本ブログエントリーは「Hack For Japanの今後に向けて」と「1年間の活動報告」の2部により構成されています。
震災2年目を迎えるにあたり、スタッフ一同で執筆したものです。是非ご一読ください。
Hack For Japanの今後に向けて
はじめに
震災復興を継続的に支援するためのIT開発を支えるコミュニティとして、昨年3月11日の震災直後にHack for Japanは発足しました。
Hack for Japanの運営を行っているスタッフはもちろんのこと、主旨に賛同いただいた参加者の方々にとっても、大震災における状況下でのコミュニティ活動ははじめての経験が多く、試行錯誤を繰り返し、戸惑う場面もありました。
そこで震災から1年を迎えるにあたり、スタッフで話し合った活動の振り返りやこれからを皆さんと共有するためにこのブログエントリーを作成いたしました。
Hack for Japanのこれからの活動を実りあるものにするために皆さんにもぜひご一読いただき、ご意見などある方はFacebookやメールでお知らせください。
活動全体で評価できる点と改善点
評価できる点
1000年に一度とも言われる大震災で、各自が「何ができるか」を真摯に考え、その想いがIT業界の企業の垣根を越えた活動へとつながっていきました。その結果、普段なら決して出会えない面々とチームを組んで開発を進めていくという、貴重な体験を得られた方もいらっしゃるでしょう。こうした開発者同士のつながりだけでなく、被災地での活動を通して、東京と被災地のITコミュニティをつなげられたのも評価できる点です。
またHackathonなどの活動に参加いただくことで、多くの方々にハッカー文化に触れる機会がもたらされました。この経験から“ハッカー文化を広く普及していく”というHack for Japanの将来へわたる展望を見いだすことができました。
Hack for Japanの存在は「開発者を中心としたコミュニティ」「名だたるIT企業の支援」といった点が注目され、マスメディアで記事として取り上げられ、開発者の復興支援を促すことで、風化防止の一助になった側面もあると思われます。
最後に微力ではあるもののTシャツ販売を通して、寄付金による支援が行えた点も記しておきます(※2011年7月~2012年1月までで237,554円を寄付しました。ありがとうございました)。
改善すべき点
プロジェクト実現を目指したマッチングにこだわりすぎていたという反省から、以下のような改善点が挙げられています。
- 他のボランティア団体などとの連携を早期から考えるべきだった
- Googleモデレータでのアイデア投稿は面白かったが、Hackathon/Ideathonとの連携が難しいと分かった時点でその見直しをかけるべきだった
- マッチング=プロジェクト遂行のためのパイプラインというコンセプトにこだわりすぎず、コミュニティの役割を考えるべきだった
またHack for Japanがコミュニティの場としての機能を果たしていなかったという意見もあり、以下のような改善点が挙げられています。
- 参加者への意識付けが弱く、高い意識を保ち続けられる方法が必要だった
- 8月のJILS(Japan Innovation Leaders Summit)でのHack for Japanの活動紹介後、12月までのバスツアーまで東京の参加者たち向けの場が提供できずにいた。Hackathonにこだわらず場の提供をすべきだった
- 何かプロジェクトを起ち上げたいという人に対して門戸を広げ、サポートできる場が必要だった
- 後半はスタッフのミーティング内容を公開せずにいたため、スタッフと参加者との間での意思疎通が図られなかったことがあった
- 参加者各自がより交流でき、またプロジェクト同士の交流も図られるような場も必要だった
- プロダクト完成まで導くために各プロジェクトの状況を把握しサポートする必要があった
- スタッフが場の提供をして、希望者がそこに参加するという図式にこだわらず、参加者がより主体性を持って活動できるような運営方法が必要だった
Hackathonの評価できる点と改善点
被災地で役立つものを開発するという目的から、開発者たちをつなぎ、開発を形にしていく場であるHackathonは、Hack for Japanの中心となる活動の場でした。この活動で得られた評価できる点/改善すべき点を以下に記します。
評価できる点
- 会場を確保して行うイベントのため人を集めやすい
- 開催告知を通してメディアからの取材が入り、記事となることでさらに開発者の参加を促すことができた
- さまざまな立場の人たちと議論や作業を進めることが可能だった
- 被災地でも開催され、今後は各地で異なるニーズに合わせたHackathonが継続的に実施される見通しである
改善すべき点
<プロジェクト継続を促すサポート>
- Hackathonを実施することにこだわりすぎたため、Hackathonが終わると開発が止まってしまう、もしくは尻すぼみになり立ち消えてしまうプロジェクトが見られた。どのように開発を進めていくか、いつまでに形にするかといったプロジェクトを継続するためのサポートが必要だった
<Hackathonの形態そのものを見直す>
- ニーズを把握し切れていない/使うレベルまで達していない/短期間での成果にとらわれすぎてアイデアが練られていない/チームメンバーが不足していた/チーム編成を改善する機会が得られなかった/プロジェクトマネージャやデザイナなどが少数だった/被災された方の視点から意見する参加者が少数だった/といった点から、Hackathonの形態そのものを見直し改善する必要がある
継続すべきアクティビティ
Hack for Iwate、Hack for Miyagi、Hack for Fukushimaとして各地で独自の活動が行われていきます。
Hack for Iwateでは、「仮設住宅でのネットカフェ設置」「音楽スタジオ計画」「復興ショップマップ」など具体的に複数のプロジェクトが進行しており、Hack for MiyagiやHack for FukushimaでもHackathonやその他の活動が行われていく予定です。これら各地の活動に対して、東京や他の地方から開発で復興支援していきます。また他のボランティア団体との連携にも取り組んでいくため、こちらも東京での活動が予想されます。
今後の活動について
Hack for Japanでは復興支援活動だけでなく、これからの災害に備えた活動やハッカー文化を浸透させる活動など、復興支援に限らない活動も考えています。これらについて検討中の活動を以下に記します。
- 今後の災害に備えるための活動
- IT防災訓練
- 災害支援ツールの開発
- ハッカー文化(Hackathonなど)を浸透させる活動
- Random Hacks of Kindness / Hackathonをパッケージ化
- 若年層へのIT教育を支援する活動
- 被災地のエンジニアと東京のエンジニアの交流促進
- NPOやNGOと連携した海外への活動の発信
- アーカイブ(記録)のための活動
- アーカイブをテーマにしたHackathon
- Hack for Japanの活動および実績の可視化
1年間の活動報告
2011年 | 3月 | 3/19-21 Hackathon (The Beginning)
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4月 | 4/3 第1回スタッフミーティング にて1年間は活動を続けることなどを確認 | |
4/7 被災地視察。被災地の現状を把握。現地のITコミュニティとのパイプが作られ、その後のHackathonの開催などにつながる。スタッフの及川卓也と山崎富美が最大の余震に遭遇。(及川のブログ、山崎のブログ、EnterpriseZineの記事) | ||
4/24 Hack For Fukushima ミーティング
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5月 | 5/21-22 Ideathon and Hackathon
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6月 | 6月から7月にかけて、岩手、宮城の沿岸部を訪問
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7月 | 7/23-24 Ideathon and Hackathon
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7/23, 30 Ideathon and Hackathon
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8月 | 8/6 Japan Innovation Leaders Summit リクルート主催のイベントで MIT 石井教授と共に登壇してこれまでの活動を紹介 | |
9月 | 9/27 プロジェクトディスカッション
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10月 | 10/15-16 Hack For Iwate 2
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12月 | 12/11 Hack For Miyagi
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12/17-18 復興ボランティア情報交換会@石巻
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2012年 | 1月 | 1/14-15 Hack For Iwate 3
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