月別アーカイブ: 2011年8月

Hack For Japan 仙台会場(7/23・7/30) 開催レポート

Hack For Japan 仙台会場スタッフの菊池と申します。
私は仙台市在住の大学院生で、仙台会場の取りまとめをしております
小泉さん(@koi_zoo1)のお誘いでアイデアソン・ハッカソン両日のスタッフを
務めさせていただきました。
仙台でのHack For Japanは5月21日、22日に引き続いて2回目の開催となります。
今回の仙台会場は「未来を担う学生たちとコラボレーションを!!」という方針を掲げ、
仙台の学生ITコミュニティのSTDIO.S(Student Information technology
Organization for Sendai)と共同で開催いたしました。
結果、アイデアソンでは22名中6名、ハッカソンでは17名中4名の学生に参加して
もらうことができ、アイデアソンでは親子で参加された方がいるなど、他の会場以上に
幅広い年齢層の方に参加してもらえたのではないでしょうか。
当日の模様はUstreamアーカイブから確認することができますので、お時間の
ある際に是非ご覧ください。仙台会場のTwitterアカウント(@hack4miyagi)を
同時にご覧いただくと、当日の臨場感が味わえると思います。
全体の感想としては「震災時だけではなく、日常使いも可能なアプリケーションを」
というテーマで進行したことから、どのグループも個性的で利用者が手に取りやすい
アプリケーションを作ることができたのではないでしょうか。
また、アイデアソンで必要技術の絞り込みまで行えたことから、ハッカソンでの
作業時間を多く確保できたほか、技術に長けている方が他のチームの補助に
回ったり、デザイナーの方が十分な時間をかけて作業をすることができたことも
プラスになったのではないかと感じています。
ハッカソン終了後の記念写真。皆さん、良い笑顔です。




7月23日: アイデアソン
アイデア創出の専門家、アイデアプラント代表の石井力重さん(@ishii_rikie)を
司会進行役にお迎えして進行していただきました。この日は親子での参加や、
学生の参加者が多かったことから“出てきたアイデアの芽はどんなものでも
大事にする”という方針を掲げ、「復興のアプリを作る」というよりも
「面白いアプリを作る」ことに比重を置いてアイデアソンを行いました。
結果、仙台会場では次の6つのチームが結成され、ハッカソンへと繋ぎました。
「教えて! 冷蔵庫君!!」(チーム: ガラスの胃袋)
「自宅の食料の賞味期限を外から知りたい!」「食べ物の危険性を知りたい!」
というアイデアから生まれた「食べ物に関する情報を検索・通知するアプリ」です。
ユーザインタフェースを重視し、丸みを帯びた冷蔵庫と食品を模した可愛らしい
アイコンから、賞味期限やレシピ、うんちくといった情報を引き出すことが
できるほか、自身で見つけた記録しておきたい情報は”付箋”という形で
保存することが出来ます。
「パスワードクラック震度計」(チーム: 平均年齢未成年とオヤジ)
「非常時に家族のPCを使いたい!」というアイデアから生まれたサービスです。
パソコンやスマートフォンといった情報機器(以下、情報機器A)と震度計を
連携させ、ある震度以上の地震が発生したときに他の情報機器
(以下、情報機器B)にIDとパスワードを通知し、緊急時でも情報機器Aの
利用が可能になるというものです。
「Gene(ジーン)」(チーム: Gene)
「医療目的のデータベースがあれば便利なのではないか?」というアイデアから
生まれた「指紋などの画像から、個人の健康情報をインターネット上から
取得できるアプリ」です。指紋や虹彩といった生体情報が写った画像を
あらかじめサーバに記録しておき、これと持病や既往歴、処方している薬品
といった健康に関する情報をひも付けておき、緊急時に関わらず生体情報を
キーにこれらの情報を引き出せるというものです。また、生体情報から今日の
運勢を表示してくれるなどの娯楽要素も盛り込んでいます。
「復興笑点」(チーム: 復興笑点)
「復興アイデアを言わせろ!」というアイデアから生まれた「お題に応じた復興ネタを
投稿できるサービス」です。笑点のようにある“お題”に対応する「復興ネタ」を自由に
投稿するすることができると同時に、面白いと思ったネタには“座布団”という形で
レコメンドを付けることができます。これまで取得した座布団の数をランキング形式で
表示することもできます。
「人口サーモグラフィ」(チーム: 人口サーモグラフィ)
「ジオロケーションサービスを通じて、その場所にいる人の数をサーモグラフィの
ように表すサービスがあれば面白いのではないか?」アイデアから生まれた
サービスです。専用のアプリから観光地やお店などのランドマークにチェックイン
してもらい、チェックイン数から地図上に色を付けていきます。チェックイン数が
多いところほど色が濃くなるので、人がどこに集中しているのかや、最近流行の
スポットが分かるなどという効果があります。
「堪忍袋」(チーム: 堪忍袋)
「いびきをかいている人に気づいてもらえるアプリが欲しい!」というアイデアから
生まれた「音とバイブレーションで周囲がうるさいことを通知するアプリ」です。
携帯電話やスマートフォンのマイクから周囲の音を録音し、一定時間騒がしい
状態が続いたとき、大音量のアラームとバイブレーションで通知します。
UIも重視し、騒がしい状態が続いているときは画面の堪忍袋が膨らんでいき、
逆に静かな時は堪忍袋がしぼんでいきます。
途中、参加者自身の取り組みを発表するショートプレゼンや、アイデアソンでの
こまめな対話で、参加者間の相互交流を深めることができた良い一日だったと
感じています。
7月30日: ハッカソン
仙台会場も他会場と同様、アイデアソンから一週間後の7月30日にハッカソンを開催
しました。各チームごと当日のゴールを発表したあと、作業に移ってもらいました。
当日都合がつかず、開発に長けた方が抜けたチームもありましたが、事務局で予め
お願いしていたチューターの方や当日協力を申し出てくれた参加者の方の協力で、
逆に相互交流が進み、どのチームも一定の成果を出すことができました。
「教えて! 冷蔵庫君!!」(チーム: ガラスの胃袋)
このチームではレシピ、Tips検索とアプリ開始時のTips表示、アイコンによる
検索上位表示の3点をゴールに、WebとAndroidアプリの二つのプラット
フォーム上での作成に取り掛かりました。ハッカソン終了時には両プラット
フォームとも3点の基本機能は実装完了、AndroidアプリではUIまで実装すると
いう結果になりました。チーム内にチューターの方がおり、一般の参加者よりも
作業量が多いにもかかわらず、クオリティの高いアプリを完成させています。
デモURL
「パスワードクラック震度計」(チーム: 平均年齢未成年とオヤジ)
このチームでは地震発生時にインターネット上から震度を取得し、震度が一定
以上ならば画面上にIDとパスワードを表示させるアプリケーションを作ることに
しました。このチームはアイデアソンから人数が減り、開発に長けた方がいない
というトラブルに見舞われましたが、ダミーの震度データから画面上にIDと
パスワードを表示させる部分を完成させています。
「Gene」(チーム: Gene)
このチームでは個人情報の登録・照会・既往歴等の表示が可能なスマートフォン
アプリを作る予定でしたが、チームにスマートフォンアプリに長けた方がいなかった
ことから急きょWeb上での実装に変更。当日の急な変更に見舞われながらも、
テキストではありますが個人情報の登録・紹介・既往歴等の表示といった基本的な
機能に加え、UIのデザイン、娯楽要素である運勢表示まで実装するという、
最も完成度が高いチームでした。その完成度の高さから、各会場の成果発表では
仙台会場の代表として発表してもらいました。
デモURL
「復興笑点」(チーム: 復興笑点)
このチームではWeb上での投稿、投稿のリアルタイム表示、“座布団”の付加、
座布団ランキング表示という基本機能の完成をゴールに作業に取り掛かりました。
ハッカソン終了時には一部不具合が見られるものの、時間内でほぼ完成する
という結果になりました。こちらもチーム“ガラスの胃袋”と同様にチューターの方が
いらっしゃいましたが、負けず劣らずのクオリティを誇っています。
「人口サーモグラフィ」(チーム: 人口サーモグラフィ)
このチームではTwitterの投稿に含まれる緯度経度情報とGoogle Mapの二つを
利用して、そのスポットの人口密度を表すアプリをWeb上で実装することにしました。
こちらのグループもハッカソン時に技術に長けた方が一人もいないというトラブルに
見舞われましたが、Twitterの投稿から緯度経度情報を抜き出し、Google Mapの
特定地点上に円を描画するところまで完成させています。
「堪忍袋」(チーム: 堪忍袋)
このチームにはデザインに長けた方が一人もいないことから、音を取り込む、騒音度
の蓄積、アラームとバイブレーションの作動といった最低限の機能をiPhoneアプリ
およびAndroidアプリで実装することゴールに、作業に取り掛かりました。結果、
iPhoneアプリ版は音声を認識して爆発音を鳴らすまで、Androidアプリ版は音声を
取り込むところまで完成することが出来ました。
惜しくもハッカソンに採用されなかったアイデアについては、アイデアソンで
司会進行役を務めてくださった石井力重さんのBlogに掲載されています。
仙台会場から出た他のアイデアに対して、実現できるアイデアやもっと工夫できる
アイデアなどありましたら、Hack For Japanメーリングリストまで是非ご連絡ください。
また、現在以下のFacedbookグループにて仙台会場のプロジェクトを継続して
推進しています。
イベントに参加してない方でも上記プロジェクトに興味のある方は是非こちらもご覧に
なって下さい!

Hack For Japan 第5回スタッフミーティング

【会場】

  • 日時: 84日(木)19:00
  • 場所: Google 六本木オフィス
  • ust: http://www.ustream.com/channel/takoratta
  • 出席者:吉岡、及川、高橋、岩切、松田(遠野スタッフ)、山崎、石野、笹島、佐伯、鎌田、関、冨樫、白石、川崎
  • オブザーバー:ニッポン放送 鳥谷、清原

【アジェンダ】

7/23 アイデアソン・7/30 ハッカソン振り返り

  1. フォローアップ(以下、送ったメールから)
    • サイト上でのイベント情報の更新(イベント終了の通知)とりあえずの処置は及川のほうでやっておきました。抜けやミスがある可能性があるので、石野さん、確認お願いします。本格的な情報の追加はおいおい 石野さん、お願いします
    • 発表資料などが届けば掲載します。[TODO]
    • アンケートの集計及川のほうで8/3までに行い、次回スタッフミーティング前までにシェアしておきます。
    • 発表資料の整理東京会場は及川のほうで取りまとめをしています。遠野もすべてまとまっており、ブログ掲載済です。他会場は?
      • 仙台、会津のとりまとめを佐々木さん、小泉さんにお願いする。[TODO]
    • 写真すでに集まってきているから大丈夫かな?
    • ustのアーカイブ東京会場は石野さんにお願いできているのかな。他会場は?
    • ブログどなたか!
      • 東京会場のブログ(高橋さん;基本レポート、佐伯さん;補完+デザイナー目線)[TODO]
      • 会津若松会場のブログ(佐々木さん?要確認)[TODO]
    • 会場係から感想など(よしおか)
      • 片付けをしない人が多かった。勉強会の作法としては、後片付けまで参加者に啓蒙していく必要がある。
  1. [仙台会場所感]

    ・アイディアソンは石井力重さんの進行が素晴らしかった

     アンケートにも出ていますね。頼んで本当に良かったです!

    ・ボランティア等技術者以外からの参加がにごく少数だった

    前回はかなりいたんですが。ボランティア団体に宣伝する前にアイディアソンは満員になってしまったので。アイディアソンはハッカソンより大きい箱を用意した方が良いかも知れません。

    ・ハッカソンはチューターが大活躍

    今回学生の参加が多かったこともあり、プログラム初心者が多くアイディアをそもそもどう実現すればよいかわからないというチームも出ていました。チューターがそのあたりをうまく拾ってサポートしてくれていました。そのため、チューターがRubyiPhoneTwitterAPIに偏ったのが悔やまれます。

    ・プロジェクトの継続を促すためのFacebookグループが結構活発

    仙台の前回開催で生まれたPJ2つは東京中心へ移行、1つは企業が行う、残りは立ち消えとなっています。この反省からFacebookグループを作ってハッカソン当日から使うようにしてみました。うまく当たったのか結構活発に投稿されています。

      • Hack for Japanfacebookグループを作成。及川さん[TODO]
    • アンケート結果のレビュー https://docs.google.com/a/google.com/spreadsheet/ccc?key=0AvnK59H5VA5RdHltQjBEMVdWTWU1WjBJOFdmUWppdmc#gid=0
      • 意見あり、苦言あり
        1. 現地のものを首都圏で展開したい
        2. もっと幅広い人材に参加いただいたほうがよいのではないか?
        3. 被災地の現状を把握できていない参加者が多い
        4. Hack for Japan、必要なものの説明が足りなかった
        5. 会場間のコミュニケーションをもっと積極的に利用してもらう仕組みを用意できないか?
        6. 東京に拠点を用意するボランティア団体に参加してもらい現地の意見を聞けるのではないか?[検討事項]
        7. プロジェクト間の横のつながりや複数のプロジェクトに横断しての参加を促してはどうだろうか?
          • ひとりの参加者の方はスタッフがフォローしよう
          1. SI、運用よりの参加者がいると助かる
            • MLで聞いてみる[TODO]
            1. アイデアソン、ハッカソン以外の「~ソン」があってもいいのではないでしょうか?
            2. 各会場間の連携をスムーズにしたい。
              • 東北の会場は東京向けにお話してくれているのではないか?
              • 東北の会場で必要なものの要件を詰めて、アイデアができてから東京の参加者に開発を依頼するオフショア的なスタイルを検討[TODO]
              1. 自己満足になっていないか?
                • 生の声をもっととれるようにする必要があるのではないか?
                • 東京会場の参加者を被災地に視察に行ってもらえる仕組みを準備できれば。
                • 宮城でも仙台以外の場所でも開催を検討する[TODO]
          2. 新しくなったプロジェクト一覧ページに合わせて、プロジェクト運営方法にも多少の修正が加わりそう。意識合わせをしておきたい(白石)
            • ハッカソンにてアップデート
              1. 一覧サイトの運営をどうするか?
              2. データ元のテンプレートに適宜変更を加えていく必要がある
            • 問い合わせ先の用意
              1. 月一回の更新リマインダーを投げる仕様を検討中
              2. 終了ステータスのプロジェクトにはリマインダーを投げないような仕様にしたい
              3. メアドの掲載を避けたい人もいるので、Twitterアカウントではどうか?
              4. Hack for JapanのアカウントでフォローしてH4Jアカウントから連絡をとる
                • 連絡先の掲載などを避けたい参加者がいた場合は個別対応でとりあえず現状対応していく
                1. メンバー募集中ステータスの用意
                  1. 状態の管理に関しては、終了のものをアーカイブに寄せてショーケースからは非掲載にしていく
                    • アクティブなものをショーケースで掲載していく。非アクティブなものは掲載しないのシンプルな形にする。
                    • 非アクティブでアーカイブに寄せたあとに参加者から復活してくださいの意見が寄せられれば、アクティブに直す。
                  2. 人材募集は欲しい職能もわかるようにすると良い。
                  3. 一般の人が見ていないというスタンスで開発者に向けたサイトとして特化したほうが、サービスの誕生を促しやすいのでその方向に方針変換しました。
                2. Google Moderatorでのアイデア投稿の今後
            • 遠野まごころネットの現状報告、フィードバック(いわきりさん)
              • リニューアルに関して神奈川の参加者もジョインして実施中
              • 仮設住宅にネットカフェを設置活動の実施中
                1. カフェに設置する機器は準備中(無線、PCを準備中)
                2. 要望などを受けてアップデートしていく予定
              • 関さんのブログ
              • 雇用が生まれるモデルケースを共有するなどを考えよう
            • Tシャツプロジェクト
              • まだコードTシャツが欲しい参加者が居る
                1. 初回受注生産限定で作ったもの。(石野)
                2. 復刻版として1年後に販売するとか
                3. 他デザインに関しても岩切さんの業者の仕組みを見て判断する。
              • Tシャツの販売では注文・入金の確認、メールなどの運用面の負荷がある
                • 被災地で請け負える業者の方を現在確認中、検討結果をPJに連絡します [TODO](岩切)
                • レベニューシェアで2割程度を義援金として運用するなどの案を検討しています
              • 次回の開催はどのようにやりますか?
                • ハッカソン以外にできることについて、時間があればブレインストーミングしてみたいです(関)
                • (ゆるいですが)『継続性』をしっかり考えていきたい(川崎)
                  1. (継続性1)プロジェクトが発生する状況を持続させるために
                    1. 複数拠点同時開催である必要はあるか?
                    2. キャラバン的に全国回っても良いかも。
                    3. 参加動機には「○○のエバンジェリストに会いたい」というところもある。
                    4. 無理に同時開催はしないで、各会場で実施時期をずらしていく
                    5. 有名な人の参加は東北の会場では喜ばれる
                      1. 沿岸部の人はイベントの実施自体でも喜ばれ、活発な展開になる
                      2. 内陸部の人はIT情報の入手などの目的も含まれるので、エヴァンジェリストの参加などが喜ばれ、参加を促す形になる
                        • 同時開催をしない形でエヴァンジェリストを集結させて開催など
                      3. 小泉さんに企画を検討してもらう[TODO]
                    6. Hack For Japan Tech Talkといった感じのイベントは出来ないか?

                      上記の「エバンジェリストに会いたい」に通じますね。また、ハッカソンで○○APIが使えるとなっていても、たとえチューターがいてもすぐにその場で使えるとはならないものです。そこでHack For Japanで利用できるAPIの解説やハンズオンがあるイベントなどいかがでしょう?

                  2. (継続性2)始まったプロジェクトが続くために
                    1. Power Apps JapanMA7 などのコンテストで、モチベーションアップ?
                    2. 収入?(遠野モデルの共有)
                      • プロモーションの活動の場として利用してもらうことでモチベーションアップに使ってもらう
                      • コンテストの連携などで打ち上げ花火だけで終わらない形を考えておく必要がある
                      • Just GivingHack for Japanとしての連携がとれれば収入とモチベーションを維持するアイデア
                      • 既にあるNPOに相乗りする形では?
                  3. (継続性3)Hack For Japan 運営自体
                    1. 運営自体はバジェット0でも概ね問題なく進行できている。すごい!
                    2. 会社の出張にできない場合の地方会場への交通費を捻出する方法とか?仙台への交通費は「東北ITコミュニティ復興支援基金」からとかで。
                    3. 日本版 Code for Americaみたいにして、Fellow 制度+寄付金を募る? http://codeforamerica.org/
                      • 企業のCSR活動で寄付金を募るのもあるが、その活動に関しても運営に大きくリソースがかかる。
                      • 小物の購入費、被災地での宿泊費が全てスタッフのお財布からという問題
                      • NPOではなく任意団体として会計報告をして運営していくなど検討
                      • 想定される運営費用をリストアップして棚卸しして今後の方針を検討する。及川さん [TODO]
              • 次回
                • 2011年9月5日 19:00~ 開催、場所未定

              (文責)Hack for Japanスタッフ 鎌田篤慎

              第3回アイデアソン・ハッカソン東京会場からのレポート – ハッカソン編

              7月23日(土)のアイデアソンに引き続き 7月30日(土)にはハッカソンが開催され、東京会場では50名を越える皆様に参加頂きました。
              Tシャツ
              新たな試みとして Hack For Japan でTシャツを制作しました。ご希望の方から事前に注文を受け付け、ハッカソン会場でお渡ししました。早速これを来てハックされる方も多数! 背中のコードに「日本が復興するまで、ハックし続ける」想いが込められています。


              ※必要な原価を差し引いた利益は 「ITで日本を元気に!」を通して被災地に寄付させて頂きました。
              遠野の報告
              今回新たに開催地として加えさせて頂いた岩手の遠野会場では23日にアイデアソン、続けて24日にハッカソンが行われました。実際にスタッフとして参加してきた山崎富美さんがその報告を行いました。録画はこちらです。
              岡山からの参加者

              P1020396.JPG

              3月の第1回ハッカソンの際に岡山会場で参加された方が、今回は東京会場に駆けつけてくれました。
              開発された act4-lives.netの説明をして頂き、途中他のチームに参加中にエンジニアの方から熱心にアドバイスを受ける場面も。困った時には他チームから強力な助っ人によるアドバイスも得られるというのは、様々なバックグラウンドを持つ方が集まるハッカソンならではです。
              遠野でも参加された方からのアドバイス

              7/23,24に行われた遠野会場に参加された原田さんが来てくれました。
              実際に遠野でのボランティア活動も行われている方なので、急遽ボランティアニーズマッチングのチームに入って頂き、いろいろとアドバイスをお願いしました。またクロージングの時にも一言話して頂き、「ボランティアの現場ではハード的なものからソフト的なものにシフトしているところがある。IT開発者の力がますます必要になってきている」という話しはとても参考になると思います。
              ラジオという媒体
              前回に続き今回もニッポン放送さんに参加頂き、「広く知らせることが出来る点、デジタルとアナログの変換という観点で是非ラジオという媒体を活用して欲しい」というお話しをして頂きました。
              ネットアクション2011
              経済産業省の守谷さんからはネットアクション2011についての話しをして頂きました。「国はローデータ公開することに力を入れていきます。技術的に公開の仕方など是非ご意見下さい」とのことです。
              東京会場で取り組まれたプロジェクト
              東京会場では全部で10のプロジェクトが走っていたのですが、スタッフとしても一つのチャレンジである Hack For Japan を hack する取り組みがありました。現状、見やすいとは言えないプロジェクト一覧のページを見やすく機能的なものにしようという取り組みで、スタッフの白石さんがプロトタイプとして作っていた仕組みを元に2名の助っ人に参加して頂いた結果、新しいプロジェクト一覧が公開されています。

              P1020389.JPG
              成果発表の録画はこちらです。
              各チームの発表が始まる時間の目安を下記チーム名の右側に[00:00:00]のように表記しています。
              ダジャレクラウド[00:00:43]
              • 次のハッカソンまで実装する内容を決めた
              • ランキングをするにはパラメータ評価が必要。
              • +1 や「いいね」ボタン、「これ、ダジャレじゃない?」と通報するボタン
              • スマートフォン向けの実装も計画
              みんなのまち[00:06:22]
              • 街で改善が必要な点を見つけたら写真を撮って位置情報付きで投稿する iPhone アプリの部分を実装。
              崖イイネ![00:04:24]
              • androidアプリとサーバーサイドの実装を進め、android アプリから崖の写真を位置情報付きで twitter にアップする仕組みまで出来た。
              eコマースで復興店支援[00:08:44]
              • 復興店舗リストを元に各 e コマースサイトでどれが東北復興のお店なのか分かるようにユーザースクリプトを書いた。
              • 楽天版
              • 禁断のYahoo版
              電子工作チーム[00:10:44]
              • このチームではハードウェアのハックを行った。
              • ガイガーカウンターのパルスを出すユニットに LED 表示を組み合わせた。
              • 熱中症対策で、温度センサーとマイコンを組み合わせたものを作ってみた。
              Act4Lives [00:14:38]
              Hack For Japan プロジェクト一覧改善[00:16:58]
              • 無機質なスプレッドシートが見やすい一覧表示になり、ソート、条件抽出なども可能に。
              • アップデートのリマインド機能もある。
              ボランティアセンター向け ニーズ公開ツール[00:18:59]
              復興いいね! [00:23:11]
              • デザインを考え、画面遷移を整理した。
              情報再利用推進PJ [00:26:21]
              最後の成果発表は、前回同様にまず各会場毎に行って会場の代表を1チーム選出し、そのチームの発表を相互に中継するという方法を取りました。東京会場では1人一票の挙手により選出しようとしたところ票が割れ、「崖イイネ!」と「eコマースで復興店支援」が同率1位となりました。そこからさらに決戦投票を挙手で行い、最終的に「崖イイネ!」チームが選ばれました。
              「崖イイネ!」チームの代表プレゼンは [01:00:30] 付近から。
              クロージングではスタッフの及川さんから「継続していくのが大事、みなさんと一緒に考えていきたい。」という言葉がありました。震災発生から5ヶ月という時間が経過していますが、復興にはまだまだ長い時間が必要です。Hack For Japan では「コードでつなぐ。想いと想い」を具現化するために今後もこうしたイベント等を通じて活動を続けていく所存ですので、引き続きよろしくお願いします。
              最後の記念写真。「はっく ふぉー じゃぱーん」のかけ声で撮りました。

              Hack For Japan スタッフ 高橋憲一

              第3回アイデアソン・ハッカソン東京会場からのレポート – アイデアソン編

              7月23日(土)に Hack For Japan のアイデアソンが行われました。
              東京会場として場所を提供してくれた楽天さんには受付や会場設営にも協力して頂きました。
              今回は前回参加された皆様からのご意見を踏まえてディスカッションの時間を出来るだけ長く取れるように心がけたのですが、5月に開催した前回から約2ヶ月が経ち、変化していく東北各地の最新の状況を知ることが重要と考え、午前中は仙台、遠野、会津からのレポートを中継しました。
              仙台からの報告
              東北放送の吉田さんより「ラジオカーによる取材を通してつかんだ宮城の現状を報告」ということでお話頂きました。
              • 震災から時間が経ち、聞こえてくる声は「早く自立したい」というものが多くなっている。
              • 仮設住宅で生活する方々の場合、様々な地区から移住している場所ではコミュニティの確立が課題。
              • 資料はこちら
              遠野からの報告
              遠野からは三人の方にお話頂きました。
              始めに遠野まごころネットの多田さんより「活動報告とこれからITで実現したいこと」
              • 復興とは震災前に戻るだけでなく、自然との調和を考えていくというのがあってもいいだろう。
              • 被災者の方で運営するお店を作り、現地雇用を増やす。
              • すぐに冬がやってくる。今後、灯油など暖房費をサポートすることも必要になってくる。
              • 資料はこちら
              続いてボランティア参加者の原田さんより「遠野まごころネット 活動の現状と将来」
              • ハード面とソフト面というボランティア活動の2つの面について
              • IT技術も復興への原動力の一部
              • 発表資料はこちら
              最後に「復活の薪」を販売するプロジェクトを進めている佐々木さんからのお話。
              会津からの報告
              玉川エンジニアリング の鶴見さんからスマートフォン対応ガイガーカウンターのお話をして頂きました。
              • ガイガーカウンターモニタリングポストの外観
              • 発表資料はこちら

              ディスカッション風景
              東京会場では、前回5月のアイデアソン、ハッカソンで立ち上げられた「ダジャレクラウド」と「復興いいね!」のプロジェクトの皆さんが引き続き同じテーマに取り組まれていました。継続していくことを大切に考えているHack For Japan としては嬉しい限りです。
              東京会場でアイデアとして上げられたものは次の9つです。
              復興いいね!
              • メンバー募集中!Servlet/GAEをご存知の方、Silverlight やHTML5でUIが作れる方、デザイナーの方に来て頂きたい。
              • より使いやすい、親しみやすいUIを考えている。ハートのアイコンを真ん中に置き、2段階リンク。twitter IDでの連携。
              • 発表資料はこちら
              Ninja(放射線計測公開)
              • ガイガーカウンターからのデータ分析について話し合った。
              • Botを作る、シーベルトに変換する
              • この場所をガイガーカウンターで測ってという要望に応えるマッチングなどの案も出た。
              • ガイガーカウンターの見せ方のアイデア、放射線スカウター、等高線のような表示。
              ダジャレクラウド
              前回、ニッポン放送さんのapp10という番組からアイデアを頂いたプロジェクトです。
              • 「ダジャレで被災地の方々に笑顔を届ける」というコンセプト、好意的に考えてくれる人ばかりではないのでブラッシュアップが必要かと思い、いろいろ考えてきたとのこと。
              • 今後、笑いで人を集めてアクセスを流す先として、うらと海の子再生プロジェクトに代表される一口オーナー制度のように「支援形寄付」を考えたい。
              • いかにして思わず衝動買いしたくなってしまう心理になってもらうか、ダジャレクラウドは真面目に面白く「笑う」というポジティブな感情を発展させていきたい
              • ソーシャルボタンを使って集めたパラメータで、一つ一つのダジャレを真面目に分析する。属性情報でどんな年代にヒットするダジャレかということも得られるようにしたい。
              • 発表資料はこちら
              ボランティアセンター向けニーズ公開ツール
              • 様々なサイトにある情報が最新なのかどうか、見やすくするためのツールを作りたい。
              • Access Needs 表を使っている所と連携してデータをWebに表示できるようにする。
              • 個人が参加意向を示せる仕組みもあると良いかも。
              • 少しfunな要素として、めっちゃ来て欲しいメーター、超行く気満々ボタン、行かないけど応援してるぞ、という3つのボタンをつける。
              • 発表資料はこちら
              崖イイネ
              • 原案は “hack earthquakes”
              • 直ぐに支援に結びつく話しではないが、地震で被害を受けたくない、受けさせたくない研究者、Hack For Japan, エンドユーザを結ぶ仕組みを作りたい。
              • 崖写真を集めて研究者に見てもらう。WebサービスとAndroidアプリを作成する。7/30実装完了という具体的な目標も!
              • 発表資料はこちら
              情報再利用促進
              • 情報が公開されていてもpdfだったり、wordやexcelだったり….という問題を解消したい。CSV公開チェッカ等の仕組みを用意している。
              • 真面目過ぎるPJなので、面白さのエッセンスを考えてくれる人を募集中!
              • 情報を提供する人、アプリを使う人、両者の手間を増やさず減らす仕組みの提供。情報の提供者にも見る人にもメリットを。
              • 可視化のために、時間軸、空間軸での共通化を計る。
              • 発表資料はこちら
              Cars Donation
              • 津波で沢山の車が流された。保険は津波には適用されない。
              • 被災地に車を寄付する際のマッチングための効率的なスキームの仕組みを作りたい。
              • アイデア発表時に使われたサイトはこちら
              みんなのまち
              • 浦安の液状化の被害にあったという方から当初は「損害物件目安箱(仮)」というアイデアとして挙げられた。
              • 道路に陥没がある等の危険を、市民は「よくして!」ボタンで報告をする、情報をみる、そして自治体がそれを治す。ボタンが押された回数が優先度の指標になる。
              • 発表資料はこちら
              My Doctor(遠隔問診システム)
              • 現在3人でやっており、まだ完成していないので追加メンバー募集。法律等にも詳しい方がいると助かるとのこと。
              • 出来るだけ簡単に入力出来るようにする。入力手段として携帯、PCに加えて任天堂DSも対応出来るようにしたい。被災地でのwebアクセスはDSからのものが意外と多いとのこと。
              • 発表資料はこちら
              最後に、参加された皆さんと撮った記念写真です。


              ここから1週間置いて7月30日のハッカソンに繋がります。
              レポートのハッカソン編はこちらへ。
              Hack For Japan スタッフ 高橋憲一

              Hack For Japanの軌跡 – Japan Innovation Leaders Summit 2011 8.6 satから

              Japan Innovation Leaders Summit 2011 8.6 satというイベントでMIT石井裕教授 × Hack For Japanスペシャル対談の枠をいただきました。そこでの冒頭の発表「Hack For Japanの軌跡」をここで再現します(一部、スタッフの当時の想いを補足するために、オリジナルのブログやTwitterへのリンクを追加しています)。
              Hack For Japanスタッフ代表として及川卓也が発表いたします。

              3月11日。皆さんはどこにいましたか?

              私は職場が六本木ヒルズにあるのですが、その26階で会議中でした。すぐに収まると思った地震が予想よりも長く続き、そしてさらに大きく。地震にはある程度慣れているつもりだったのですが、もしかしたらこのビルでさえ倒れるのではないかと不安が大きくなったころ、やっと揺れは収まりました。
              窓から外を見ると、お台場のほうで火があがっているのが見えます。下にはビルから避難した人なのか、多くの人が歩いているのが見えます。

              インターネットでいろいろな情報を集め始めると、津波、そして原発事故が発生したことがわかり、ますます不安が広がります。家族の安否確認もとれません。

              やっと家族の無事が確認できた後も、「この先日本はどうなってしまうのだろう」という不安が収まりません。途中まで歩いたりして、ようやく翌日の早朝にたどり着いた家でも、よく寝れず、被災地にいる知人や今後のことなどに思いを馳せます。

              しばらくして家族の事情で九州に行きました。九州でも、そしてその後訪れた関西でも募金を始めとした各種支援が行われていました。日本が、そして世界がやさしさに包まれていた、そのように感じました。

              ここ九州では、余震に怯えることもありません。ガソリンスタンドでは並ばずにガソリンが購入出来ます。明日の天気を必要以上に心配することもありません。夜の暗闇に備える必要もなく、家には帰れば、当たり前のように家族がいます。

              当たり前であることが当たり前のままであること。それを平和というのだと再認識しました。

              でも、一方で、自分がこんな安全な場所でただ遠い被災地に思いを馳せるだけで良いのだろうか、そう思っていたのもこの頃です。

              この感情を今でもうまく表現出来ないのですが、それは「罪悪感」のようでもあり、「無力感」でもありました。

              「何かできないだろうか」

              それがその時の漠然とした想いです。自分や家族、日本に対する不安を抱えながらも、自分などよりももっと深刻な状況にいる人たちのために何かできないか。

              そんなことを考えていました。

              Hack For Japanスタッフの1人、山崎富美さんは地震発生当時、米国オースティンにいました。SouthBySouth Westというイベントに参加していたのですが、安否確認のIMが届き始め、何かが日本で起きていることを知りました。東日本大震災でした。

              彼女は言います。「その夜は眠れず、タイムラインにはりついて朝を迎えました。SXSWi 初日です。あれだけ楽しみにして来た SXSW なのに、全く心はここにない。でも、タイムラインを読んでいたところで自分は何の役にも立たない。津波の恐ろしい映像が次々と飛び込んでくる。被災者の方はもちろん、東京の皆さんも電車が止まって 3 時間かけて帰宅したりあるいは帰れなかったり、余震に怯えたり。そうした様子をツイートやメールやグループチャットで疑似体験しながら、一体自分はこんな安全なところで何をやっているのだろうという罪悪感に苛まされたり。何かしたいのに何もできずに見守るしかない無力感が途方もない物でした。」(SXSW Cares (For Japan) – Fumi’s Travelblog

              仙台に奥さんの実家があり、自身も10数年ほど住んだことのあるスタッフの高橋憲一さんは何か被災地の支援をできないかを勤務先に提案するものの必ずしも賛同を得られず、忸怩たる思いを持っていました。(http://twitter.com/#!/ken1_taka/status/48003219569393664

              なかなか想いは届きません。「頭を冷やすはずが、帰り道、幕張の液状化跡の上を歩きながらまた思いがフツフツと…向こうの地はこんなものではすまないと思うとまた…」(http://twitter.com/#!/ken1_taka/status/48032519068725248

              スタッフだけでなく、その時の多くの人が考えていたこと。
              それが「何かできないだろうか」という想いです。

              一方、Google Person Finderのように、確実にITが人々を救っているニュースも聞こえてきました。

              スタッフの岩切晃子さんはダウンした自治体のサーバーのミラーリングが有志の力で成し遂げられるのを見て、ITの力を感じました。「失ったものはたくさんあるけれど、ITの力にどれだけ救われたか、そして、人の心の美しさにどれだけ心がしみたか。私の周りでもこれだけ事例があるので、きっと、もっといろいろITで何とかしている人たちがたくさんいるんだと思います。ご尽力いただいている方々に感謝いたします。引き続き、どうぞよろしくお願いします!」(人の心が目にしみる – I have dreams - 夢は野山を駆け巡る 

              スタッフの関治之さんはsinsai.infoというクライシスマッピングサイトの立ち上げを行っていました。(http://twitter.com/#!/hal_sk/status/46224276386365440

              サーバーはAmazonより提供を受けました。Twitterでの呼びかけに答えてくれたものです。

              「@KenTamagawa OpenStreetMap メンバーで、ハイチなどでも活躍したUshahidiを使った災害情報集約用のサイト、http://sinsai.info を立ち上げています。サーバリソースが使えると大変助かります!」(http://twitter.com/#!/hal_sk/status/46382130577682432

              開発者もTwitterで呼びかけると100回以上のリツィートされ、結果、数十人ものボランティアが集まります。

              「sinsai.info のサーバ技術者のリソースが足りません!Ubuntu、EC2、Ushahidi に詳しい方、info@osmf.jp にご連絡いただけましたら幸いです」(http://twitter.com/#!/hal_sk/status/46759511154888704

              次第に、sinsai.infoが使っているUshahidi本体やCrisis Commons経由でタフツ大学の学生など、海外からも多くの支援のメッセージが届き始めます。

              Open Street Mapのクライシスマッピングではハイチ人が地図作成を行ってくれました。「日本人は、ハイチの時に地図を書いてくれた。今度は我々が助ける番だ。」(http://hot.openstreetmap.org/weblog/2011/03/haiti-osm-mapping-for-japan-and-libya/

              このようにネットで広がるITによる支援を見て、「何かできないだろうか」という想いは「何かできるはずだ」という想いに変わっていきます。

              このように想いが変化しつつある頃、所属企業、団体、組織の垣根を越える動きが芽生えます。それがHack For Japanです。

              そのころ、私の勤務先では自社での支援だけでなく、外部の開発者にも被災地支援のアプリを開発してもらうことで支援を促進しようという話が出てきました。

              私はすぐに思います。これは組織/団体を超えて集まるべきだと。

              一気に短期間でモノを創り上げてしまう開発者合宿として定着しつつあるハッカソンを今こそ開催すべきであると。

              すぐに知り合いの開発者などに声をかけはじめます。

              Yahoo! JAPANさんには多くの知り合いがおり、開発者支援をやっている方ともお会いしているはずだったのですが、コンタクト情報が見つかりません。ゆっくりと探すよりも、聞いてしまったほうが早いとTwitterで呼びかけます。(http://twitter.com/takoratta/status/47643920460554241

              これがYahoo! JAPANで開発者マーケティングをしていた、後にスタッフとなる冨樫俊和さんのところにリツィートされます。「あ、これ、俺だ」と、考えるより先に役員に1本のメールを送ります。何の団体かもどういうイベントかもわからない。どうしても慎重になる会社側に彼は言います。

              「今やらないでいつやるんですか?」

              地震の翌週、週末の三連休(3/19、20、21)が控えていました。やるなら今しかない。集まってきた賛同者に声をかけます。今週末に決行しようと思います。

              最終的に決断したのは、米国オースティンから日本に戻ったばかりの山崎富美さんと電話で話した木曜日の夜。その時、彼女はまだ成田空港、私は福岡。数々のイベントを成し遂げてきた彼女がやれるというならばやれると思っていました。彼女が機中にいた間にスタッフで話し合ったこと、私の想い、すべて彼女に伝えました。

              「やれますか?」

              「やりましょう!」

              あるスタッフの勤務する賛同企業では、アナウンス文などに社の名前を入れるのにも、本来ならば関係部署の承認が必要です。しかし、非常事態故に決まったフローもありません。

              「あとで、僕が怒られておきます」

              そう言って、アナウンスへ賛同企業として掲載することを許可してくれました。

              後日、何の団体なのか、どういう主旨なのかなどの説明を求められたらしいのですが、こういう集まり自体がイレギュラー。対応できるレギュレーションがないのです。すべてを支えたのは、「何かできるはずだ」という想い。

              原発事故、計画停電と東日本の状況の不透明さが増すため、当初はオンラインのみで開催予定だったハッカソンですが、西日本ならば会場に集まってできるはずと急遽、京都会場を用意しました。その後、福岡と岡山、徳島が加わって、4会場に。

              多くの人に加わって欲しいとの想いから、いくつかのネットのサービスを用いて、オンラインで議論は進めました。すごい勢いでアイデアが書きこまれ、もはや整理も不可能になってきたころ、ちょうど海外に出張していた同僚が夜中のうちに議論を整理してくれました。また、このスライドのように議論を可視化してくれるサポーターも現れます。

              3連休直前に声をかけたためか、京都会場への参加表明があまり良くありませんでした。急遽、私やほかスタッフのTechTalkを入れるなど、出来るだけ来てもらう工夫をします。スタッフにメールで呼びかけた文章が残っています。

              「ブログ、Twitter、電話、街宣車、立て看板などなんでもかまいません。急ぎ周知および積極的な勧誘をお願いします。 」

              その甲斐あって、結果としては会場が窮屈になるほどの多くの方に参加していただけました。

              4会場で100人近い参加者を集め、多くのプロジェクトが発足しました。

              ハッカソン終了後、スタッフへのメールでこう書いています。

              「これで終わったわけではなく、むしろ始まりだと思っております」
              震災復興には数年から10数年、さらにはもっと必要なことがわかり始めていました。一度のイベントで何かを成し遂げようとするのではなく、これをキックオフイベントのように位置づけ、継続して支援を行っていく。それがHack For Japanの活動目的となっていました。
              今から見ると、この第1回ハッカソンは本当に始まりに過ぎませんでした。

              ハッカソンは成功に終わったのですが、1つやらなければいけないことがありました。
              それは被災地を訪問すること。

              まだ混乱が続く中、被災地を訪れることは非難されることも覚悟していました。ですが、現地を訪れてみないとわからないこともあります。

              「まだ早いと言われる可能性があることは覚悟しているが、とにかく現地に赴き、実際を肌で感じてみたい」(Hack For Japan~仙台、石巻を訪ねて – EnterpriseZine

              訪問先からは「まだITの出番じゃない」と言われたこともあります。声を荒らげ、何しに来たんだと言わんばかりの剣幕だったところもあります。すべては覚悟の上です。

              しかし話を聞いてみると、ITで解決できそうなところはいくつか見つかります。時期が来れば、ITが活躍できるはずだとの想いも強くなり、次のハッカソン開催への気持ちも強くなります。

              第2回、第3回のハッカソンは被災地との連携が大きなテーマでした。第2回には、会津若松、仙台が加わり、第3回には遠野がさらに加わりました。

              アイデアソンはIT技術者以外にも集まってもらい、震災復興のためのさまざまなアイデアを話し合います。被災地の状況を知るために、被災地の現状をストリーミングで東京などの会場に配信します。

              スケッチブック、付箋紙、マジックペン、フリップチャートなどがアイデアソン用具です。非常にアナログな方法で議論は進められます。

              ハッカソンではアイデアソンで話し合われたアイデアを実現するための開発が行われます。被災地ごとにニーズが異なるため、会場によって特色のあるものが開発されていきます。

              右下にあるのは、会津若松会場で開発されているガイガーカウンターです。

              アイデアソンとハッカソンは東日本を中心に行われていますが、毎回、会場を自分たちで調達してまでして参加してくれる西日本の有志がいます。遠く離れた西日本からでも何かをしようという多くの人が参加してくれています。

              Hack For Japanというコミュニティ名にしているため、自分はハッカーじゃないから参加できないという声を聞きます。自分は開発者ではないので遠慮しているという人も聞きます。

              今必要とされているのは支援しようとする意思です。開発者以外の人もアイデアソンでの議論、さらにはハッカソンでも利用者としての立場での意見提供、情報の収集などいくらでも手伝っていただくことがあります。

              スタッフの山崎富美さんは言います。

              「エンジニア・開発者以外の方も皆さんお力を貸して頂きたいと考えています。というのも、5月のハッカソンでは「コードが書ける人はいっぱいいるけど、もっと使ってもらうよいデザインにするためにも、デザイナーの人にもっと来てほしい」という声が参加者からあがっていました。また、新しいサービスが作れなくても、既存の様々な便利な IT サービスが充実してきている今、それらをご存知ない方にお知らせしたり、既存のサービスを使って問題を解決したりということができるという場面がとても増えてきています。」(Hack For Japan: 遠野に行きませんか? – Fumi’s Travelblog

              「コードでつなぐ。想いと想い」

              これがHack For Japanのキャッチコピーです。

              40案ぐらいの中から選ばれたコピーです。“開発者の「何かしたい想い」と被災者の「切実な想い」をつなぐ場を訴求する”ということから考えたものですが、実際にHack for Japanで活動してみると、それだけではありませんでした。

              Hack for Japanでは、開発者と被災地の方の想いはもちろんですが、開発者同士や開発者とデザイナーの想い、被災地の方同士の想い、被災地から遠い西日本の方の想い、ITとは無関係でも何かしたいと願っている人の想いなど、さまざまな状況にいる方の想いをコードでつないでいます。

              ここにHack for Japanの姿があると感じており、このコピーは原案者であるスタッフの佐伯幸治さんの想像を超えてHack for Japanのありのままを表現しているものになっています。

              記憶は風化していきます。ですから想うことはこれからますます大切になります。その想いをつなぎ続けることがHack for Japanなのだと実感しています。

              ありがとうございました。

              プロジェクト紹介

              「Hack For Japanの軌跡」のプレゼンテーションの後、Hack For Japanで活動中のプロジェクトとして以下の3つを紹介しました。

              MIT石井裕教授からのメッセージ

              Japan Innovation Leaders Summit 2011 8.6 satではMIT石井裕教授が基調講演を行われ、我々のセッションにもパネルとして登壇いただきました。

              イベントの懇親会の席で石井教授から非常に心動かされるメッセージをHack For Japanにいただけました。石井教授からメールでその要旨を送っていただけましたので、ここに掲載します。

              本日(8月6日)、リクルート社Tech総研のイベントにお招きいただき、311震災から学んだことを皆様と共有させていただく機会を賜り、御礼申しあげます。5月21日の TEDxTokyo での私の311講演「The Last Farewell」をきっかけに、Hack for Japan の皆様と知り合うことができ、さらに今回のイベントを「ハック」して、 H4Jの特別セッションをその真ん中に作り、震災に応えて立ち上がった技術者たちの熱い想いを皆様と共有できたこと、そしてその場に私が居合わせる事ができたこと、とても幸せに思います。

              何故プログラムを書くのか、何故電気回路を作るのか、何のためにモノを作るのか、誰のために作るのか、何のために生きているのか、何故僕らはこの社会に存在しているのか、その答えを、風@福島原発、オープンガイガー、そして写真修復の3つのH4J プロジェクトの技術者たちが、今日鮮やかに「人間」の言葉で語ってくれました。そして彼らが活動するオープンな知的協創の場、Hack for Japan を創り育てた及川さんが、その想いを熱く語ってくれました。「何かできるはずだ」、「今やらなくていつやるんだ」、「やりましょう!」彼が紹介してくれたH4Jメンバーの言葉に込められた想い。そして、「アンインストールされ、誰もそのアプリを必要としない日がくることを祈る」という「風@福島原発」の開発者の想いの深さ。

              人はお金や名声だけのために生きているのではありません。私たち技術者は、技術者だからこそできることを通じて、社会に貢献し、自分の生きていることの証を,自己の存在証明を求める旅をしているのだと思います。志と情熱さえあれば、H4Jのようなオープンなコラボレーションを通して、その志に共鳴する仲間を集め、個人では不可能だったとてつもない貢献をものすごいスピードでなし得る今日、こうして皆様にお目にかかり、感動を共有できたことに、心から感謝申しあげます。

              石井 裕

              会津工業高校のハッカーへ
              会場に来れなかった会津工業高校のハッカーへメッセージを送る石井教授

              終わりに

              今回のイベントで発表したスタッフの想いは本当にごく一部です。このブログを読まれている皆さんも同じような想いだったことを思い出されたことと思います。この想いを忘れずに、また、石井裕教授の言葉を糧として、これからも活動を続けたいと思います。

              Hack For Japanに賛同し、進めていただいているプロジェクトはここで紹介した3つ以外にも多くあります。刻々と変わる被災地の状況にあわせて新しいプロジェクトも必要になってきます。遅すぎることはありません。継続した復興支援のために、いつからでもどんな形でも是非ともHack For Japanへの応援と積極的な参加、お願いいたします。

              Hack For Japanスタッフ 及川卓也

              P.S. このプレゼンテーションの舞台裏を書いたブログもあわせてお読みください。
              Hack For Japanの軌跡 – Japan Innovation Leaders Summit 2011 – Nothing ventured, nothing gained

              プロジェクト紹介:ハマナス先生〜花から学ぶ復興の形〜

              先日の遠野会場アイデアソン/ハッカソンでスタッフを務めた関です。

              そこで生まれたプロジェクトの一つ、「ハマナス先生」に参加していたので、このプロジェクトについて解説をさせてください。
              今回の震災は、人間だけでなく動植物にも影響を与えました。特に、根浜海岸などに生えていた「ハマナス」という植物は多くが流されてしまったとのことです。しかし、芽が出始めているところもある。人間が住んでいた地域はがれきで壊滅的な状態で変わり果てた姿になりましたが、建築物が無かったような地域は元の形に戻るのも早いそうです。
              花や植物の写真と発見した位置情報をDB化し、植物が自力で復活する記録から復興のあり方を考えようというのがこのプロジェクトです。

              以下は、このプロジェクトの発起人である、佐藤清忠さんから頂いたメッセージです。

              プロジェクト名の「ハマナス」の花は、鵜住居「宝来館」のドキュメントTV放送の最後の場面で、宝来館の女将が、3月末に海岸に芽を出し始めたハマナスを発見し、 

              「花だって、こんなに、一生懸命なんだ…」 

              と、つぶやくシーンを、思い出したのです。 

              ハマナスには、波にのまれ、ひどい状況になっても、その地にとどまり再生していく強さがあることを、あの放送で知りました。 

              ハマナスの花言葉のひとつに、「美しい悲しみ」があります。 

              ハマナスのこの花言葉、また花の生命力に、三陸沿岸一帯に住む日本人の持つ自然観、地域の力を連想するのは、私だけでしょうか。


              ハマナスの花が咲くのは、盆の頃です。 

              ハマナスが、沿岸一帯に咲くたびに、そこに住む子どもたちは、1本、1本、花を数えます。
              そのとき、かつてこの地に一緒に生きた仲間、強い地域の絆があったことを、思い出してもらいたいのです。 

              そして、その絆の大きさが、年々広がり、ITを通じて世界の人たちにも見えるようになってもらいたいのです。 

              この取組みが数年間にわたり継続し、「花の絆」が広がっていく様子は、何年たっても祈りを抱いてくじけない、この地を守る子供たちがいることを示しています。 

              ハマナスの英文名は「Japanese Rose」です。まるでこのプロジェクトを実施するために、命名されたと思いました。

              そろそろお盆ですね。今年はハマナスの花はどれくらい見つかるのでしょうか。

              このプロジェクトは、システムを作るというよりも、コンセプトを広く伝え学校関係者やNPO、研究者などのネットワークを作ることを目指すプロジェクトです。共感された皆様がおりましたら、友人、知人などにお伝えいただけましたら幸いです。
              ホームページ作成など、プロジェクトに参加したい方ももちろん大歓迎です。

              連絡先は、スライドの最後にかかれております。皆様のご声援をいただけましたら幸いです。

              ※宝来館は釜石市根浜海岸にある料理宿で、文中の女将は、自身も津波に流されそうになりながらも、宿泊していた旅行客や従業員全員を無事避難させました。その時の映像がテレビなどでも紹介され有名になった場所です。津波が去った後の孤立状態も、宿にあった食材やがれきの下のお米などを頼りに、道路が復旧するまでの孤立状態を皆で協力して乗り切ったそうです。早ければ10月復活を目指して活動中だとのことです。
              http://houraikan.jp/
              http://twitter.com/horaikan