月別アーカイブ: 2012年12月

ICT ERA + ABC 2012 東北(後編)

ICT ERA + ABC 2012 東北の報告記事の後編です。(前編はこちら

Hack For Japan – コードでつなぐ、想いと想い。これまでの取り組みと未来へ向けて。

東北大学の萩ホールという大きな部屋で Hack For Japan としてスタッフの高橋が登壇し、Hack For Japan が立ち上がった時の想い、そして 2012 年に入ってからのアクティブな活動の話をさせて頂きました。
Hack For Japan のキャッチコピーである「コードでつなぐ。想いと想い」、この言葉を改めて振り返ることから始め、その想いの一例として登壇者の高橋自身が Hack For Japan に関わるきっかけの話をさせて頂きました。
最近のアクティブな復興支援活動としては、次の4つを紹介致しました。

復興マッピング活動

復旧復興支援 DB API ハッカソン

写真みつかるプロジェクト

Hack For Japan 直接のプロジェクトではありませんが、昨年12月に行った「復興ボランティア情報交換会」のための石巻へのバスツアーがきっかけになったということで、プロジェクトへの支援の呼びかけも兼ねて紹介させて頂きました。( http://www.shashin-mitsukaru.jp/ )

前編の高校生トラックのトピックでも触れた石巻 Bootcamp

講演の最後のスライドは「日本が復興するまで我々はハックし続ける」という想いを表したこのコードで締めさせて頂きました。

スライドの全編はこちらで、動画はこちらで公開しています。

被災地視察

今回のイベントの一環として、翌日の 10 月 21 日には3台のバスを借り切り、イベントの参加者から集って石巻から女川を回る被災地視察も行われました。Hack For Japan スタッフの山崎と高橋もこの視察に参加致しました。

石巻 門脇小学校付近

津波と火事により大きな被害を受けた場所ですが、グラウンドで野球の練習をする光景が見られました。筆者(高橋)はこの場所を訪れるのは 2011年9月、2012年3月、そして今回で3回目になるのですが、このように活気のある様子を見ることが出来たのは初めてです。「門小ガッツ 僕らは負けない」という文字が校舎に書いてあります。
そしてその隣にある小高い丘に続く階段を登って海の方を振り返り、瓦礫も片付けられた現在の光景を見ると、最初からそこには何も無かったような錯覚に捕われます。しかし一方で想像を超える高さの津波だったこと、この階段を駆け上って避難した方々の気持ちを思うと、このことを決して風化させてはいけない、伝えていかなければいけないのだということを思い返した次第です。

いしのまき大漁まつり

当日は「いしのまき大漁まつり」というイベントが行われていました。沢山の方々が来場されており、こういう活気のある場面を見るとこちらも嬉しい気持ちになります。筆者らも屋台で海の幸を満喫しました。少しずつ復興が進み、地元産の海の幸を味わうことが出来るのは素晴らしいことだと思います。

 

会場となったサンファン バウティスタパークは伊達政宗の時代にローマとの間を2往復したという帆船の名前がつけられているパークで、その復元船が展示されています。船は津波の被害を受けながらも大きな損傷は免れたとのことで、現在は写真のように奇麗な状態で展示されておりました。

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津波に耐えた復興のシンボル、サンファンバウティスタ号

女川

写真のように、残されている津波の爪痕もありますが全体としては片付けが進んでいます。

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写真の建物は、カタール基金により10月に完成したばかりだという多機能水産加工施設で、女川の水産業再生の核になっていくとのことです。

視察を終えて

震災から1年と7ヶ月が経過し、今回の視察では一歩一歩着実に復興に向けて進んでいる場所があることを知ることが出来ました。Hack For Japan も皆様の想いを大切にし、善玉ハッカーとして今後も活動を続けていきたいと思います。
Hack For Japanスタッフ 及川卓也, 高橋憲一

ICT ERA + ABC 2012 東北(前編)

2012年10月20日に仙台で行われた ICT ERA + ABC 2012 東北というカンファレンス(以下、ABCと略)で Hack For Japan として2つのセッションに協力致しました。このイベントはこれまで年2回東京で開催されてきた日本 Android の会主催によるもので、震災後の復興を考えるため、東北を盛り上げたいという想いから今回は東北での開催となりました。
通常なら Android Bazaar and Conference で ABC なのですが、IT による Earthquake Reconstruction Aid (震災復興支援)をテーマに掲げているために ICT ERA + ABC 2012 東北というタイトルになっています。

高校生トラック

ABCでは高校生/アカデミックトラックが用意されました。大人顔負けのプログラミングを行う高校生が最近は特に増えてきましたが、Androidアプリケーションの開発においても多くの高校生が活躍しています。
今回のABC高校生トラックには、7月末にHack For Japanもお手伝いした石巻IT Boot CampでAndroidのアプリケーション開発を学んだ石巻工業高校の生徒も登壇したほか、岐阜県立大垣商業高等学校や灘高校の生徒も発表を行いました。

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石巻IT Boot CampでCorona SDKを学び約2日半でAndroidのアプリケーション開発を経験した、石巻工業高校の生徒たちはその後も活動を続けており、アプリ甲子園にも進出しました。アプリ甲子園はスマートフォンアプリ開発の中高生のためのコンテストです。2年目となる今年は9月30日に決勝戦が行われました。石巻工業高校の生徒は残念ながら入賞がなりませんでしたが、他の参加者との交流なども通じて、大きな刺激を受けました。詳しくは、コンテストレポートをご覧ください。
今回のABCには、石巻工業高校のイベントとも重なったため、引率の先生1名と生徒2名での参加となりました。筆者が到着したときにはすでに会場入りしており、スライドの最終調整とリハーサルをしていました。高校生トラックの先頭バッターということもあるのでしょう。まだ本番には時間があるにもかかわらず、極度に緊張しており、サポートする側のこちらにもそれが伝わって緊張してしまいました。
彼らのセッションでは、Androidのアプリケーション開発に携わることになったきっかけから、IT Boot Campの振り返り、そして開発したアプリケーションの紹介、開発を通じて学んだことの紹介がありました。
もともと、授業でVisual BasicやC言語などの勉強はしたことがあったものの、本格的なアプリケーション開発はIT Boot Campが初めてだったという彼らですが、そのきっかけは前回のブログでも紹介した石巻 2.0のイトナブでした。イトナブの古山さんが卒業生であり、学校にもたびたび訪れていたことから、IT Boot Campが企画されましたが、彼らにとっては、それが大きなきっかけになったようです。ほかにも、ほかの学校からは羨むような、いわゆる「Mac部屋」と呼ばれるMac OS XとWindowsがデュアルブートするiMacが完備した教室があったことなどの恵まれた環境が用意されていたこともプラスに働いたようです。
アプリ甲子園での経験も彼らを一段と成長させました。彼ら自身、優秀な同世代に負けれらないという気持ちになったと話していました。また同時に、企画力とデザイン、発表時のプレゼンテーション能力の重要性に気づいたようです。実際、アプリ甲子園での優勝者のプレゼンテーションは素晴らしいものでした。デザインの重要性は、Corona SDKを使うならば、特に大事であることにも彼らは気づきました。Corona SDKだけではないですが、優秀なフレームワークやSDKを使うと、あらかじめ備わっている機能を使うだけで、完成度の高いアプリケーションは出来上がるのですが、同じフレームワークを使ったアプリケーションがどうしても似通ったものとなってしまいます。個性的なアプリケーションにするためには、デザインについてもっと気を配る必要があります。
また、IT Boot Campの前と後を、参加者のアンケートを元に披露してくれました。参加前には、Androidに対しての偏見があったと彼らも述べていますが、実際に開発者の視点を得られたことにより、視野が広がり、Androidに対しても、iOSに対しても見方が変わったようです。
最後に、IT Boot Campでチューターとして参加した者を代表して一言と言われて、筆者(及川)からも話しました。
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ITでの復興支援を目的として発足したHack For Japanが、スタッフなどが被災地を訪れるなどして、震災前に戻すよりも新しい街にすることが大事であると学び、そして、そのためには若い世代を育てることも重要であることを認識したことを伝えさせていただきました。その上で、以下の3つのお願いをさせていただきました。
まず、筆者たちのような開発者へのメッセージとして、後進を育てましょうと言わせていただきました。若い世代を育てることは健全に技術を発達させ、業界を発展させるためにも必要です。自分たちだけでなく、初心者である若い世代にも情報を積極的に共有していきましょう。
次に、筆者はこの立場でもあるのですが、企業(ベンダー)の方々へのメッセージも伝えさせていただきました。IT Boot Campが成功したのは、Corona SDKが無償で利用できたこととAndroid端末が生徒たちに無償供与されたことによる影響も大きいです。是非とも、若い世代のために必要なリソースの提供を考えて下さい。
最後に、主役である高校生に伝えました。彼らはセッションの中で、Facebook創業者であるMark Zuckerbergの「Done is better than perfect」という言葉を使っていました。私からも、是非この精神を維持し続けて欲しいと話し、さらに、最近知ったFabLabの考えである「Learn, Make and Share」、すなわち、学んだことを使ってすぐに作り、その学んで作ったことを共有することも考えて欲しいとお願いしました。これにより彼らの世界も広がり、成長を続けていけることでしょう。
高校生のセッションのサポートを行うために参加していましたが、彼らの話を聞き、彼らへのメッセージを伝えることで、またこちらが大きく学ばさせていただいたことになりました。
Hack For Japanスタッフ 及川卓也, 高橋憲一

スキルマッチング

Hack For Japanではスキルマッチングの取り組みを始めます。

Hack For Japanの活動に賛同いただいてる方の中には、復興支援などに対してITの力を活かして貢献したいという思いをお持ちの方が多くいらっしゃいます。このような思いを持っている方と支援を必要としている方とを繋ぐための取り組みをスキルマッチングとして開始いたします。

仕組みとしては、参加者の皆さんに自身のスキルを登録していただき、ボランティア募集者から依頼があった際にはスタッフが仲介するという形をとります。

適切にマッチングが行えるように、登録フォームはスキルを具体的に記入するようにし、プライバシーポリシー(個人情報保護方針)も作成しました。

趣旨にご賛同いただける方は、是非とも登録フォームからスキル登録をお願いいたします。

スタッフを代表して
及川卓也