しんでください。
最後に今回の石巻ハッカソンに参加いただいた方、講師や運営に携わっていただいた方など、すべての方にお礼申し上げます。ありがとうございました。また参加された方にはアンケートに答えていただいていますので、そちらは集計後、追ってご報告させていただきます。
参加された有山氏によるITproに掲載された石巻ハッカソンレポート

石巻ハッカソン開催のお知らせ

石巻の熱い3日間が今年もやってきます。
7月の26(金)、27(土)、28(日)と宮城県の石巻市でハッカソンに参加してみませんか?
昨年もHack For Japanで共催させて頂いたイベントを今年はスケールアップして開催します。IT Bootcamp部門、チャレンジング部門、どや部門の3つの部門があります。

IT Bootcamp 部門

プログラミングに初めて触れる方向けで、Corona SDKを用いて3日間でAndroidアプリの開発が出来るようになります。本当に3日間で出来るようになったという昨年の実績もあります。

チャレンジング部門

昨年のBootcampで初めてアプリ開発に触れた高校生や大学生たちはその後も東北TECH道場などで修行を続けています。この部門では、そんな少し成長した彼らがCorona SDKやJavaを使ってAndroidアプリを開発し、「どや部門」の凄腕エンジニア達に挑むべくチャレンジします。

どや部門

腕に覚えのある方に参加して頂き、3日間で「どや!」と言えるものを開発して石巻のこれからを担う若者達に刺激を与えて頂ければと思います。テーマは緩く「東北・石巻の事を考えた何か」で、開発プラットフォームは自由です。Androidアプリに限らず、参加される方の最も得意とするもので「どや!」して下さい。また、本番の1週間前辺りに東京でアイデアソン (*1) の開催も計画中です。直前ではありますが、まずはこのアイデアソンに参加頂いてから本編のハッカソンへの参加を判断して頂くということでも構いません。
*1 アイデアソン … ハッカソンで開発するものを考えるブレインストーミングのようなもの

普段プロのエンジニアとして活躍している皆さんには是非この「どや部門」に参加して頂ければと思います。石巻でITを産業として盛り上げていく未来へ向けた取り組みと言えるものだと思いますので奮ってご参加下さい!

なお、26(金)は平日となりますので、「土曜からなら参加出来るのだけど…」という方でも 27(土)、28(日)の2日間の参加でもOKです。

お申し込みはこちらのサイトにあるフォームからお願い致します。

また、IT Bootcampやチャレンジング部門で使う Android 端末の募集もしております。Android 2.3 以上が動作するもので、もし使わなくなった端末がありましたらご提供頂き、ハッカソンの開催にご協力頂ければと思います。ご提供頂ける方は info@hack4.jp までお知らせ下さい。


石巻ハッカソン

場所: 宮城県石巻工業高等学校(宮城県石巻市貞山5−1−1)
日時: 2013年7月26日12時〜7月28日13時まで
交通、宿泊等の詳細はこちらのサイトをご覧下さい。

昨年のIT Bootcampの様子

Hack For Japan スタッフ 高橋憲一

Hack For Japan 3年目の活動目標「テクノロジーで社会的課題を解決する人のためのコミュニティー作り」

東日本大震災発生から立ち上がった Hack For Japan も、開始後2年が経過しました。我々は、以下の点を重視して3年目の活動を行なっていきます。
「テクノロジーで社会的課題を解決する人のためのコミュニティー作り」
具体的には、これまで Hack For Japan スタッフが主体として行なってきた、Hack For Japan 名義のハッカソンやワークショップを、Hack For Japan スタッフ以外のメンバーでも開催できるよう、オープンに活動していきます。
例えば、
・地域でのハッカソンやアイデアソン、ワークショップ、勉強会などの運営をお手伝いする
・地域でイベントや勉強会を運営するオーガナイザー間のコミュニティー作り
・ハッカソン運営のためのマニュアルやチェックリストなどのツールキット作成
・ハッカソン実施後の成果をまとめるためのサイト作成
など、社会的課題を解決するためのハッカソンを誰もが開催できるような仕組みを作っていこうと考えています。
これまで通り、自分たち自身でハッカソンやワークショップを開催していくことも行います。しかし、スタッフだけではない多くの人が繋がりハッカソンを実施していくことで、様々な地域でコミュニティーが出来上がることを目標として活動していきます。
2年目の活動
Hack For Japan の2年目は、震災復興では復興・復旧支援データベースAPI活用ハッカソンの実施や、現地での地図作りを行う復興マッピング活動、他にも未来に向けた取り組みとして被災地の高校生を対象にしたIT Bootcampなどを行いました。また、震災関連以外では、宇宙のデータを使った国際ハッカソン、「International Space Apps Challenge」 の日本地域のオーガナイズや、気象庁とのオープンデータハッカソン(GLOCOMのレポート記事)、国際的なオープンデータイベントである、International Open Data Day の東京地域のオーガナイズ(参加者のレポート記事)などをさせていただきました。
また、復興支援にITスキルを活かしたい方に対し、支援が欲しい人とのマッチングの機会を提供する、スキルマッチングの仕組みも開始しております。
最初のオープンデータ活用ハッカソンで生まれたプロジェクトの一つ、Spending.jp (税金の可視化サイト)は今では5都市に飛び火し、他の地域でも導入が進んでいます。

「ハッカソンは本当に有効だったのか」から始まった2年目の振り返り
Hack For Jpan 名義のハッカソンをスタッフ以外が行なっていくことになった理由をお伝えするには、まずはスタッフ間の振り返りミーティングの内容を共有する必要があります。Hack For Japan は当初から、1年毎に自分たちの活動を振り返り、活動を継続するか止めるかを検討することになっています。
振り返りミーティングは、スタッフの一人による「ハッカソンは震災復興に本当に有効だったのか」という問いかけから始まりました。ハッカソンは本来楽しいものであり、震災復興というテーマにハッカソンはふさわしくなかったという可能性はないか?という問いかけです。Hack For Japan ではハッカソンを中心に活動を行って来ましたが、残念ながら被災地で使われているものはあまりないと言わざるを得ない状況です。
しかしながら、中にはボランティアセンターのホームページリニューアルや、ハッカソンで生まれたアプリがその後も形を変えて使われているなどの成功事例もあります。そういった事例を分析してみると、「現地のニーズから生まれたものは役に立ったものが多い」というある意味当たり前の気付きが得られました。ユーザーの声が重要だということです。
また、デザイナーやディレクター、自治体関係者などの、エンジニア以外の参加者が少ないという問題もありました。技術的な面は検討できても、「実際にどう使われるか」といった面の深い検討や、ユーザーにどう届けるか、見せ方をどうするかといった点の検討が浅かったということもあったかもしれません。また、プロジェクトを客観的に評価し、助言を与えたりハッカソン実施後のプロジェクトの方向性に道筋をつけるための助言を行う存在(メンター)がいれば良かったかもしれません。
もう一つ不足していたのは、データです。例えば避難所の情報など多くのデータが、なかなか公開されていませんでした。ハッカソンという短時間では、既存のデータを組み合わせて役に立つ物を作ることが多いですが、そのために使えるデータが少なく苦労しました。
ユーザーの声、メンター、データを補完する
ユーザーの声、メンター、データ、その3つを補完することができれば、ハッカソンという手法そのものは変える必要はないのではないか。それが我々が見つけた仮説です。
データについては、これまで何度かオープンデータに関するハッカソンを行なっているように、これまでも色々と取り組んで来ました。これは引き続き行なっていきます。メンターについては、より多様な参加者を募ると共に、ハッカソン参加者のプロジェクトを継続して支援するような仕組みも考えたいと思います。
最後のユーザーの声についてですが、これは課題がある場所で開催することが一番だと考えました。
課題に対して真剣に、普段から取り組んでいる人がハッカソンの中心メンバーとして参画すること、これが必要だと思います。そのために、Hack For Japan のスタッフだけがハッカソンを企画するのではなく、誰もがハッカソンを開催できるような仕組みを考えたいと思っています。

そうした活動を通じて、Hack For Japanに参加する多くの人々の結びつきを作り、オープンデータを促進させ、次なる震災が起きた際にITによる復旧、復興支援活動が少しでも多くの効果をあげられるようにしたいと考えています。

今後の予定
2年目の活動ではオープンデータ関連のハッカソンなどにも活動の幅を広げて来ました。既に書いた通り、これからは誰でも社会的課題を解決するためのハッカソンを実施することができるような仕組みを作っていきます。まずは、近々ハッカソンを実施したい人のための具体的なガイドラインなどを公開していく予定です。
従来通りハッカソンやワークショップも実施しますが、宇宙データを使ったハッカソン、International Space Apps Challenge は既に募集を開始しています。(詳しくは http://tokyo.spaceappschallenge.org/ をご覧ください。)
復興マッピング活動は次回は石巻での開催を予定しています。(詳細は別途告知します)
引き続き、Hack For Japan をご支援いただけましたら幸いです。
Hack For Japan Staff 一同 

ICT ERA + ABC 2012 東北(後編)

ICT ERA + ABC 2012 東北の報告記事の後編です。(前編はこちら

Hack For Japan – コードでつなぐ、想いと想い。これまでの取り組みと未来へ向けて。

東北大学の萩ホールという大きな部屋で Hack For Japan としてスタッフの高橋が登壇し、Hack For Japan が立ち上がった時の想い、そして 2012 年に入ってからのアクティブな活動の話をさせて頂きました。
Hack For Japan のキャッチコピーである「コードでつなぐ。想いと想い」、この言葉を改めて振り返ることから始め、その想いの一例として登壇者の高橋自身が Hack For Japan に関わるきっかけの話をさせて頂きました。
最近のアクティブな復興支援活動としては、次の4つを紹介致しました。

復興マッピング活動

復旧復興支援 DB API ハッカソン

写真みつかるプロジェクト

Hack For Japan 直接のプロジェクトではありませんが、昨年12月に行った「復興ボランティア情報交換会」のための石巻へのバスツアーがきっかけになったということで、プロジェクトへの支援の呼びかけも兼ねて紹介させて頂きました。( http://www.shashin-mitsukaru.jp/ )

前編の高校生トラックのトピックでも触れた石巻 Bootcamp

講演の最後のスライドは「日本が復興するまで我々はハックし続ける」という想いを表したこのコードで締めさせて頂きました。

スライドの全編はこちらで、動画はこちらで公開しています。

被災地視察

今回のイベントの一環として、翌日の 10 月 21 日には3台のバスを借り切り、イベントの参加者から集って石巻から女川を回る被災地視察も行われました。Hack For Japan スタッフの山崎と高橋もこの視察に参加致しました。

石巻 門脇小学校付近

津波と火事により大きな被害を受けた場所ですが、グラウンドで野球の練習をする光景が見られました。筆者(高橋)はこの場所を訪れるのは 2011年9月、2012年3月、そして今回で3回目になるのですが、このように活気のある様子を見ることが出来たのは初めてです。「門小ガッツ 僕らは負けない」という文字が校舎に書いてあります。
そしてその隣にある小高い丘に続く階段を登って海の方を振り返り、瓦礫も片付けられた現在の光景を見ると、最初からそこには何も無かったような錯覚に捕われます。しかし一方で想像を超える高さの津波だったこと、この階段を駆け上って避難した方々の気持ちを思うと、このことを決して風化させてはいけない、伝えていかなければいけないのだということを思い返した次第です。

いしのまき大漁まつり

当日は「いしのまき大漁まつり」というイベントが行われていました。沢山の方々が来場されており、こういう活気のある場面を見るとこちらも嬉しい気持ちになります。筆者らも屋台で海の幸を満喫しました。少しずつ復興が進み、地元産の海の幸を味わうことが出来るのは素晴らしいことだと思います。

 

会場となったサンファン バウティスタパークは伊達政宗の時代にローマとの間を2往復したという帆船の名前がつけられているパークで、その復元船が展示されています。船は津波の被害を受けながらも大きな損傷は免れたとのことで、現在は写真のように奇麗な状態で展示されておりました。

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津波に耐えた復興のシンボル、サンファンバウティスタ号

女川

写真のように、残されている津波の爪痕もありますが全体としては片付けが進んでいます。

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写真の建物は、カタール基金により10月に完成したばかりだという多機能水産加工施設で、女川の水産業再生の核になっていくとのことです。

視察を終えて

震災から1年と7ヶ月が経過し、今回の視察では一歩一歩着実に復興に向けて進んでいる場所があることを知ることが出来ました。Hack For Japan も皆様の想いを大切にし、善玉ハッカーとして今後も活動を続けていきたいと思います。
Hack For Japanスタッフ 及川卓也, 高橋憲一

ICT ERA + ABC 2012 東北(前編)

2012年10月20日に仙台で行われた ICT ERA + ABC 2012 東北というカンファレンス(以下、ABCと略)で Hack For Japan として2つのセッションに協力致しました。このイベントはこれまで年2回東京で開催されてきた日本 Android の会主催によるもので、震災後の復興を考えるため、東北を盛り上げたいという想いから今回は東北での開催となりました。
通常なら Android Bazaar and Conference で ABC なのですが、IT による Earthquake Reconstruction Aid (震災復興支援)をテーマに掲げているために ICT ERA + ABC 2012 東北というタイトルになっています。

高校生トラック

ABCでは高校生/アカデミックトラックが用意されました。大人顔負けのプログラミングを行う高校生が最近は特に増えてきましたが、Androidアプリケーションの開発においても多くの高校生が活躍しています。
今回のABC高校生トラックには、7月末にHack For Japanもお手伝いした石巻IT Boot CampでAndroidのアプリケーション開発を学んだ石巻工業高校の生徒も登壇したほか、岐阜県立大垣商業高等学校や灘高校の生徒も発表を行いました。

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石巻IT Boot CampでCorona SDKを学び約2日半でAndroidのアプリケーション開発を経験した、石巻工業高校の生徒たちはその後も活動を続けており、アプリ甲子園にも進出しました。アプリ甲子園はスマートフォンアプリ開発の中高生のためのコンテストです。2年目となる今年は9月30日に決勝戦が行われました。石巻工業高校の生徒は残念ながら入賞がなりませんでしたが、他の参加者との交流なども通じて、大きな刺激を受けました。詳しくは、コンテストレポートをご覧ください。
今回のABCには、石巻工業高校のイベントとも重なったため、引率の先生1名と生徒2名での参加となりました。筆者が到着したときにはすでに会場入りしており、スライドの最終調整とリハーサルをしていました。高校生トラックの先頭バッターということもあるのでしょう。まだ本番には時間があるにもかかわらず、極度に緊張しており、サポートする側のこちらにもそれが伝わって緊張してしまいました。
彼らのセッションでは、Androidのアプリケーション開発に携わることになったきっかけから、IT Boot Campの振り返り、そして開発したアプリケーションの紹介、開発を通じて学んだことの紹介がありました。
もともと、授業でVisual BasicやC言語などの勉強はしたことがあったものの、本格的なアプリケーション開発はIT Boot Campが初めてだったという彼らですが、そのきっかけは前回のブログでも紹介した石巻 2.0のイトナブでした。イトナブの古山さんが卒業生であり、学校にもたびたび訪れていたことから、IT Boot Campが企画されましたが、彼らにとっては、それが大きなきっかけになったようです。ほかにも、ほかの学校からは羨むような、いわゆる「Mac部屋」と呼ばれるMac OS XとWindowsがデュアルブートするiMacが完備した教室があったことなどの恵まれた環境が用意されていたこともプラスに働いたようです。
アプリ甲子園での経験も彼らを一段と成長させました。彼ら自身、優秀な同世代に負けれらないという気持ちになったと話していました。また同時に、企画力とデザイン、発表時のプレゼンテーション能力の重要性に気づいたようです。実際、アプリ甲子園での優勝者のプレゼンテーションは素晴らしいものでした。デザインの重要性は、Corona SDKを使うならば、特に大事であることにも彼らは気づきました。Corona SDKだけではないですが、優秀なフレームワークやSDKを使うと、あらかじめ備わっている機能を使うだけで、完成度の高いアプリケーションは出来上がるのですが、同じフレームワークを使ったアプリケーションがどうしても似通ったものとなってしまいます。個性的なアプリケーションにするためには、デザインについてもっと気を配る必要があります。
また、IT Boot Campの前と後を、参加者のアンケートを元に披露してくれました。参加前には、Androidに対しての偏見があったと彼らも述べていますが、実際に開発者の視点を得られたことにより、視野が広がり、Androidに対しても、iOSに対しても見方が変わったようです。
最後に、IT Boot Campでチューターとして参加した者を代表して一言と言われて、筆者(及川)からも話しました。
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ITでの復興支援を目的として発足したHack For Japanが、スタッフなどが被災地を訪れるなどして、震災前に戻すよりも新しい街にすることが大事であると学び、そして、そのためには若い世代を育てることも重要であることを認識したことを伝えさせていただきました。その上で、以下の3つのお願いをさせていただきました。
まず、筆者たちのような開発者へのメッセージとして、後進を育てましょうと言わせていただきました。若い世代を育てることは健全に技術を発達させ、業界を発展させるためにも必要です。自分たちだけでなく、初心者である若い世代にも情報を積極的に共有していきましょう。
次に、筆者はこの立場でもあるのですが、企業(ベンダー)の方々へのメッセージも伝えさせていただきました。IT Boot Campが成功したのは、Corona SDKが無償で利用できたこととAndroid端末が生徒たちに無償供与されたことによる影響も大きいです。是非とも、若い世代のために必要なリソースの提供を考えて下さい。
最後に、主役である高校生に伝えました。彼らはセッションの中で、Facebook創業者であるMark Zuckerbergの「Done is better than perfect」という言葉を使っていました。私からも、是非この精神を維持し続けて欲しいと話し、さらに、最近知ったFabLabの考えである「Learn, Make and Share」、すなわち、学んだことを使ってすぐに作り、その学んで作ったことを共有することも考えて欲しいとお願いしました。これにより彼らの世界も広がり、成長を続けていけることでしょう。
高校生のセッションのサポートを行うために参加していましたが、彼らの話を聞き、彼らへのメッセージを伝えることで、またこちらが大きく学ばさせていただいたことになりました。
Hack For Japanスタッフ 及川卓也, 高橋憲一

スキルマッチング

Hack For Japanではスキルマッチングの取り組みを始めます。

Hack For Japanの活動に賛同いただいてる方の中には、復興支援などに対してITの力を活かして貢献したいという思いをお持ちの方が多くいらっしゃいます。このような思いを持っている方と支援を必要としている方とを繋ぐための取り組みをスキルマッチングとして開始いたします。

仕組みとしては、参加者の皆さんに自身のスキルを登録していただき、ボランティア募集者から依頼があった際にはスタッフが仲介するという形をとります。

適切にマッチングが行えるように、登録フォームはスキルを具体的に記入するようにし、プライバシーポリシー(個人情報保護方針)も作成しました。

趣旨にご賛同いただける方は、是非とも登録フォームからスキル登録をお願いいたします。

スタッフを代表して
及川卓也