Hack For Iwate Vol.4 – 復興していく三陸の店舗を記録しよう! –

Hack for Iwate メンバーの桝澤です。

2012年3月20日(祝日)岩手県釜石市にてHack for Iwate Vol.4 「復興していく三陸の店舗を記録しよう!ワークショップ」が開催されました。

今回のイベントは、2012年1月に開催したHack for Iwate Vol.3にて話題に登った「復興したショップを可視化したい」というお題に対し、OpenStreetMapFoundation古橋さんから「地図共有サービス:OpenStreetMap(以下OSM)を活用しては?」「必要であればOSMメンバーが現地で講習会を開催しますよ!」という提案があり実現に至りました。

Hack For Iwate 第3回アイデアソン

▼参加者は、岩手県、または三陸地域の方を優先

そこには「OpenStreetMapを学び、そして、ここで覚えたスキルを使って自分たちの手で復興していく三陸の店舗を記録して貰いたい」という願いが込められています。

▼Togetter

■2012年3月19日(月)前夜祭

岩手県釜石市にある「養老乃瀧釜石店」にて、前夜祭が開催されました。
参加者は、Hack for Japan/Iwateの岩切さん、そしてイベント講師であります古橋大地さん(@mapconcierge) と 関治之さん(@hal_sk)を始め、イベント参加者、更に釜石市の復興に携わるメンバーが20人以上(!)駆けつけました。

なお、予習ということで古橋さんから翌日の説明を頂きました!酔ってません、真剣です!

明日は頑張りましょう!

■2012年3月20日(祝日)

集合場所は釜石市大町にある「ジャズタウンホール」

釜石市大町は津波の浸水地域でしたが、タウンホールさんの店舗は2Fにあり、津波の直撃を避けることができました。(2011年8月に営業を再開しておられます。)
JAZZを聞きながら美味しいお酒とコーヒーを頂けて、更に優しいマスターが迎えてくれるという素敵なお店です。釜石にお越しの際は是非お立ち寄り下さい!

なお、ジャズタウンホールさんには、今回特別に場所の提供をいただきました。
ありがとうございます!

さてワークショップがスタートします。

■ はじめに

参加者は、当初定員を大きく上回る総勢43名。岩手県沿岸地域(釜石市、山田町、陸前高田市、大船渡市、久慈市)、盛岡市、一関市、東京、埼玉、そして広島からもご参加頂きました。

■ 9:00-9:30 概要説明

講師の古橋さん、関さんから今日の段取りとOSMの基本的な説明。
資料

皆さんメモをとりながらも真剣に説明を聞きます。

▼古橋さん「作業の半分はフィールドワーク。OSMって実は肉体労働なんです。」

OSMで地図を作るには「足を使って情報を集めるフェーズ」「パソコンを使って地図を作るフェーズ」の2つのフェーズがあるそうです。
今回のワークショップは、その2つのフェーズを実践します。「午前は街を歩き情報収集!」「午後は収集した情報をOSMに入力してみよう!」という段取りとなります。

▼古橋さん「OpenStreetMapの釜石の地図は、誰が作ったと思いますか?」

2010年ハイチ地震に伴う津波後、このOSMを使い、世界中のマッパーがハイチの地図をものの数日で作り上げたそうです。今回の東日本大震災の際「日本人は、ハイチの時に地図を描いてくれた。今度は我々が助ける番だ」を合言葉に世界中の方が東北の地図を描き、震災後の釜石市の地図に至っては外国の方(国籍不明)が書いてくれたそうです。
*ワークショップ後、こちらの方にイベント後の釜石のマップを添えて、感謝のメッセージを送っております!

▼横浜サテライト会場でも絶賛作業中!

同日、横浜にサテライト会場が設けられ、このワークショップと同時進行で釜石市の地図を作成してくれているとのそうです。
(はじめはピンと来なかったのですが、ワークショップ前後の釜石の地図(OSM)をみて「なるほどこういうことか!」と実感しました。サテライト会場の皆様、本当にありがとうございました)

OpenStreetMapは「みんなで作る地図」

  • たとえるならば「Wiki地図」
  • 普通の地図は著作権に守られているので、複製・改変はNGですが、OSMは複製・改変可能、道路中心線も使える、商用利用可能など、とにかく便利!
  • OSMは地図データの入れ物。美しく描画するにはたくさんの情報(とHack)が必要!
  • 紙データも使えます!(但し、利用許諾をとりましょう!)


▼陸前高田市・新店舗マッププロジェクト 通称「金太郎マップ」

説明の中で「陸前高田市・新店舗マッププロジェクト」(通称「金太郎マップ」)を実際にOSMに登録した例が挙げられ「地域にあるローカルマップをOSMに集約することのメリット」について説明がありました。
なお、金太郎マップとは「陸前高田市の仮設店舗がどこで営業しているのか分かる地図が欲しい」と陸前高田市商工会議所より神奈川県へ依頼があり作成されたもので、現在も陸前高田市で活用されているマップです。

記載内容は店舗の営業時間、ATM利用可能時間まで詳細多岐に渡ります。更に手書きベースということもあって「ぱっと見の親しみやすさ」が印象的なマップです。ゆえに現地の高齢者を含む幅広い年齢層に受け入れられているのでは?とも感じます。

被災地には金太郎マップを始めとした「ローカル地図」が存在すると想いますが、こういった「ローカル地図」をOSMに展開(登録)していくことは、被災地の方に利用されるだけでなく「被災地以外の方が現地の情報を仕入れる手段」となりえると感じました。


▼街を歩いて情報を集めよう!(どんな情報をあつめるの?)

基本的にはGPSロガーを持って街を歩き、街の状況をメモしていくという手順です。段差がある、人が通れる道、そういった現地でしか知りえない細かい情報も大切です。
なお、今回は「復興していく店舗を記録」というテーマがありますので、お店を見つけたら以下の情報をメモしておきます。

  1. お店の名前(ふりがな)
  2. ジャンル
  3. 営業時間
  4. 電話番号
  5. 再開時期(いつから再開したか)


■ 9:30-12:00 街歩き(お店の地点情報、移動軌跡を取得)

仮設店舗が集約しているエリア、津波の被害を受けた商店街エリアの2グループに別れて行動します。

  • 釜石駅周辺チーム(関さんチーム)(仮設店舗が集約しているエリア)
  • 青葉通りチーム(古橋さんチーム)(津波の被害を受けた商店街エリア)

古橋さんよりGPSロガーの操作説明を受けてスタートです!

GPS:GARMIN

釜石市在中、または釜石市出身のメンバーが中心となって各地区の担当割を行いました。

この日は、新日鉄釜石製鐵所の煙も流されるほどの強く冷たい風が吹き荒れた日でした。生粋の東北人である私でも寒さに震えるほどでしたので、関東からいらした方にとっては更に辛い天候だったかと思います。

営業されているお店を訪問。趣旨の説明と了解を頂き、営業時間等のヒアリングを行います。
*なお、こちらのお店は津波により元の場所での営業が出来なくなったため、別の場所で営業を再開したお店です。

沿岸地域からワークショップに参加された方の中には、もう一度お店を再建させたい!という同じ境遇の方も多数いらっしゃいました。ヒアリング中に「大変ですが、いっしょに頑張りましょう」と交わされる言葉に非常に深い想いを感じました。

こちら釜石駅近くの鈴子仮設商店街「釜石はまゆり飲食店街」

こういった立て看板も大事な情報のひとつです。

▼「現在、宿泊されるお客さんに街の案内が出来ない。早く作って欲しい!」ホテル関係者

ヒアリングを行ったホテル関係者からこういったお話しがありました。
釜石市では、現在も建物の取り壊しであったり、道路の整備作業が行われている為、ボランティアの方のみならず、他県から多くの工事関係者の方が市内のホテルを利用されています。
ニーズは確かにそこにあります。そう思わせられる一面でした。


■13:00-14:00 アームチェアマッピング(タウンホール・AOBAの箱)

午後は、午前中に集めた情報をOSMに入力していきます。
2チームそれぞれ「ジャズタウンホール」「KAMAISHIの箱AOBA*」に分かれ、古橋さん、関さんより説明を受けます。その後、取得したGBSデータ、またはメモをもとに、自分が歩いた道やお店をOSMに登録していきます。

*KAMAISHIの箱AOBAは、2012年4月1日「インターネットdeかだって」と名前を変え、市民の方が自由にインターネットに触れることが出来る場所となっています。

ちなみに「インターネットdeかだって」は、Hack for Iwate Vol.1 (2011年6月開催) にて「仮設住宅に暮らす人々が少しでも快適に暮らせるようなICTのあり方を検討しよう」と立ち上がったプロジェクト「仮設ネットカフェ」が、岩切さん、アットマークリアスNPOサポートセンターの鹿野さんを始めとするメンバーの活動により形となったものです!

Hack For Iwate 第1回遠野アイデアソン・ハッカソン(2011年6月)

釜石まるごと情報Web Cadatte(かだって)

「KAMAISHIの箱AOBA」入力方法について関さんから説明中。

■14:00-15:00 AOBA会場に移動して質疑応答と次回の話

「ジャズタウンホール」チームも「KAMAISHIの箱AOBA」に移動して、全員で質疑応答です。

参加者からの質問に答える関さん

▼入力に手間取る方もいましたが、これは「慣れ」でカバー

OSMへ登録は、大まかにレタリング(線を引く)、属性を「OSMに用意された各種タグ」に登録すると
いう作業になります。今回は入力用アプリとしてWebベースの「Potlatch 2」というOSM標準アプリを
使いましたが、殆どの参加者は初めて見るインターフェイスであり、更に「どのタグを使えば良いの?」
のという疑問が生まれ入力に手間取る場面が見受けられました。
但し、OSMの入力は「線を引いて、タグを登録していく」というシンプルな仕組みですので、こちらは使い続けることで解決するのでは?と感じました。(要は慣れの問題)

▼作業前と作業後のマップ

左が作業前、右が作業後の状態です。(横浜サテライト会場の作業含む)
「世界中の人が作っている」「直ぐに更新される」という点を実感しました。


■閉会:恒例?のじゃんけん大会

岩切さんから閉会のお言葉。そして、HackForJapan恒例?のじゃんけん大会。
勝ち残った3名の方に岩切さんから書籍のプレゼントです。おめでとうございます!

皆様、ご参加ありがとうございました!またお会いしましょう!

■余談

今回私は岩手県山田町(津波被害が甚大な地域)から参加された、漁師さん、幼稚園の先生、更にタクシー会社社長さんと言う幅広い職種の方々と同じチームでした。

「自分たちで自分たちの街の地図を作って、それを皆が使ってくれたら嬉しいし、自分の街のことだから自分たちでやりたい。だからもっとスキルを付けたい」

そのうちのお一人がおっしゃった言葉です。

1年たった街を自分の足で歩き、直接その街で生きる人達と接することで見えてくるものがある、もう一度何が出来るのかをよく考え、そして、次回もう必ず開催したいと思えた一幕でした。

なお、開催するにあたり、関東からおいでになりました講師の方々、HackForJapanの皆様、そして岩切さん、場所をご提供頂きました「ジャズタウンホール」さん、釜石市役所の皆様、アットマークリアスNPOサポートセンターさん、遠野まごころネットさんに心からの感謝を申し上げます。まことにありがとうございました。

Hack For Iwate メンバー桝澤信好

■掲載サイトまとめ

【WebRock】3/20 Hack For Japan 釜石OpenStreetMap勉強会レポート
【日経電子版】(4/2) 釜石で始動、万人参加型の電子復興地図

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