Hack For Japan 岩手県 遠野会場スタッフを務めました、関です。
Hack For Japan の 遠野まごころネット会場は、参加した皆様のおかげで素晴らしいハッカソンになりました。ご報告させていただきます。
Hack For Japan としては4回目となるハッカソンですが、遠野会場での開催は初めてでした。ボランティアセンターという場所での開催というのも初の試みとなりました。
23日アイデアソン、30日ハッカソンという日程の他会場と違い、23日アイデアソン、24日ハッカソンという形で運営しています。私は23日はそのまま遠野まごころネットへ宿泊させていただきました。
全体の感想としては、具体的なニーズの洗い出しに時間をかけたこと、被災地に近い人達がチームに入ってくれたことなどから、地に足が着いた具体的なプロジェクトが多かったと思います。
過去のハッカソンでは、被災地の方々のニーズを想像しながらアプリケーションを作ってきました。それはそれで良かったのですが、実際にアプリケーションを使う人のフィードバックが得にくいという点がありました。
今回は、ボランティアセンターであるまごころネットで開催ができた為、ボランティア作業経験者や、被災地の支援活動を行っている方などに参加していただき、ニーズを直に聞き取ることができました。
参加者は、アイデアソンが32名、ハッカソン21名でした。ご夫婦で参加されている方が数組いらっしゃったのが印象的です。年齢層も幅広く、良いバランスだったと思います。たいていこのようなイベントは当日になるとキャンセルが多く発生するものですが、両日ともに申込みより参加者の方が多い(両日とも130%超え!)という嬉しい参加率でした。
アイデアソン終了後の記念写真。皆様充実した素敵な笑顔です。
1日目:アイデアソン
ニーズの洗い出しタイム
チーム分けの前に、全員でITに対してどのようなニーズがあるのかを洗い出しました。その時に利用したドキュメントはこちらです。(検討にはホワイトボードを使いました) 非常に活発に意見が出て、ITでサポートできることが数多くありそうだということがわかりました。
どれも捨てがたかったのですが、リソース的に全てをやるわけにもいかないので、各ニーズに対して、「貢献したい」というものを選んでいただきチーム分けを行いました。
その結果、以下の5つのチームが結成されました。
・写真の修復、トレーサビリティ
遠野まごころネットでは被災地から集めた写真の修復作業を行っていますが、現在、その修復作業の各工程で、元写真と修復後の写真との紐付きが失われてしまい、混乱するようなケースが多く発生しています。ワークフロー管理やトラッキングなどを行いたいというプロジェクトです。
・まごころネットの情報発信(ホームページ)
遠野まごころネットから発信する情報発信。まごころネットでは多くのプロジェクトを走らせていますが、その多くの情報はオンライン化されていません。まごころネット副代表の多田さんとしても、タイムリーに情報を載せること、情報の種類を増やすこと、寄付を集める仕組みの検討などのニーズが上がっていたため、まごころネットのシステム担当などのメンバーを含めてチームが結成されました。
・ボランティア緊急退避/安否確認
ボランティア作業を行っている最中に余震が来た場合に、土地勘の無いボランティアの人たちはどの方向に避難するべきかがわからないという問題があります。また、家族への身の安全の連絡なども必要です。アイデアソンを行っている最中に、偶然震度5の地震が遠野で発生しました。被害自体は大きくなくイベントは続行できましたが、家族からの安否確認メールが多く届いたりということもありました。避難すべき場所などの情報がわかり、簡単に関係者に対して安否を連絡できるようなツールが作れないかというのがこのプロジェクトです。
・動植物への影響調査とDB化
今回の震災は、人間だけでなく動植物にも影響を与えました。特に、根浜海岸などに生えていた「ハマナス」という植物は多くが流されてしまったとのことです。しかし、芽が出始めているところもあるとのこと。人間が住んでいた地域はがれきで壊滅的な状態で変わり果てた姿になりましたが、人工の建造物が無かったような部分は元の形に戻るのも早いそうです。
花や植物の写真と、発見した位置情報をDB化し、植物が自力で復活する記録から復興のあり方を考えようというのがこのプロジェクトです。
・仮設ネットカフェ
今回の震災では、ネットの限界をIT技術者達が思い知らされましたが、被災者の方々が便利さを認識するきっかけにもなりました。例えば、携帯電話を持つようになったり、ホームページやツイッターによる情報発信の効果を認識したりといったようなことがありました。
仮設住宅にネットカフェを作るというテーマを通じて、仮設住宅に暮らす人々が少しでも快適に暮らせるようなICTのあり方を検討しようというのがこのプロジェクトです。
各チーム内での活発な議論の後、ニーズを満たすためのソリューションと、翌日のハッカソンでやることを発表して頂きました。
アイデアソンの終了時には、全てのプロジェクトが長期的な活用イメージについて具体的な構想を固めていることが印象的でした。
2日目:ハッカソン
スタッフはそのまままごころネットへ宿泊し、次の日のハッカソンに臨みました。朝9時開始にもかかわらず、全員が時間前に着席しており、皆様やる気満々です。各チームのその日のゴールを発表したあと、早速作業を進めます。みなさんもくもくと作業を続けた結果、以下のアウトプットが生まれました。
・Photrackjpチーム
(写真の修復、トレーサビリティ)
遠野まごころネット内で行われている写真修復作業に関連し、迅速かつ正確に被災者の方々に修復した写真を届けるためのシステムの開発を行うというテーマに取り組みました。
にプロジェクトページがありますが、修復スピード、ファイルのトレーサビリティ、担当者の引継ぎなどの問題点を解決する為にTracを利用して管理を行うことを検討しました。この日はアプリケーションの完成までは行きませんでしたが、渋谷Tracのコミュニティなどを紹介し、引き続き作業を進めていくことになりました。
写真の修復作業は多くのボランティアセンターや組織でも行っていることのため、マニュアルを公開することで、他の組織との作業の比較やアドバイスの交換なども期待できると思います。
・まごころweb チーム
(まごころネット情報発信(ホームページ))
まごころネットのホームページはこれまで情報システム班が管理しておりましたが、どのような情報をどのような手段で発信すべきか?という部分を戦略的に発信していく役割、いわゆるディレクターにあたるポジションが明確ではありませんでした。このチームでは、まずはそのディレクターにあたる役割を定義しワークフローなどの整理を行いました。主に、ワークフロー、発信したい情報、サーバー等の状態について情報を整理し、サイトのリニューアル案なども完成しました。
このチームの発表資料はこちらです。
また、ボランティアへ行った人が、まごころネットに帰ってきてから作業日誌的なものをサイトに投稿できるようなワークフローを導入し、ボランティア体験談のコンテンツを増やすことにもなっています。
・ブジだす君
(ボランティア緊急退避/安否確認)
このチームでは、なるべく簡単な操作で身近な人へメッセージを伝えるアプリケーションを作ることとしました。1日のハッカソンの間に、実際にAndroidで動作するデモまでを完成させています。
事前に、メッセージを伝えたい人のメールアドレスや電話番号を入れておき、ボタンを押すだけで、安否のメッセージと位置情報が設定した人へメールやSMSを飛ばすことができます。
後々のバージョンでは、避難情報などを配信することなども盛り込んでいきたいということでした。このチームは、いちばんハッカソンらしいアウトプットであったと思います。
ソースは既にプロジェクトページに上がっております。開発に参加したい方は是非コンタクトを取ってみてください。
発表資料
プロジェクトホームページ
プロジェクトメーリングリスト
・ハマナス先生
(動植物への影響調査とDB化)
私もチームに入っておりました。アイデアソンでは何かしらシステムを作る方向で検討していましたが、メンバーの一人が他のサイト調査を進めたところ、環境省が運営している「いきものみっけ」というサイトが、我々のやりたいことにかなり近いことがわかりました。既に似たようなプロジェクトがありクオリティもかなり高かった為、わざわざ同じようなものを作ることはやめて、こちらのサイトと連携、支援する方が良いということになりました。
したがって、このチームでは、関係各所に、このプロジェクトの意義と独自性を伝えることにフォーカスして作業を行いました。その結果出来上がった資料がこの資料です。
メンバーの一人がたまたま知人の伝手で環境省の方に繋げることができ、電話でコンタクトを取るなどといった、素晴らしい動きをしておりました。作るばかりがハックではなく、既存のものを組み合わせることで新しい価値を作るというのも重要だといういい例になったと思います。このプロジェクトについては、改めてブログで報告させていただきたいと思います。
・仮設ライフ楽しくし隊
(仮設ネットカフェ)
いきなりネットカフェを作ることは1日ではできませんが、仮設住宅をICTで支援するとしたら、どのような形の活動ができるかという点を掘り下げて、具体的なアクションプランにまで落としこむ作業を行っていました。まごころネットは「まごころ広場」や「まごころカフェ」という交流スペースを運営しているため、まずはそこにいくつかIT機器を持込、チューターが使用法を説明するといったことから始めることができそうです。
仮設ライフ楽しくし隊の発表資料
また、仮設住宅が自治会のような機能を担うという点に注目し、連絡網としてメーリングリストがあると便利であろうという観点から、仮設住宅の方向けにメーリングリスト作成マニュアルを完成させました。かなり丁寧な作りで、すぐにでも使える高品質なマニュアルが完成しています。
メーリングリスト(電子連絡網)、始めの一歩 人々が避難所から仮設住宅へ移ったことにより、情報の伝達がしにくくなったと聞いています。メーリングリストを活用することにより、少なくともメールが読める人には迅速に情報を伝える手助けになればと思います。上記資料は自由に展開して良いとのことですので、皆様是非お使いください。
初日には多くのニーズが洗い出されましたが、今回の検討スコープからは外れてしまったものがあります。例えば仮設住宅情報のデータベース活用や、ボランティア情報マニュアルなどです。このようなニーズに対して、何かソリューションが提供できそうな方は、Hack For Japan のメーリングリストまで是非御連絡ください。
また、7月30日には、仙台・会津若松・東京・愛媛の会場でハッカソンが行われますので、是非ご参加ください。
詳細はこちらから→http://www.hack4.jp/RelatedInfo/Events/FutureEvents/110723mtg