私は福島県会津若松会場でのイベント運営をお手伝いしてきましたので、ここで報告させていただきます。
この文章は、初日の投稿の続きになります。
5月22日土曜日 アイデアソン
この日のイベントは他の三会場とのUstream中継をしなければならず、準備には手間取りました。
そしてセッションが開始されました。
まずは東京会場から助け合いジャパンの藤代 裕之さんの中継です。
この震災では、ボランティア情報のマッチングが大きな課題となっているそうです。「被災地の受け入れ態勢が整っておらず、ボランティアに行くことは迷惑になってしまう」などの説が流布してボランティアが自粛されるという動きができてしまっていたようです。ところが、被災地ではボランティアが足りないという事が起こっていたそうです。
助けあいジャパンは被災地の情報拠点やNPO・NGOから寄せられたボランティア・ニーズを収集し、API配信しているそうです。このAPIを利用したアプリケーションの開発を訴えられていました。
参加者の中にゴールデンウィークに11日間も現地での活動に参加していた方がおられ、意見が上げられました。この災害に関連する情報は、場所や時間が異なると状況も変わり、一概に扱えるような種類のものではないということが示唆されました。
Hack For Japanのグループにこの方からの投稿がされました。
できるだけ沢山の方に被災地でのボランティア活動をして欲しいと思っています。ただ、そのための仕組み作りはまだまだ改善の余地があります。準備もせずに単にたくさん押しかけても、社協の方などの時間を取るなど、迷惑になる可能性があります。今回の震災のボランティア活動は数年から、10年、20年とかかるとおっしゃる方がいました。息の長い活動をぜひ多くの方にして欲しいと思っています。
藤代さんの活動はこちらの記事でも詳しく紹介されています。香川会場に参加された、鎌玉大さんから教えていただきました。
助け合いジャパンの藤代さん
続いても東京会場からの中継で、ニッポン放送の吉田尚記アナウンサーにラジオ番組とHack For Japanとの連動企画についてお話しいただきました。
この番組は、ニッポン放送 オールナイトニッポンGOLDapp10.jpというものです。app10.jpは「スマートフォンで人と人とがつながることで、幸せが生まれる。アプリは、人を幸せにする。」というテーマで一月ほど前から始まっていた番組です。
吉田尚記アナウンサーは20年来の文系Geekで、最近のスマートフォンブームに、「やっと時代が追いついてきた、機は熟した」と、この番組の企画を提案されたそうです。
Ustream、ニコニコ動画、Twitterなどと連動して、リスナーとの結びつきが強いようです。
ニッポン放送の吉田アナウンサー
Hack For Japanとの連動と、前日の及川さんのラジオ生出演のことを紹介(前日のブログ記事)して、ダジャレ・クラウドのアイデアが良いのではないかと紹介されました。
さっそく、会場から手が挙げられました。これからメンバーを募集し、ダジャレ・クラウドの開発が始まりそうです。
こちらの会場の参加者からも質問がありました。東京と中継するのにUstreamとSkypeではうまくいかず、結局は電話で話すことになってしまいました。
会津若松でプロバイダーを経営されているへちまインターネットの馬場さんです。「被災地の人は川柳を作って非常に元気になった、川柳というのは高級なダジャレである」という前振りのあと、「会津で一番問題になっているラジオアクティビティ(放射能)の風評被害を収めるためにラジオにがんばってもらいたい」と披露していただきました。また、サーバーを提供してもよいとのお申し出をいただきました。
福島県は原発事故による被害があり、放射線に関する問題は切実なものです。
私もこのことは実感していて、私が開発している携帯アプリはメールを送るボタンを付けているのですが、現地の方々からの声は多く寄せられてきています。
この日のイベントでは「Open Geiger Development Kit」という放射能計測開発プラットフォーム発表がされました。
これは、ガイガーカウンターによる計測値をAndroidを介してクラウドでシェアするというオープンな取り組みです。
シーエーの寺脇 勝彦さんがArduinoとBluetoothによるハードウェアの説明を担当され、Gclueの佐々木さんがAndroidとクラウドによるソフトウェアの説明を担当されました。
今回のイベントには原発の近くに住まわれている人も参加されており、このセッションへの関心は非常に高いものでした。
昼食を終えると、仙台会場のHack For Japan 西脇さんからの報告がありました。
西脇さんはマイクロソフトのエバンジェリストで、Hack For Japan の運営スタッフでもあります。地震直後から非常に積極的に被災地の支援を続けられています。いくつもの貴重な経験談が話されましたが、IT技術で解決できることも多くあり、ITの技術を持った人が現地で解決できることも多々あるとのことでした。たとえば、情報の専門家がいれば、それによって労力を削減できて効率的にボランティアの活動ができるというようなことです。現地には情報の専門家が足りないそうです。こちらの皆さんも頷きながらスクリーンを観ていました。
次は「会津若松市の状況」を会津若松市災害対策本部の目黒 純さんにお話ししていただきました。
会津若松市内での建物などへの被害は比較的軽微で、西風のために市内では放射線量も少なく、風評による被害を防ぐために正しい情報の周知が必要であるとのことでした。市内の避難所の状況については、多いときは830人の避難者がいたが、今では100人以下であるということ、本部と避難所の情報共有は紙を毎日配送することでも行われていたということでした。指定の避難所以外に居住している避難者への情報提供手段が非常に限られているということが課題だそうです。ラジオの有用性はここでも報告されていました。
目黒さんはまた、OpenOffice.orgの導入と活用を進める活動をされています。
会津若松市では、全庁のPCに「OpenOffice.org」を導入し、文書ファイルにODF形式を採用しているそうです。
会津若松市の取り組み―オープンオフィスとODF形式文書を導入しています
そして「避難者を地域で長く支える元気玉プロジェクト(会津つなプロ)の活動紹介とそこから見えた避難者の課題」を株式会社明天の貝沼 航さんにお話ししていただきました。
「元気玉プロジェクト」は会津地域にいる避難者の「安全な自立」に向けた長期支援の仕組みづくりに取り組んでいるそうです。
地震後、避難所の食料事情が整っていない3月17日からの約20日間に150名のボランティアがメッセージとともに26,000個のおにぎりを届けたそうです。今では社会福祉士、看護学校や短大の学生が中心になって結成された「巡回ボランティア」が、避難所を訪問して避難者の困りごとを調査し、解決と結び付ける活動を中心に展開されているそうです。会津若松には他の市町村から避難してきて、二次避難所にいる人が4,000人弱いるとのことです。
この後のディスカッションのテーマを募集する段階では積極的な話し合いがなされました。
目黒さん、貝沼さんのお話しとディスカッションのようす
放射線に関連する活動を活発にされている、テレジャパンの宗像さんが、位置情報をベースにした被曝量の算出などの被災者支援の仕組みがあればよいのではないかと提案されました。宗像さんは、ふんばろう東日本支援プロジェクト福島支部で市民による放射線測定のネットワーク作りにも努力されています。
会津若松市のIT産業振興担当の江川さんは兼業農家でもあり、ご自身の田圃での放射性物質を防ぐ工夫を紹介していただけることになりました。また風評被害対策のためのウェブサイトを立ち上げることをプロジェクトとして提案されました。
その他にも、いくつもプロジェクト案が提案されました。これらはホワイトボードに書いてゆきました。
この中から、
・畑Q&A
・行政情報の公開サポート
・ソーシャルコミュニケーション
・助っ人探し
・放射線関係(API、ガイガーカウンター、Androidアップローダー)
のプロジェクトについてディスカッションをしようというメンバーが集まりました。
このように具体的なアイデアが提案されてきたのは、やはり被災地に近い土地での開催ならではだと思いました。
ディスカッション後、5分間のライトニングトーク形式でチームごとのプロジェクトの計画が発表されました。
どのチームも、とても良い発表でしたので、ぜひ録画をご覧ください。
ディスカッション結果の発表
この後、明日には参加できない方もいるのでメンバーの調整などをして、一日目のアイデアソンは終了しました。
各地との中継などで手間取ってしまったことは残念ですが、何とか成功させることができたと思います。
参加されたみなさん、おつかれさまでした。ありがとうございました。
この夜は会津のみなさんとの懇親会がありました。
会津は食べ物が美味しく、名物の馬刺と蕎麦をいただきながら、夜更けまで語らいました。