2012年10月20日に仙台で行われた ICT ERA + ABC 2012 東北というカンファレンス(以下、ABCと略)で Hack For Japan として2つのセッションに協力致しました。このイベントはこれまで年2回東京で開催されてきた日本 Android の会主催によるもので、震災後の復興を考えるため、東北を盛り上げたいという想いから今回は東北での開催となりました。
通常なら Android Bazaar and Conference で ABC なのですが、IT による Earthquake Reconstruction Aid (震災復興支援)をテーマに掲げているために ICT ERA + ABC 2012 東北というタイトルになっています。
高校生トラック
ABCでは高校生/アカデミックトラックが用意されました。大人顔負けのプログラミングを行う高校生が最近は特に増えてきましたが、Androidアプリケーションの開発においても多くの高校生が活躍しています。
今回のABC高校生トラックには、7月末にHack For Japanもお手伝いした石巻IT Boot CampでAndroidのアプリケーション開発を学んだ石巻工業高校の生徒も登壇したほか、岐阜県立大垣商業高等学校や灘高校の生徒も発表を行いました。
石巻IT Boot CampでCorona SDKを学び約2日半でAndroidのアプリケーション開発を経験した、石巻工業高校の生徒たちはその後も活動を続けており、アプリ甲子園にも進出しました。アプリ甲子園はスマートフォンアプリ開発の中高生のためのコンテストです。2年目となる今年は9月30日に決勝戦が行われました。石巻工業高校の生徒は残念ながら入賞がなりませんでしたが、他の参加者との交流なども通じて、大きな刺激を受けました。詳しくは、コンテストレポートをご覧ください。
今回のABCには、石巻工業高校のイベントとも重なったため、引率の先生1名と生徒2名での参加となりました。筆者が到着したときにはすでに会場入りしており、スライドの最終調整とリハーサルをしていました。高校生トラックの先頭バッターということもあるのでしょう。まだ本番には時間があるにもかかわらず、極度に緊張しており、サポートする側のこちらにもそれが伝わって緊張してしまいました。
彼らのセッションでは、Androidのアプリケーション開発に携わることになったきっかけから、IT Boot Campの振り返り、そして開発したアプリケーションの紹介、開発を通じて学んだことの紹介がありました。
もともと、授業でVisual BasicやC言語などの勉強はしたことがあったものの、本格的なアプリケーション開発はIT Boot Campが初めてだったという彼らですが、そのきっかけは前回のブログでも紹介した石巻 2.0のイトナブでした。イトナブの古山さんが卒業生であり、学校にもたびたび訪れていたことから、IT Boot Campが企画されましたが、彼らにとっては、それが大きなきっかけになったようです。ほかにも、ほかの学校からは羨むような、いわゆる「Mac部屋」と呼ばれるMac OS XとWindowsがデュアルブートするiMacが完備した教室があったことなどの恵まれた環境が用意されていたこともプラスに働いたようです。
アプリ甲子園での経験も彼らを一段と成長させました。彼ら自身、優秀な同世代に負けれらないという気持ちになったと話していました。また同時に、企画力とデザイン、発表時のプレゼンテーション能力の重要性に気づいたようです。実際、アプリ甲子園での優勝者のプレゼンテーションは素晴らしいものでした。デザインの重要性は、Corona SDKを使うならば、特に大事であることにも彼らは気づきました。Corona SDKだけではないですが、優秀なフレームワークやSDKを使うと、あらかじめ備わっている機能を使うだけで、完成度の高いアプリケーションは出来上がるのですが、同じフレームワークを使ったアプリケーションがどうしても似通ったものとなってしまいます。個性的なアプリケーションにするためには、デザインについてもっと気を配る必要があります。
また、IT Boot Campの前と後を、参加者のアンケートを元に披露してくれました。参加前には、Androidに対しての偏見があったと彼らも述べていますが、実際に開発者の視点を得られたことにより、視野が広がり、Androidに対しても、iOSに対しても見方が変わったようです。
最後に、IT Boot Campでチューターとして参加した者を代表して一言と言われて、筆者(及川)からも話しました。
ITでの復興支援を目的として発足したHack For Japanが、スタッフなどが被災地を訪れるなどして、震災前に戻すよりも新しい街にすることが大事であると学び、そして、そのためには若い世代を育てることも重要であることを認識したことを伝えさせていただきました。その上で、以下の3つのお願いをさせていただきました。
まず、筆者たちのような開発者へのメッセージとして、後進を育てましょうと言わせていただきました。若い世代を育てることは健全に技術を発達させ、業界を発展させるためにも必要です。自分たちだけでなく、初心者である若い世代にも情報を積極的に共有していきましょう。
次に、筆者はこの立場でもあるのですが、企業(ベンダー)の方々へのメッセージも伝えさせていただきました。IT Boot Campが成功したのは、Corona SDKが無償で利用できたこととAndroid端末が生徒たちに無償供与されたことによる影響も大きいです。是非とも、若い世代のために必要なリソースの提供を考えて下さい。
最後に、主役である高校生に伝えました。彼らはセッションの中で、Facebook創業者であるMark Zuckerbergの「Done is better than perfect」という言葉を使っていました。私からも、是非この精神を維持し続けて欲しいと話し、さらに、最近知ったFabLabの考えである「Learn, Make and Share」、すなわち、学んだことを使ってすぐに作り、その学んで作ったことを共有することも考えて欲しいとお願いしました。これにより彼らの世界も広がり、成長を続けていけることでしょう。
高校生のセッションのサポートを行うために参加していましたが、彼らの話を聞き、彼らへのメッセージを伝えることで、またこちらが大きく学ばさせていただいたことになりました。
(後編へ続く)
Hack For Japanスタッフ 及川卓也, 高橋憲一