3月11日の東日本大震災の発生から、半年が経過しようとしています。
震災の強い衝撃、混乱の下で産声を上げたHack For Japanも、活動開始から、ようやく、そして、早くも半年が経とうとしています。
この間、多くの人々の自発的な協力や参加に励まされ、促され、Hack For Japanは歩みを続けてきました。
「Hack For Japanとは、震災からの復興を継続的に支援するための、IT開発を支えるコミュニティです。」(*1)
こう宣言し取り組んできたこれまでの活動をどう捉えるのか。次の6カ月にどう立ち向かうのか——。
スタッフ同士で、オンライン・オフラインでの議論を行いました。
この議論は、Hack For Japanがこれまで実施してきた取組み(*2)、そして、そこから誕生した各種のプロジェクト(*3)を振り返って行いました。
「本当に被災地や被災者に役立つ成果を送り出せたのか。
役に立つべきプロジェクトは継続しているのか。
いや、そもそもそれは現場の人々に求められるようなものだったのか」。
議論は、重苦しい問いかけから始まりました。
「(支援を求める人々に)胸を張れるような成果が、決定的に足りない」「出発点の想いや、被災地や被災者への想像力が働いていれば、いまのようであるはずがない」「(現場ではなく)自分たち自身が主役と思い込んできたのではないか」「これまでのやり方は変えよう。変えるべきだ」。
Hack For Japanに期待を寄せてくれている多くの人々、貴重な時間をやりくりしてイベントに参加してくれた諸氏、そして、オンラインで活動を注視してくれている人々に、十分な成果を果たせていないことへの反省や苛立ちのコトバが飛び交いました。
一方で、「コミュニティという点では、他にないものが形成されてきた」「被災地を含めてIT業界周辺では少しずつ活動が認知され、期待も高まっている」「被災地でのイベント開催に手応えを感じた」との肯定的な意見。
また、活動方針をいたずらに厳格化することで、参加者やスタッフ自身の負荷を上げてしまう副作用への懸念も提示され、「成果を実現するためにも、認知や間口を広げる活動は必要。アイデアソン・ハッカソンは役割を果たしている」という意見も投じられました。
スタッフ面々の想いは、活動を見守ってくれている多くの人々の評価のように「否定」と「肯定」の間で揺れ動きました。
この議論を通じて導き出した、いくつかの提案があります。
以下簡略に、協力者、そして注視してくれている多くの方々と今後に向けた方向性を分かち合いたいと思います。
- スタート時の想い、「震災からの復興を継続的に支援するための、IT開発を支えるコミュニティ」を育てる取り組みを継続したい
- 推進するプロジェクトに対し、「それは現場のニーズにどう役立つものか」との視点でレビューを強化し、問題意識の風化を阻止したい
- その意義を体現するプロジェクトは、積極的な協力を通じてこれを育てていきたい
- 同じような想いで活動する諸団体との交流・協力関係をこれまで以上に積極的に築いていきたい
上記を踏まえ、スタッフ間で作業を分担、そして各方面からの協力を仰ぎながら、具体的な行動へと踏み出していきます。
特に、2.および3.の「レビュー強化」「支援強化」は、スタッフの反省と今後の成果期待の点で重要視するところです。
具体的には、これまでのアイデアソン・ハッカソンの実施スタンスではややもすると希薄化しがちだった「被災地・被災者の視点」を、企画段階から重視したい。
さらに、上記2種のイベントの間に「プロジェクトワークショップ」(仮称)を設けます。
現在、遂行中のプロジェクトは、この「視点」を、進捗状況と併せ、この場でぜひ共有しましょう。建設的な意見はもちろん、時に厳しい意見も交わしたいと思います。
最初の「プロジェクトワークショップ」は9月27日(火)に開催予定です(詳細は近日中に告知予定)。
これまでのHack For Japanから、これからのHack For Japanへ。
想いを新たに走り出したいと思います。
これまで以上のご協力、ご期待、そして痛烈なご意見をお寄せ下さい。
Facebook公開グループ「Hack For Japan」(*4)にもぜひご参加下さい。
投稿時刻も 9:11 とはw
スタッフや関係者の皆さんに一つだけお願いしたいのですが、被災地や被災者を支援するサービスやアプリがいずれ必要とされなくなる事を恐れないでください。
ボランティア関連の書籍では「ボランティアというのは、最後は『石もて追われる』存在であるべき」という五木寛之氏の文章がよく引用されています。
状況の変化等によってサービスやアプリの需要が減っているのに、それらの規模を持続、または発展させるにはどうするべきか?だけを考えてしまうと、プロジェクトの方向性に歪みが生じてしまいかねません。
もちろん、次の震災、次の次の震災が発生した時に何ができるのか?をこれからも問い続けて行くのは大切な事ですし、記録を後世に伝えるプロジェクトは残し続ける事がそもそもの目的です。
しかし、それはプロジェクトの規模を持続または発展させることと等価ではありません。
私が一番怖いのは、せっかく立ち上げられたサービスやアプリその物が消滅することで、記録された情報やノウハウが失われてしまうことなのですが、既にその兆候が出ているように見受けられます。
これから必要とされる活動の一つはそこにあるのではないでしょうか?
Hack For Japanに参加したことがないため、内情わからずのコメントになってしまいますが、少し過去のブログなどを振り返って思ったところをシェアします。何か役立てられる要素があれば幸いです。
過去に「震災時だけではなく、日常使いも可能なアプリケーションを」とした会がありましたが、あくまで「震災からの復興に直結するアプリケーションを」目指したほうがよいのではないかと思いました。
しかし、なぜ「震災時だけではなく、日常使いも可能なアプリケーションを」と掲げる必要があったかを推察すると、それは集まった人たち全員に、「震災からの復興に直結するアプリケーションを」発想するのに必要十分な被災地や被災者に関する情報がなかったからではないかと考えます。情報がなければ、お題設定もゆるめないと、ものづくりに進めない。そこで「日常使い」にお題設定を広げたのではないかと。
でも、ここで「十分な被災地や被災者の情報をもって事前学習した方のみご参加ください」とやってしまっては参加者を減らすだけ。
私の提案としては、参加者が扱うワークの範囲をもっと絞り込むことで、参加者の発想力や具現化力が最大限に活きる場の設計をすることが必要ではないかと考えます。
具体的には2案あって、一つは、アイディアソンなどのワークをやるときのお題設定を、まるっと全部ではなく、具体策のアイディアだしとその実現に範囲限定すること。
問題解決を3段階に分けると、
1.問題の特定(こういうことで困っている)
2.機会の設定(その問題は、こういう方向で乗り越えられるのでは)
3.具体策(具体的に、こういうやり方で解決にあたろう)
と考えられると思うのですが、1には被災地や被災者の状況を把握した上での分析力が求められるし、1〜2にも相当な企画力が求められるから、1〜3までまるっとワークのお題にして短時間で良質なものを生み出すのは至難の業だと思います。
それよりは、現地にも足を運んで十分な被災地や被災者の情報をもっている運営サイドが、その分析からある一つの問題にあらかじめ特定し、その解決策の方向性(機会)まで設定し終えた段階で、具体策を考えるところから参加者にお題提示するのがよいと考えます。
今回は、被災地のこういう問題に対する解決策としてこういうことを考えていて、その具体的なアイディアを練って作ってほしいというお題にしたら、アウトプットの精度はもっと上がるのではないかと思いました。
2つ目の案というのは、運営サイドが分析して1〜2工程まで進めておくだけの時間や余力をとれない場合ですが、そのときは1〜2の工程、3の工程を分けて、別グループでワークを実施したほうがよいかなと。1〜2で力を発揮する人と、3で力を発揮する人は別だと思うので、現地で情報を集めて分析→企画する会と、3でそのお題に対して具体策を発想しものをつくる会とを分けて実施してはどうかと。
文章化が下手で伝え切れていない部分のあるかと思いますが、普段企業研修などの演習設計をしている立場から思うところを共有させていただきました。