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@リアスNPOサポートセンターでのスキャンスナップの利用事例

2011年7月22~23日に開催した、Hack For Iwate@遠野まごころネットのイベントがきっかけとなり、株式会社PFU様よりスキャンスナップ@リアスNPOサポートセンター(以下@リアス)さんに寄贈されました。今回の釜石への帰省で、どのように使われているのか、事務局長の川原さんに取材させて頂きました。

(2011/10/11)

@リアスNPOサポートセンターとは
そもそも@リアスは、2004年に、釜石の街づくりを推進するために設立されました。震災前の主な活動として、岩手県土砂災害防止法に基づく住民説明会の実施や、釜石市の委託事業として釜石市内の空店舗を利用して街に賑わいを取り戻すためのプロジェクトまるごと情報発信ポータルサイトと、リアルフリースぺース「かだって」の運営と、「かだってタイムズ」の発行をしていました。

@リアスは津波避難ビルにある

震災の日は、釜石市健康福祉センターの8階で、新潟県のNPO法人都岐沙羅パートナーズセンターから講師をお招きし、セミナーを開催している最中だったそうです。隣の釜石市のぞみ病院に、講師の方と共に避難。その後、解散した後も、川原さんと代表の鹿野さんは、そのままのぞみ病院にとどまり、エレベーターが使えないため入院患者さんを内陸の病院に搬送する手伝いなどをしながら、3月一杯過ごされたとのこと。

釜石市との業務契約が後1年残っていた、2011年4月。市からは、釜石のために動いてくれるのであれば何をしてもらってもかまわないと言われ、様々な復興支援活動を進めています。

スキャンスナップは欠かせない
「スキャンスナップをどういう風に活用していますか?」という質問に「どうもこうも、これが無いと仕事が回らないです。そもそも、震災前からユーザーでしたので、パソコンの次に欲しいものでした。プリンタよりも。」とのこと

@リアスNPOサポートセンター 事務局長 河原さん

とにかく、震災以後、@リアスさんに求められることが多岐に及び、かつ活動範囲が広がっていくばかり。そのため、どんどん書類が増えていく一方。紙の書類を持って、あちこち移動するのは不可能なので、スキャンスナップにかけ、データをタブレットに入れて出かけるスタイルで、スタッフ一同活動をしています」とのこと。契約書以外の文書は全て、スキャンスナップにかけられているそうです。

活用例1:チラシをスキャンスナップにかけ、情報を欲しい方に、メールに添付してお知らせ
例えば、今、釜石・大槌では、色々なイベントが企画・実施されています。その情報は、チラシ、つまり印刷物で回ってくる事がほとんどなので、スキャンスナップにかけ、情報を欲しい方に、メールに添付してお知らせするようにしているそうです。

活用例2:仮設住宅のアセスメントの報告業務で大活躍
岩手県復興局からの依頼で、釜石・大槌地区の仮設住宅の住環境の調査を実施されたときには、仮設団地毎に、手書きで調査票を書き、それをすぐさま県に送らなければならなかったそうです。調査票は、全部で1000ページ弱になり、これをFAXで送ったら、通信費だけでも馬鹿になりませんし、3日以内に送らなければならなかったそう。速さという意味でも、本当に助かりましたとおっしゃっていました。

チラシを電子化してメール配信

大量の調査票を電子化して省力化

活用例3:自分のメモもスキャンスナップにかけて、振り返る

河原さん個人としては、いろいろ考える際に書いたメモ書きもスキャンスナップにとっておいて、移動先で振り返ったり、電話のメモなど、移動している仲間との共有にも使っているとのこと
以前は、別の会社のスキャナを使っていたのですが、それに比べて、読み取り速度が早く、サイズがバラバラでも読み取ってくれるので、それが便利とおっしゃっていました。

今度スキャンスナップに期待したいこと
A3がとれたら完璧!なので、是非出して欲しいとおっしゃっていました。

@リアスは、釜石市が海で働く人が避難できるように建てた通称津波ビルの中にあります。
ビルの周りや、ビルそのものも、津波の爪痕が、まだくっきり残っています。

岸壁に乗り上げた貨物船
@リアスから貨物船へは徒歩5分ほど

その中で、釜石や大槌の街づくりを支援する活動をしているNPOがあり、毎日4人フルで活動されている事が、釜石を離れて暮らしている人間としては、とても心強く思いました。
そして、その活動をスキャンスナップが、裏方としてどっしり業務を支えていました
1台寄贈いただいた後、もう1台買ったぐらい、この事務所ではみな、ヘビーユーザーで、川原さん自身は、一家に1台あってもいいぐらい便利なものだと、大絶賛でした

大活躍の ScanSnap S1500

多忙な@リアスさんに代わり、レポートさせて頂きます
株式会社PFUさま、寄贈いただき、本当にありがとうございました

写真 (@リアスNPOサポートセンター取材)

Hack For Iwate
岩切晃子

www.sinsailaw.infoが出来るまで

Hack For Japan のプロジェクトとして、東日本大震災 通知・事務連絡集 というサイトを構築・運営されている高橋さんから、プロジェクトの立ち上げの模様と現状について寄稿いただきましたので掲載させていただきます。

www.sinsailaw.infoが出来るまで

高橋 悟史 (Hack for Japan)

1. 弁護士有志の方々の想いと活動
3月11日の東日本大震災後、弁護士有志の方々は被災地の直接支援も含めて様々な活動をされてきました。その活動の中で、地方自治体が住民の方からの相談を受ける際に、中央省庁からの通常の法令やガイドラインを参考に対応をされていたのですが、震災後に各省庁から様々な震災対応の法令、ガイドラインが発行されていることが周知されていない状況がありました。各省庁のホームページでは震災対応の法令やガイドラインの情報は発信されているのですが、情報は省庁単位に別々のページで公開され、ある特定のトピックについて省庁をまたがった閲覧や情報の検索が出来ない状況でした。
この問題を解決するために弁護士有志の方々で、各省庁のWebサイトを見て、省庁から発信されている法令、通知などの情報をExcelスプレッドシートにまとめる作業が始まりました。ただ、発表をExcelに書きこむだけではなく、その内容のサマリーを識者の観点でワンポイント解説として加えました。一見難解な省庁の発表内容もワンポイント解説を見ることで内容が理解しやすくなります。

2. IT技術者と弁護士有志の方々の出会いとサイト構築
Excelスプレッドシートにまとめた情報は600を越え、この内容を情報を必要としている人に届ける方法についての検討が行われました。数百もの情報をWebページにして公開するのは手作業では膨大な手間と時間がかかるため、当初はExcelファイルをそのままWebサイトに貼りつけてダウンロードしてもらったら良いのではないかという考えもあったそうです。ですが、Excelをサイトに貼りつけただけでは参照性も悪いですし、検索エンジン経由の検索も難しくなります。
そこで、弁護士有志の代表の方は、Webサイトの作成についてYahoo! JAPANの方に相談しました。Yahoo! JAPANの方はHack for Japanの活動を知っておられたので、スタッフの関さんを紹介してくれ、そこからHack for Japanに相談が来ました。
Hack for Japanの関さんと大垣さんで、早速スプレッドシートからWebサイトを生成する方式の検討が始まりました。ExcelをGoogle Docsにアップロードし、Google DocsのJava Script APIとGoogle Sites APIを用いることで、スプレッドシートの各セルを読み込んで、Google Sites上のページコンテンツに変換することが可能なことが分かりました。この時、プロトタイプは2日程度で完成したようです。

3. サイト構築と技術的な課題
スプレッドシートのセルを読み込みGoogle Sitesのページを生成するプロトタイプが完成し、その後の作業を私が引き継ぎました。プロトタイプの段階ではAPIを活用することでスムーズにページが生成出来ると考えていましたが、実際にサイト全体を整備する中で幾つかの技術的課題に直面しました。幾つかの課題は技術的に解決出来ましたが、リリースまでの時間と使っている技術の制約で解決出来ないままリリースに至ったものもあります。

3-1. Google Apps Scriptではあまり長時間かかる処理を実行出来ない
Google Docsのスプレッドシートを数百行処理してHTMLを生成しようとするとスクリプトが途中でハングしてしまうことが、開発中に分かりました。Google社に問題として報告して解決して頂く方法もありましたが、サイトの早期リリースを優先し、データを100行単位で処理するようにスクリプトを修正しました。あまり格好良くない解決策ですが、最終的なサイトの内容には影響させないで済みました。

3-2. Google SitesのSub Page Listは表示順序をカスタマイズ出来ない
http://www.sinsailaw.info/mhlw のような省庁別の通知・事務連絡リストはGoogle SitesのSub Page Listという機能を使っています。単純で使い易い機能で、フォルダとコンテンツを階層構造で配置するだけで下位階層のコンテンツをフォルダ別に並べて、アコーディオンのオープン・クローズ機能も自動で付けてくれます。ただ、この機能を使った場合にはリストの表示はページのタイトルで自動的にソートされてしまいます。弁護士有志の方々からの要望としては、日付順にコンテンツが並んでいるということだったので、各コンテンツのタイトルには通知・事務連絡の発表日付をyyyy/MM/dd形式で追加することで日付順に並べるようにしました。

3-3. カスタム検索の実装
Google Sitesにはサイト上を任意の検索キーワードで検索する機能が標準であります。弁護士有志の方からはサイト検索に加えて、任意の省庁名と日付範囲で通知・事務連絡を検索出来る機能が要望されていましたが、これはGoogle Sites外(例えばGoogle App Engine)でのアプリケーション開発が必要になり、時間がかかるということで、今回のリリースでは見送っています。実際にはカスタム検索が無くてもある程度サイト検索で検索結果の絞り込みが出来ますので、利用上の不満にはなっていないと判断しています。

3-4. Google Sites上のコンテンツのGoogle検索エンジンへの登録
www.sinsailaw.infoをWebマスターツールに登録した後に、サイト上のコンテンツをテスト的に削除、変更、追加を繰り返していたところ、検索エンジン上に登録されているコンテンツと実際のサイト上のコンテンツに差異が出来てしまい、検索されても表示出来ないという状況が発生してしまいました。結果的には、検索エンジンのクローリングによってサイトの最新の情報をインデックス化するのを待つことで状況は解消されましたが、この点については私が検索エンジンのクローリングのメカニズムを良く理解していなかったための誤算でした。リリース後はリンクやURLに影響するページ名の変更などはおおがかりに実施しないように気をつけています。

4. 当サイトの意義と利用状況
おかげさまで、9/16にYahoo! JAPAN様の震災情報サイトからリンクを頂き(http://info.shinsai.yahoo.co.jp/#33083)サービスをリリースしました。リリース以来1244人のユニークユーザーにサイトを訪問して頂いております(2011/10/24集計)。毎日およそ50人程度のユーザーがサイトを利用してくださっています。
www.sinsailawa.infoが想定しているユーザーは地方自治体に勤務する職員の方です。職員の方は住民の方にサービスを提供するために法令や省庁からの通知を参考にしているわけですが、今回の震災で様々なな特例が出てきていることが周知されておらず、最新の情報が伝わっていません。場合によっては、最新の情報を職員の方が知っていれば、住民の方に支援が出来るようなケースでも情報が伝わっていないために支援が出来ないケースが発生しているわけです。www.sinsailaw.infoのサイト内検索あるいはGoogleからの検索で特定のキーワードにヒットする省庁からの法令や通知の情報を参照して頂くことで最新の情報に基づいた行政サービスが実現出来ると考えています。

5. これから同様の活動をする人へのメッセージ

5-1. 難しく考えすぎないこと。必要な要件を最低限満たす形でひとまず作ってしまいサービスを公開すること
当サイトでも解決出来ない技術的な課題が残りましたが、まずはコンテンツ、サービスをユーザーに届けることを優先しました。
エンジニアとしては自分の理想像を追求したくなると思いますが、Webベースのサービスでは後からサイトの仕組みを作りなおすことは比較的容易なため、ひとまずリリースしてから修正するという考えで取り組んだ方が良いと思いました。

5-2. 利用者にとってのメリット、効果は何か、一番重要なことは何かを考えること
これについては、今回は情報を収集してくださった弁護士有志の皆さんがニーズとウォンツを把握されていましたので、エンジニア側は技術面だけを考えれば良いという恵まれた状況でした。直接ユーザーの声を事前に聞けない場合には、サービスを公開した上でユーザーの声をコメント欄などでフィードバックしてもらうという手もありますし、アクセス数の変動を監視して、サービスの改善の効果を測定する方法もあるでしょう。

5-2. 使ったことのある技術を最大限に活用すること
技術的なチャレンジは多いに結構ですが、特に震災対応という観点ではリリースまでのスピードがサービスの利用価値に直結します。誰かが実装して実績がある(Proven)な技術、自分が使い慣れた技術を使うことでリリースまでの時間が短縮出来るでしょう。

プロジェクト紹介:ハマナス先生〜花から学ぶ復興の形〜

先日の遠野会場アイデアソン/ハッカソンでスタッフを務めた関です。

そこで生まれたプロジェクトの一つ、「ハマナス先生」に参加していたので、このプロジェクトについて解説をさせてください。
今回の震災は、人間だけでなく動植物にも影響を与えました。特に、根浜海岸などに生えていた「ハマナス」という植物は多くが流されてしまったとのことです。しかし、芽が出始めているところもある。人間が住んでいた地域はがれきで壊滅的な状態で変わり果てた姿になりましたが、建築物が無かったような地域は元の形に戻るのも早いそうです。
花や植物の写真と発見した位置情報をDB化し、植物が自力で復活する記録から復興のあり方を考えようというのがこのプロジェクトです。

以下は、このプロジェクトの発起人である、佐藤清忠さんから頂いたメッセージです。

プロジェクト名の「ハマナス」の花は、鵜住居「宝来館」のドキュメントTV放送の最後の場面で、宝来館の女将が、3月末に海岸に芽を出し始めたハマナスを発見し、 

「花だって、こんなに、一生懸命なんだ…」 

と、つぶやくシーンを、思い出したのです。 

ハマナスには、波にのまれ、ひどい状況になっても、その地にとどまり再生していく強さがあることを、あの放送で知りました。 

ハマナスの花言葉のひとつに、「美しい悲しみ」があります。 

ハマナスのこの花言葉、また花の生命力に、三陸沿岸一帯に住む日本人の持つ自然観、地域の力を連想するのは、私だけでしょうか。


ハマナスの花が咲くのは、盆の頃です。 

ハマナスが、沿岸一帯に咲くたびに、そこに住む子どもたちは、1本、1本、花を数えます。
そのとき、かつてこの地に一緒に生きた仲間、強い地域の絆があったことを、思い出してもらいたいのです。 

そして、その絆の大きさが、年々広がり、ITを通じて世界の人たちにも見えるようになってもらいたいのです。 

この取組みが数年間にわたり継続し、「花の絆」が広がっていく様子は、何年たっても祈りを抱いてくじけない、この地を守る子供たちがいることを示しています。 

ハマナスの英文名は「Japanese Rose」です。まるでこのプロジェクトを実施するために、命名されたと思いました。

そろそろお盆ですね。今年はハマナスの花はどれくらい見つかるのでしょうか。

このプロジェクトは、システムを作るというよりも、コンセプトを広く伝え学校関係者やNPO、研究者などのネットワークを作ることを目指すプロジェクトです。共感された皆様がおりましたら、友人、知人などにお伝えいただけましたら幸いです。
ホームページ作成など、プロジェクトに参加したい方ももちろん大歓迎です。

連絡先は、スライドの最後にかかれております。皆様のご声援をいただけましたら幸いです。

※宝来館は釜石市根浜海岸にある料理宿で、文中の女将は、自身も津波に流されそうになりながらも、宿泊していた旅行客や従業員全員を無事避難させました。その時の映像がテレビなどでも紹介され有名になった場所です。津波が去った後の孤立状態も、宿にあった食材やがれきの下のお米などを頼りに、道路が復旧するまでの孤立状態を皆で協力して乗り切ったそうです。早ければ10月復活を目指して活動中だとのことです。
http://houraikan.jp/
http://twitter.com/horaikan

CEDEC2011 震災復興支援技術特別セッション公募のご紹介

CEDECというイベントがあるのをご存知でしょうか。
毎年秋に開催されるゲームなどのコンピュータエンターテイメント系の大規模なカンファレンスなのですが、今年は東日本大震災があったことを受けて震災復興支援技術特別セッションの公募が行われています。

震災復興支援技術特別セッションのご案内
CEDECの運営スタッフの方々とお話をさせて頂いたところ、これまでエンターテイメントの領域でやってきており、それ以外の分野の方々とは交流はなかったのですが、同じIT分野ですのでこの震災の復興支援でお互いに協力して行きたいと考えて今回の公募を行うことにしたとのことす。その想いはこちらのCEDECのニュースレターを読んで頂くと良いと思います。
Hack For Japanとしてもその主旨に共感させて頂き、これまでの取り組みと今後についてより多くの皆様に知って頂くために、この公募に応募することに致しました。
7月29日まで受け付けているとのことですので、復興支援に関してアイデアをお持ちの方、実際に活動されている方は、是非応募を検討されてみては如何でしょうか。
カンファレンスにはエンターテイメント系のエンジニアの方を始め、デザイナーの方も多数参加されるとのことですので、これまでなかなか会えなかった分野の方に興味を持ってもらい、一緒にプロジェクトを進める仲間と出会うことが出来るかもしれません。

CEDEC2011

CEDEC2011 は9月6日から9月8日にかけてパシフィコ横浜にて開催されます。
詳細はこちらの開催概要をご覧下さい。
Hack For Japan スタッフ 高橋憲一