2011年10月15日(土),16日(日)
いざっ!遠野へ!
そろそろと秋の足音が聞こえ、足早に深緑が赤や黄色の鮮やかなグラデーションに彩られていく季節。
北海道では昨日初雪が観測されたという。
今、仮設住宅はどうなっているのか。
コミュニティは機能しているのか。
個の生活になり、情報の流通が課題だと聞いた。
寒さへの配慮はされているのだろうか。
「仮設」その名の通り、仮に設営された仮の住まい。
せめて被災地の方々が、本当の生活を取り戻すまで、インターネットを通じて支援または応援できることはないだろうか…
そんな思いがまた、Hack For Japanスタッフの心を突き動かした。
前日から、休みをとって車で向かう者。
夜行バスで、早朝の遠野に到着する者。
私は、前日の業務があり、始発の新幹線で向かうことにした。
14日の深夜、遠く東京から遠野の地で同じ思いを持った仲間に出会える期待に胸が熱くなり、ろくに睡眠も取らずに朝を迎えた。
朝5時、寝袋を携えて、仲間の待つ遠野へ発つ。いざっ!遠野へ!
10月15日 遠野まごころネット
岩手県遠野市。遠野駅からほど近い、遠野福祉センターに本拠地を構える 遠野まごころネットさんの協力を得て、会場をお借りし、15名の仲間が集った。
午前中はあいにくの雨。
すぐ横の運動場では、子供たちが元気にサッカーの試合をしている。それを見守る保護者の方達。
世の子供たち全ての未来を、希望を守らなくてはならないと静かに願う。
体育館には畳が敷き詰められ、支援物資の倉庫、ボランティアの方々の宿泊施設としても提供されている。
廊下には、様々な張り紙が張られている。応援、感謝、再来、感動…
さらにプライバシーの無い中で多くの規律を求められ、共同生活の難しさを感じたのは私だけではない。
頭の下がる思いでいっぱいになる。
打ち合わせ開始
四角にテーブルを囲んだ会議室で、誰と言わずにお互いの挨拶が始まる。
参加者が少ない中では、相手を十分に知るプロセスを踏める時間が生み出されるのがメリットでもある。
一通りの挨拶の後、プロジェクターに活動資料や主要サイトを映しながら仮設住宅の現状を報告頂く。
岩手復興センター 鹿野さん
•仮設住宅の現状
•現在の構想
•他の地域での事例
•移動式ネットカフェ
•情報レンジャー for 助けあいジャパン
•宮城県仙台市宮城野区のがれきの中に設置された「みんなの家」の現状
•青葉通りの奥に設置された 復興まちづくり住宅
続いて
釜石出身のスタッフ 岩切さんから釜石の現状を伝える。
•釜石一番の繁華街が津波に教われ飲屋街が壊滅状態に。
•釜石の居酒屋は現在、養老乃瀧とつぼ八のみが復活。
復興は赤提灯から。そこにいると誰かに合える場になっているとつけ加える。
•65歳以上の人口が31%
•このイベント開催当日も釜石で祭りが開催されていると告げる
ここから議論は、右に左に様々な方向へと話題が風向きを変える。
•お年寄りにもインターネットの便利さを伝えたい
•子供向けのコンテンツも必要
•ネットショップを開設してビジネスを立ち上げるきっかけにもできないか
•マンガ喫茶からDVDをいただけないか
•セキュリティも考えないと
•パソコンの使い方を教える人はどうする?
•教える人の教育も必要ではないか?
•タブレットの方がお年寄りや子供への導入は容易い
•Yahoo!のGyao!の上映会はできないの?
•インフラの導入まで考えるのか?
•Googleの「みんなのビジネスオンライン」が無料で使えるかもしれない
思いは一緒だが、複雑に絡み合っていた。
一旦、休憩。その間に、具体的に課題整理をし、今回取り組むポイントを3つ決める。
1、インターネットに興味をもってもらうためのコンテンツ
2、インフラに必要な物
3、教育分野と雇用
再開
1、インターネットに興味をもってもらうためのコンテンツ
各自ポストイットで思いついた案を付箋紙に下記、下記のようにマッピングして張り付ける。
縦軸 Child → Young → Adult → Senior
横軸 楽しい → 役に立つ
30余りの案が出ただろうか。続いて、案をグルーピングする。
•機能として活用できる案
•ツールとして活用できる案
•イベント企画案
•ホームサイトに載せておきたいもの
•技術的に必要な物
5つのカテゴリに分類し、午後は、ここから細分化していくことにする。
2、インフラに必要な物
こちらについては、アイデアだしはできるが、他団体でも想像できるので今回のスコープからは外すこととした。
3、教育分野と雇用
•技術力のある人が住み着く必要性
•教えるスタッフを教えるスタッフの必要性
•専門学校の学生、高校生、パソコンクラブの中学生などボランティア参加者がインストラクターに
•「お茶っこ隊」にその役割を持つことを検討する for まごころネット
•雇用部分は、可能であれば、雇用を生んでほしいという議論に
ターゲットをIT慣れしていない人たちに置くことで、それほど高いスキルは必要ないこととする。
まずは、インターネットに触れるきっかけ作りがネットカフェの役割であろうと結論づける。
昼食
岩切さんの母上からの差し入れ、ちらし寿司、松茸飯ととさんまの煮物、デザートのぶどうまで大量に頂く。
遠慮無くおいしく頂いた。
腹が減っては戦はできぬ。ごちそうさまでした。
おかわりして、ごめんなさい。おいしかったんです。
急遽!視察団結成!
昼食後、参加者からの提案で、「百聞は一見にしかず!」みんなで、仮設住宅の状況を見に行きませんか?!
満場一致!
具体的策を練る前に、午後は視察団を結成する運びとなった。
当然、全員参加。
遠野希望の郷「絆」
•木で作られた壁や廊下が印象的
•コミュニティ足り得るサポートセンターも
遠野市が東京大学や県立大学の協力を得て整備していた震災被災者のためのコミュティーケア型仮設住宅。
空はすっかり晴れ、車に乗り合わせて、大槌町に移動。
山間のぐねぐね道をこんこんと湧き出る眠気と車酔いに耐えながら峠を越える。
鮮やかな紅葉がひととき心を和ませる。救いだ。
(画像)
大槌町。
メディアにたびたび露出される建物を目の当たりにする。
こんなところまで…
宮城、福島、八戸と巡ってきた私も津波の高さに声が出なかった。
まごころ広場うすざわに到着。
現在は、縮小されたがまだまだコミュニティ広場としての役割は重責。
外国の方も多く集っていた。医院、薬局も設置。
さらに奥、和野っこハウス(大和ハウスの協力住宅)に到着。
大槌町で一番住戸が多い仮設住宅とのこと。
行ってみて初めてわかることの多さ、雰囲気、インフラの未整備…
課題は山積みだ。
•男性のサポートセンター活用が少ない(あまりセンターに出てこない)
•建物毎wifiが遮断される
この日はここで解散。
帰路ついでに、暗くなったが大槌町の役所、釜石の貨物船、地盤沈下した港に立ち寄った。
復興に進み始めているエリア、まだまだ復旧が必要なエリア…
さらに深く考えさせられる一日となった。
10月16日 さらに 遠野まごころネット
薄曇り、時々…雨…
昨日のカテゴリ分けを掘り下げる議論。現場を見てきて、まず集まるきっかけが重要と知り、特に重点ポイントに。
これからの冬に向け、さらに外出が億劫になる。吸引力が必要だ。
インターネットがここの家では使えないが、もともと利用していた人もいる。
いくつかのアイデアスクラップとビルドを行うことになる。
参加者は、昨日の半分が入れ替わりつつも11名の仲間が参加。
ネットショップを開設し、地元の商品を販売したい。
Google ビジネスオンラインの仕様を検討した。
動画を配信することをきっかけにインターネットに興味を持ってもらうことがいいのではないか?
コンテンツの著作権、放映の可否確認を宿題に残した。
共通のコミュニケーションツールはどうする?
まずは、メールグループ設定。
Facebookも活用のコアになる。
教育は、どうする?
Highリテラシー層を確実に押さえ、その周辺、そのまた周辺へ伝播しながら教育を兼ねる流れが自然だ。
出来るものは、どんどん発信し、コミュニケーションを取ろう。
テーマ、カテゴリ議論に加え様々な議論の飛び交う中、また本日も岩切さんの母上の料理を馳走になった。
誠にカタジケナイ…しかし、本当においしかった。
2つのテーマ
午後は、薄い雨の中、2つのグループにわかれ、ディスカッションが行われた。
1、セキュリティと利用マニュアル
2、インターネットカフェに必要なコンテンツ
2時間以上に及ぶ議論。
真剣に、そして深く、まとめあげていく。
1、セキュリティと利用マニュアル
•PCは、システム的なツールを利用してログイン管理
•Yahoo!ツールバーなどの導入
•セキュリティソフト
•Yahoo!きっず で子供たちを守る
•マニュアルは、必要
•たたきを作り、必要最低限にまとめる
•PCの貸し出しと合わせて自己責任の明確化
•タブレットの方が導入は容易いが、セキュリティ担保が困難
•個人メールなどのひも付けをさせない仕様にする
2、インターネットカフェに必要なコンテンツ
•PCのホームに必要な物 Facebook、Twitter、YouTube、などのショートカット
•イベント 動画の鑑賞会をキーに人を集める
•マニュアル作成自体をイベントにする
•タブレットには、おすすめアプリ、ゲームなど
•Facebookなどが利用できる人が、周辺を誘い、徐々に低リテラシー層にリーチする
発表が終了し、個々に意見を述べる。
私自身も最初何が出来るのか、戸惑った。しかし、さまざまな分野に長けている方が
集まることで様々な問題解決に近づいた気がする。
まだまだ、道のりは険しい。
カフェのオープンの準備の時には、再びこちらを訪れることを心に誓い、遠野を後にした。
ご参加頂いた皆様、ありがとうございました。
また、近いうちにお会いしましょう!
Hack for Japan スタッフ 冨樫 俊和