月別アーカイブ: 2014年5月

「Hack For Japan 3.11 3年のクロスオーバー振り返り」レポート(最終回)

先日に開催されましたクロスオーバー振り返りイベント。最終回のレポートでは岩手県は釜石に都内から越されて活動し、東北TECH道場の釜石道場の運営について西条夫妻からの発表と、シドニーからHack For Japan 及川さんより、これまでの活動の振り返りと本イベントの総括の様子をレポートさせていただきます。


ふるさとの復興と若者のITスキル育成のために

釜石会場からの発表は「LiFESTYLE Lab.」を運営されている西条夫妻からの発表となりました。西条さんは震災以前は都内で働いていましたが、震災後からふるさと支援の目的で帰郷し、ご自身のITスキルを活用して地元の復興のために尽力されています。

釜石は震災後から人口の流出が止まらず、従来の産業だけではなく、新しい活路を見出すべく、西条さんはITの利活用を地元で推進していきます。その活動は震災のあった2011年から始まり、我々、Hack For Japanのハッカソンなどを中心に釜石でいくつかの活動を開催されてきました。その流れの中で、地元の中小企業の人達にITスキルを身につけさせるコーディネーターとしても活躍し、現在は釜石にITを根付かせているとのことでした。


2013年の夏からは、東北TECH道場の第4期から釜石でも道場がスタートし、下は小中学生から上は50代まで、幅広い層の人間から支持を集めているそうで、そうした活動や西条さんの人となりから、地元との連携に発展し、地域の高校と連携が始まりました。2013年9月には震災後3年ぶりの再開となった地元の祭である「釜石よいさ」も復活し、地域の高校生と一緒にお祭り公式サイトの制作を授業の一貫として指導され、岩手県の故郷をテーマにしたCMで釜石よいさのCMが賞を受賞し、釜石よいさは震災後、これ以上ないほど人が集まったそうです。

現在、釜石は震災後からの再開発が進み、中心市街地ではイオンタウンが建設中となっており、その集客力を地域振興に活かすべく、再開発について関わるメンバーの一員になって、釜石市の地域情報、観光情報、市役所、市民記者、企業や事業者の情報を一カ所に集約する情報交流センターを企画し、自立したICT活動やイベントが行えるハブとなり、中高生のIT教育、地元民のITリテラシーの’向上を目指しているとのことでした。

続いて、「東北TECH道場」の釜石道場の道場主である西条さんの奥さんからの発表は、釜石道場に通う中学生2人のお話でした。その2人は最初はプログラムに苦戦し、くじけそうになりつつも釜石道場に通い続けたことで、いまでは大人を超える勢いで成長しているそうです。そうした子供達の姿を見て、大人達も刺激をうけているようです。今後は中学生が高校生になっていくので、高校生の参加者も増やして行きたいという展望を伺いました。

「これまで」と「これから」と
今回のクロスオーバー振り返りイベントの締めくくりとして、Hack For Japanの立ち上げメンバーでもある及川さんよりシドニーから、本イベントの総括とこれまでのHack For Japanの振り返り、そして、これからをお話し頂きました。



今年でちょうど3年が過ぎ4年目に入って当時のTweetを振り返ると、東京で何も出来ないジレンマから、同じ想いを持つ人達を集めるべく、Hack For Japanを2011年3月18~20日の震災直後に立ち上げ、そこから自分の世界が変わったという話は会場に居る誰もが共感した話でした。

当時はハッカソンを主軸にした活動でもあったため、停電や余震の影響を受けて、被災していない西日本の会場やオンライン会場、また海外のチームと時差を利用して効率的に作業を進め、そうしたことがきっかけで多くの人がつながり、3年経った今も今回のイベントのように多くの人が、多くの場所で集まり振り返りを行っています。しかし、一方でそうしたハッカソンなどの活動で成果がなかなか生まれなかったことも事実としてありました。そうしたこともきっかけで継続性を意識しているCode for Japanや東北TECH道場、イノベーション東北にも通じています。

また、ヤシマ作戦と同じように批判などはあっても、意志をもって継続することの大切さや、新たな産業振興や教育をITを軸に据えて未来が見えることの大切さ、そうした活動を日本だけでなく世界にも視野を拡げて見てみようという意識を今回のイベントを通じ、会場に居る参加者全員で得ることが出来ました。

3.11は悲しい出来事でした。しかし、その悲しみを乗り越えて復興、地域の活性化を図るためには「笑いあいながら、楽しみながら。」そうしたメッセージが今回の発表でも随所にありました。むしろ、そうした明るさから未来が見えてくるのではないかという及川さんのメッセージで今回のイベントは締めくくられました。

釜石の発表(YourTube)

シドニーの発表(YourTube)




「Hack For Japan 3.11 3年のクロスオーバー振り返り」レポート(その4)

先日に開催されましたクロスオーバー振り返りイベント。4回目のレポートでは大阪から大槌発の仕事の創出についての発表をレポートさせていただきます。

大槌から復興に留まらない地域振興を目指す

大阪会場トップバッターは「KAI OTSUCHI」を運営されている鷲見さんからの発表となりました。 KAI OTSUCHIの成り立ちは、鷲見さんの大阪でのアプリ開発の企業経営、横浜で外国人向けの不動産会社経営、貿易会社経営など様々な業態の企業を営んでいる経験を買われ、関西大学の与謝野教授から鷲見さん宛に被災地において仕事を創出する活動を考えて欲しいという依頼があり、以前に中国へのオフショア事業を営んでいた経験から、日本の競争力をあらためて考えることがあり、日本の若手育成の観点からニアショア事業と復興支援、その先にある地域振興を意識した自立した成長を支援する活動として始められたとのことでした。

一般社団法人_KAI_OTSUCHI__.jpg


大槌町の人材をゼロから教育してアプリ開発を目指し若者の職場づくりを加速させる目的でスタートし、半年で電子書籍のアプリを作れるようになりました。当初そうした若者達が首都圏での就職が容易になるよう、名前を売ることを想定していましたが、地元での人材流出を加速させる懸念があったため、現在では一般社団法人を作り地元での雇用の創出、人材の育成にシフトしているそうです。京都カメラをきっかけに観光地との連携というところが商材になりつつあり「義援金より仕事を」というキャッチコピーでただ教育するだけでなく、実作業、実績をつくっていくことを目指した活動になっています。当日もただプロダクトを作るだけでなく、ヨコ展開ができるところが素晴らしいという意見もあがりました。


大阪からのイノベーションを目指し東北と連携

続いて、「Osaka Innovation Hub」 を運営する角さんからの発表は、ハッカソンやオープンデータをキーワードにイノベーションの創出を試みている関西イノベーション国際戦略総合特区にあるイベント会場を軸にした活動の紹介でした。

日本以外の国、大阪以外の地域で継続的なイノベーションが生まれる環境を目指しているとのことで、グローバルに人材、情報、資金が入り込む環境で、ほぼ毎日イベントが開催されており、その中でも我々が開催するようなハッカソンをかなり実施しているとのことでした。とくに最近ではハードウェア系のものを流行る前から力を入れいており、そうした活動が認知され、大手企業との連携したハッカソンに発展し、パナソニックやシャープとも連携したハッカソンにまで発展しているとのことでした。そうした活動の中で東北との連携ではEarth Communication Award2013で連携した石巻や仙台でハッカソンを実施し、成果をあげているというお話でした。

ハッカソンでは単発的なアウトプットとなってしまいがちな点を考慮して、継続的な活動、事業展開が見込める成長を目指し、やっただけで終わりにしないという施策にも力を入れており、こうした部分はかねてからHack For Japanの反省でもあった通り、大切な部分だと思います。


防災と地域活性化を目指すFandroid Kansai

防災と地域活性化のためのITのあり方をコミュニティから考えるをテーマに「Fandroid Kansai」設立記念ワークショップの様子を、同コミュニティの佐藤さんより紹介いただきました。

Fandroid Kansai は「Fandroid EAST JAPAN」という東北地方で震災復興から地域振興まで目指すAndroidアプリ開発を軸としてコミュニティの関西支部で、自立から飛躍を目指し、関西地域の防災、地域振興の’ナレッジを東北にも繋げていこうという試みです。また、今回の発表は阪神大震災というバックボーンを持つ関西地域ならではの視点もあった講演やワークショップといった内容でした。

その中の基調講演では、京都大学の防災研究所の准教授の畑山さんより東日本大震災、阪神大震災などの教訓から今後の防災に活かす研究結果の発表と、ITの役割が阪神大震災の時と東日本大震災の時とで役割が大きく変化してきており、防災への活用はこれからが本格化して行くだろうという点、また、被災時に提供できるものとして、安全と安心の2つがありますが、物理的な安全より、ITが寄与できるのは安心を届けられるという点が、今後より見込まれてくるだろうという話があったとのことでした。

また、同イベントの他のパネルディスカッションの様子として、一般社団法人東日本大震災復興サポート協会の代表である遠藤さんと南三陸震災復興推進課まちづくり推進室長の畑さんの対談では、災害時、向こう3軒の近接住民間のコミュニケーションが大切と捉え、それを日頃からITの力で補助しつつ、作り上げていくことが大事という話でした。これは災害時にあらゆるインフラが一時的に麻痺しがちな状況下で、人と人との日頃からのコミュニケーションがいかに大切かという部分で非常に印象に残るお話でした。

その他のパネルディスカッションのお話としては、大阪市旭区役所総務課防災等担当課の有信さんによる子供向けの防災教育プログラム「カエルキャラバン」の活動紹介や、地震の音楽活動のCDの売上を全額陸前高田に寄付され、iTunesの売上を子供支援協会などに寄付しているMusic Activis の Shihoさんのお話、このお話の中で「ITによって他人事を自分事にすることができれば、人はもっと動く」というメッセージは参考になる視点です。また、西宮経済新聞編集長である林さんの発表は日頃からメディアやアプリを使って地元のお店の情報発信を行っているインフラを活用し、災害時に利用するというアイデアのお話でした。

そうした講演を受けて、Fandroid Kansai設立記念ワークショップに参加された参加者全員でアイデアソンを実施し、今後の防災に役立つアイデアを出し合ったとのことでした。



大阪の発表(YourTube)



阪神大震災という大きな災害を乗り越えた両地域の協調した活動は今後も注目ですね。
次回のレポートでも、残りの他地域からの発表の様子をお届けします。お楽しみに!